軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

別話12 ナミニッサと水溜り

私は日課としている自己鍛錬を終え、部屋で体を休めます。ワズ様に鍛えられ、そう易々と壊れる体ではなくなったのですが、それでも休息を取らなくてもいいという訳ではありません。ベッドの上で無防備に寝て、そのまま天井をぼぅっと眺めます。

こうして何も考えない時間が出来た時、最近私はふと考える事があります。

アリアの事です。

ワズ様がアリアの元へ行くと私達に告げた辺りから考えていたのですが、アリアの友達として彼女の性格は知っているつもりですし、世間では聖女と呼ばれていますが、実際の内面は聖女とはかけ離れている事も……どうしてもアリアがワズ様を裏切るとは思えません。もし本当に裏切ったというのであれば、ワズ様をわざわざ探さなくてもいいと思うのです。それでも今現在探しているという事は本当は裏切ってなくて、その事をワズ様に伝えようとしているのではないかと……まぁ私の勝手な思い込みですが……それなら何故今も勇者と共に居るのかとか色々ありますが……考えるときりが無いですね……ふぅ……

私が一息吐こうと上体を起こすと、ワズ様が目の前に居ました。

「あれ?起こしちゃった?」

どうやら私が寝ていたと思い、急に起きたので自分が起こしたと思っているようです。

「いえ、元より起きてました。少し横になっていただけですよ」

私が否定するとワズ様はほっと胸を撫で下ろしました。そんなに気にしなくてもいいのに。ワズ様に起こされて怒る事なんてありえませんから。むしろ起こすなら甘い口付けで起こして欲しいものですが……

「それでどうして私達のお部屋へ?あぁ、わかりました。抱きに来たのですね。なら、今から準備をしますので」

「わかってないから!!その答えは間違ってるから!!なんで、さも俺がその目的でここに来たと即座に解釈しちゃうかな!!」

「違いましたか?」

「違います!!」

それは残念です。

「では、どんな御用でしょうか?誰かお探しだったのでしょうか?」

「それぞれの専用武具を体に合わせて作るから、皆のサイズを聞いてまわってるんだ」

「なるほど、専用となるとその者に合わせるために細部まで細かい数値が必要になりますものね、ではどうぞ、お測り下さい」

私はどうぞお好きなようにと腕を広げて、ワズ様の受け入れ態勢を万全にします。

「……なんで俺が測る事になってるんでしょうか?」

「私が望んでいるからです」

「……教えてくれるだけでいいんですけど?」

「私が知っている自分のサイズは過去のモノ。人は日々成長してますから、今のサイズはわからないのでございます。なのでワズ様がお測り下さい」

「本当に俺がやるの?」

「むしろ望んでおります」

断固として譲らない私の態度にワズ様は大きく息を吐くと、覚悟を決めた顔つきになります。

「わかったよ、なら測らせて貰います……怒らないよね?」

「私から言ってるのに怒る訳ないじゃないですか。あっ、服を脱いだ方がいいですか?それとも脱がせたいですか?」

「いいから!!そのままでいいから!!そのままでお願いします!!」

その後はワズ様に私の体のサイズを丁寧に測って頂きました。時折わざと体を動かしてワズ様の反応を楽しむ、至福の時間でした。

数日後、部屋に1人で居る時にワズ様から私専用の武具を頂きました。タタと同じ結界魔法を強化する杖と、腕に付けられるような、動きやすさを重視した小さな盾を頂きました。防具は上半身の部分は鎧で、鎧と繋がっている下半身の部分はスカートが何層にも重なる様に広がっているドレスアーマーでした。使われている素材は 超合金属(オリハルコン) と龍鱗で、ドレスアーマーは私の髪色と同じ赤色を基調としています。私はその武具を立て掛け眺めます。ワズ様が私のためにお造りになられた武具……

「フフ……」

嬉しさのあまり自然と笑みが零れます。私はベッドに横になり、にまにまとしながら武具を眺めているとそのまま眠りこけてしまいました……

眠っていたのですが、ふと下半身に違和感を感じ、目を覚ましました。

「……んん」

起きぬけの状態で下半身の違和感を確認しようと手を伸ばします。

……ぴちゃ……

……ん?ぴちゃ?

……手が濡れている……

濡れているっ!!!!!

私は即座に覚醒して上体を起こして自分の下半身部分へと視線を向けます。

そこには水溜りが出来ていました……

えええぇぇぇっ!!ど、どういう事でしょうか?まさかこれは……いえいえいえいえ、そんな訳ありません!!仮にも元姫としてこのような粗相をする訳が……でも、現実には目の前に証拠が……違います!!これは証拠なんかではありません!!きっと寝返りをして花瓶か飲みかけの水が入っているコップを落としたんです!!現に床にベッドの横に飾られてあった花瓶が倒れています……きっとこれが原因です!!もしくはきっとこれは夢です!!実際の私はまだすやすやと眠っているのです!!いやでも……うぅ……

……み、認めたくはありません……ありませんが……

はぁ……とりあえず状況的に私がやっているようには見えますし……まずは証拠隠滅を図りましょうか。

私は立ち上がりベッドからシーツを外すと、まずは濡れているベッドに生活魔法をかけて乾かします。うん。綺麗に消えました。そして結界魔法を物干し竿のような形で発動してシーツを干すように立て掛けます。そこで一息吐きました。ここまで来ると冷静に物事を考える事が出来ます。花瓶が倒れている以上、寝返りをうって花瓶を乗せている台座にぶつかり、倒れ落ちる段階で花瓶の中の水がちょうど私の下半身部分に飛んできたのでしょう。そして床には分厚い絨毯が敷かれていますし、落下の衝撃音もそれでかき消されてしまったのだと思います。なので、起きるのが遅れたと……ええ、決して私が……ゴホン……その、した訳ではないという事です。

ですが、この時の私は状況分析等せずに、即座にシーツの水溜りを乾かせばよかったのです……

ふと、人の気配のようなモノを部屋の入り口から感じ、そちらへと視線を向けます。

視線の先にはワズ様が居られました……

ワズ様は目を大きく開き、茫然としています。その視線の先は私の後ろにあるシーツの水溜りに向いていて……あれ?これってもしかして私がしたように見え

「ご、ごめん!!俺は見てないから!!何も見てないからぁ~!!」

はぅあっ!!

ワズ様が踵を返し、部屋から出て行こうとします。ダ、ダメです!!このまま行かせる訳には!!目撃者を残してはいけません!!

「我が敵の行く道を 遮り給え(超々早口)」

私はもう無我夢中の全魔力総動員で結界魔法を発動し、ワズ様が出ていこうとしている部屋の扉を塞ぎます。

「ふぎゃっ!!」

ワズ様が私の全魔力を使用して作りだした結界魔法の壁に顔からぶつかって叫びます。

「はぁ……はぁ……」

ふふふ……ぜ、全魔力を総動員した甲斐がありました……な、なんとかワズ様がこの場から逃げる事を回避する事が出来ました……あとは……

「ば、馬鹿なっ!!全く力が入っていなかった状態とはいえ、俺が破る事の出来ない透明の壁が」

「ふっふっふっ……ワズ様……どこへ行こうと言うのですか?まさかこのまま逃げられるとでも……」

「ひぃっ!!」

私は魔力を使いきり疲弊した体を引き摺る様にしてワズ様へと近付いていきます。

「ほ、本当に見てないから!!俺は何も見てないから!!シーツの謎の水溜りなんて」

「ふふふふふ……」

この後ワズ様とはたっぷりO・HA・NA・SHIして誤解を解きました。

まったくワズ様はタイミングがいいのか悪いのか……はぁ……凄く疲れました……喉も渇いたし、水でも飲んで今日はさっさと寝ましょう……