軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

現実は大抵こんなもん

もう1度扉を開けても見える光景に変わりは無かった。

部屋の中は殺伐とした雰囲気が充満しており、サローナ達からは露骨に嫌悪感を示して、むしろ殺気すら感じられる……というか、誰の表情ももう殺す気満々だ。一体何があったのだろうか……

一方、アリア側の方は、闇の女神が化けていたアリアではなく、本物のアリアだというのはわかるのだが、そのアリアは目を閉じ、口を閉じ、座っていた。その横にはグレイブさん並に顔が整っており、見事なとしか言えない銀色の鎧を装備している青髪の男性が汗を掻きながら俯いていた。その後ろにはガタイのいい戦士風のこれまた顔が整っている男性が何故か笑っており、その横に魔法使いっぽいとんがり帽子を被っている可愛らしい顔立ちの少女がため息を吐いていた。おそらく、あれが魔王を倒した勇者パーティーなのだろう。

その事を確認した俺は部屋の中へと突入し、何とかサローナ達の気を静めさせ、なんとかアリアと対面するようにして座る。座った時にふと思ったのは、あまりに突然の光景に逃げ出す事も忘れていた事だった。まぁここまできたら逃げるのはやめようと自然に思えた。ただ、サローナ達には何を言われても今は決して口を挟まないように告げておいた。

「……久し振りね、ワズ」

目を開き、俺を見据えたアリアが最初に言った言葉はそれだった。

「……そうだね」

「話の前に1つ確認があるのだけれど?」

「何?」

「エリス姫様は無事なのよね?まだお会いしてないんだけど」

……つい先程ナヴィリオに会ったばかりだし、その前に連れ帰られてはいけないと身を隠していたんだろうな……

「無事だよ。さっきも会ってきた」

「そう……ならいいわ。ここに私達が居る理由はエリス姫様を無事に連れ帰る事。それに関しては」

「エリス姫様に聞いてくれ。別にもう邪魔はしない」

「わかったわ……なら、個人的にここに居る理由を話すわ」

……ごくっ

自然と喉が鳴る。見ればアリアもどこか覚悟を決めたような表情だった。そんなアリアを隣の青髪の男性が心配そうに声を掛けるが、アリアはそれに頷きをもって答えていた。その様子を見る限りに、何となくアリアが何を言うのか先が分かってしまった……

「これはもう私の独白でしかないし、非は全て私にあるとも思っている。だから全てを聞いた後に罵ってくれてもいい、だけど、これは私の決意であって、決して変わる事はないわ……それを踏まえて聞いて欲しいの」

アリアはその言葉が嘘ではないと言う様に真っ直ぐ俺を見てくる。

「私とワズは小さい頃に一緒になると口約束をしていたわね……あの頃の私達は子供だったかもしれないけれど、間違いなくお互い本気だった……本気だったからこそ、今もこうして心に引っかかっている……その引っかかりを取らないと私は前に進めない……だから私はワズを探していた……そしてこうして会えた以上、私はワズに告げなければならない事があります……」

アリアは気丈に振舞っているように見えるが、目には涙が溜まっていた……

「ごめんなさい……その約束を守る事は出来ません……」

……うん……

「隣に居る勇者様と旅に出た時は、そんな気は一切無かったわ……こんな旅早く終わらせて、さっさとワズの所へ戻るんだって……だけど、共に行動をし、そうして年月を重ねていく内に絆が出来た……何度も命の危機を救ってもらう内に認識が変わり、頼れる人から好意へ……そしてその想いが愛情へと変わった……」

……

「それは勇者様も同じで……魔王を退治した時にはもう私達は……」

……だろうね……やっぱり俺があの時見た光景は何の間違いでもなかったって事なんだ……

「だから、とても身勝手な事を言っているのは理解してる……これはただの事後報告というのもわかっているし、私の中のケリをつけるための最低の行動というのも……私が自分でワズを傷つけたという事も……だけど、どうしても自分の口から伝えたかったから……この行動がワズをもっと傷つけるとわかっていても、あの時の本気だったのを無かった事には出来なくて、今までずっと引っかかっていたから……

本当にごめんなさい……身勝手でごめんなさい……」

俺は何も言わなかった。途中で俯いて……決してアリアの方を見る事をしなかった。

俺が何も言わない事に痺れを切らしたのか、ガタッという音と共にアリアと勇者様が立ち上がるのがわかった……

アリア達がこの部屋から出て行く時に、俺はアリアの背中に向かって一言だけ発した。

「……お幸せに」

聴こえたかどうかはわからない……でも、他に何が言えただろうか……もしかしたら他に何かあったかもしれない……けど他に思いつく言葉は何も無かった……きっとあの時逃げ出さなければ、何かあったのかもしれない……だけど俺は逃げ出した……そんな俺に他に言える言葉なんてあったのだろうか……

“ただ、俺も特別だったよ……”

と、心の中だけで呟いた……

アリア達が出て行った後、俺はサローナ達の方へと振り返る。

「……大丈夫!!不思議と元気なんだ!!」

俺がそう言ってもサローナ達は心配そうな顔を向けてくる。どうして?と思っていると、不意に手に水が当たった。俺はその手で自分の頬を触ると、いつの間にか泣いている事に気付いた。自分では全く泣いているつもりはなかったのに……

「ご、ごめん!!これはそう……目にホコリが」

こんなかっこ悪い俺は見て欲しくないです。

だけど、サローナ達はそんな俺を皆で抱き締めてきた。

「……いいんです……泣いていいんですよ」

誰が言ったのかはわからない……もしかしたら全員かもしれない……だけど……

その優しい音色の言葉が耳に届いた時、俺は嗚咽を漏らしながら、ただただ泣き続けた……