作品タイトル不明
忘れてた訳じゃないよ?
マオに俺のステータスと事情も伝えたし、メアルを頭の上に乗せてと……確か今日は午前中は街の復興、午後はサローナ達の鍛錬だったな……よし行くか。
俺は支度を整えて部屋を出る。いや~、労働は楽しいなぁ。鍛錬は楽しいなぁ。意気揚々と充実した日々を楽しみながら歩く。ちょうど目の前に奥さん達を伴うグレイブ王の姿があった。商人の奥さんとメイドの奥さん、冒険者の奥さんに獣人国でも会った奥さんと何やら話していた。俺はそんなグレイブ王一家の脇を通りながら挨拶をする。
「おはようございます、グレイブ王」
「あぁ、おはよう!!……ん?ワズ坊はどこか行く所があったんじゃなかったか?いつまでこの国に居るつもりなんだ?いや、別にいいんだけどさ」
……
ですよね~!!
という訳で、城の一室に急遽集まってもらいました。どうやら会議を行う場所で大型の円形のテーブルに俺と頭の上にメアル、サローナ、タタ、ナミニッサ、ナレリナ、ハオスイ、カガネ、マオにフロイドとグレイブ王と数人の奥さん達が座っていた。そして俺はグレイブ王に問いかける。
「えっと、グレイブ王……」
「ちょっと待て、ちょいちょい気になってたんだが、いい加減俺を「王」と呼ぶのはやめてくれないか?なんつうか、距離を感じるんだよな……俺達ダチだろ?」
「ですね!!俺もちょっと堅苦しいかなぁって思ってたんですよ。じゃあ、公式の場ではそう呼びますけど、それ以外では前の様に呼びますよ」
「そうしてくれっ!!」
グレイブさんは本当に気にしてたのか、俺がそう言うとぱっと輝くような笑顔を見せる。
「それでグレイブさん。もう俺達が出ていっても大丈夫なんですか?」
「あぁ、問題ないぞ。いや、まぁそりゃ、復興にかかる時間が更に増えるが、お前達はもうこの辺りまででいいんじゃないか?一番大変な時期はもう過ぎてるし、こっから先はこの国の者達でやっていかないとな」
グレイブさんが自分の周りに居る奥さん達に視線を向けると
「それに俺には自慢の奥さん達が居るし、まだまだここに向かってるのも居るしな、それに獣人国からの支援もある。もうこの国は大丈夫だよ。世界に名を轟かせるような立派な国にしてみせるさ」
そう言って、俺達を安心させるように勝気な表情をこちらへと向けてきた。俺もそれに笑顔で答える。
「わかりました。なら俺達は準備が整い次第、旅立ちます。皆もそれでいいかな?」
サローナ達の表情を確認すると、皆微笑みながら頷いた。
「私達の中心はワズ様です。異論がある時はきちんと言いますので、ワズ様はお好きなように動いて頂いて構わないのですよ」
「ありがとう」
ナミニッサの言葉に感謝の言葉を返しておく。皆もその表情から同じ気持ちなのかが伝わってきた。俺もその気持ちに応えるように笑顔を一人一人に向けていく。
「まぁ、さっさと問題片付けて、未来の嫁さん達ときちんと結ばれて安心させてやらないとな」
グレイブさんが俺を茶化すように言葉を投げかけてくる。その発言にサローナ達はもじもじして、期待するような目で俺を見てくる……グレイブさんは絶対こうなるとわかってて言ったんだろうなぁ……はぁ……
「わかってますよ。そういうのも忘れてませんから。皆の気持ちにきちんと応えますよ」
俺がそう言うと皆が嬉しそうに手を取り合って喜んでいる。
「それで、この国を出たら、直ぐに目的地に向かうのか?」
「う~ん……それなんですけど……実はその前に行こうと思っている場所があります」
「そっか、ならその辺りの話は自分の嫁さん達とちゃんと話すんだぞ?」
「はい。明後日くらいには旅に出ようと思います」
「そっか……聞いておいてなんだが寂しくなるな……まぁ、将来的にこの国に居を構えてくれてもいいんだぞ?」
「考えておきますよ」
「あぁ、そうしてくれ!!じゃあ、後はこのままココを使ってくれて構わないから、嫁さん達と今後の話をしておくんだな」
「ありがとうございます」
そう言ってグレイブさんと奥さん達は部屋から出て行った。まだまだやる事は山積みだろうに……心の中で感謝して、出て行く時はきちんと挨拶しておかないとな。
俺がそんな事を思っているとカガネが声を掛けてくる。
「それでお兄ちゃん?王都に向かう前に行こうと思ってる場所ってどこなの?」
この場に残ったサローナ達とフロイドが俺へと注目する。
「あぁ、山に行こうと思ってる。山を経由して王都に向かおうかと」
「「「「「「「……山?」」」」」」」
「うん、大陸中央にある山」
俺の言葉に全員が絶句している。フロイドだけは「ふむ」と頷いていた。まぁ、いきなり山に向かうなんてそりゃ驚くよな。
「何故その山へ?」
「大陸中央の山は人が生きていける場所ではないと聞いていますよ?」
「どういう事でしょうか?」
「そこに何かあるのか?」
「……ハイキング?」
「危険な場所ですよ?」
「修行か?」
皆がそれぞれの反応を返してくる。
「あぁ、ちゃんと向かう理由を言うから。まずはメアルを両親に会わせてやりたいんだ。山の上の方にメアルの両親が居てね。おもしろい龍達だよ」
俺が最初の理由を言うと、メアルが嬉しそうに鳴くので頭を撫でておいた。だが、皆の顔からは血の気が引いているような気がする。どうして?と思っていると、サローナが俺に確認するように聞いてくる。
「……ちょ……ちょっと聞きたいんだが……メアルの両親はつまり……大陸中央の山に住んでいる龍って事でいいんだろうか?」
「そうだよ」
「……大陸中央の山に住む龍って事は……伝説にしか登場しない龍達の王「龍王」しか居ないと言われているのだが……」
「え?ラグニールってそんなに有名なの?」
「……知り合いなのか……そう言えば初めて会った時、山から下りてきていたような登場だったような……」
うん、そうだね。サローナと最初に会ったのは間違いなく山から下りて来て直ぐだったよ。というか、ラグニールって伝説の存在だったのか……俺から見ると奥さんの母親に頭の上がらない普通の亭主にしか見えないんだけどなぁ。ラグニールの事を思い出していると、ナレリナが確認するように聞いてくる。
「つまり、メアルは……伝説の龍王の子供と言う事なのか?」
「うん。まぁその伝説はよくわからないけど、確かに龍王の子供である事は間違いないよ」
俺が断言すると、サローナ達はどこか緊張した表情でメアルを見る。メアルはそんなサローナ達の視線に小首を傾げる。ついでに俺も傾げる。そんな緊張するような事だろうか?
……あぁ、俺基準で考えてちゃ駄目か。俺は何度も会ってるから普通だけど、サローナ達にとってはラグニール達は伝説上の生物になるのか。
俺はそうしてラグニール達夫婦の事、メアルの事、どうしてメアルを俺が預かる事になったのかを説明すると、皆一気に脱力した。何よりいざという時は俺が皆を守ると伝えると皆安堵していた。ただ、俺の説明を聞いたカガネの言葉が印象的だった。
「……伝説上の生物がもの凄く俗物っぽい……」
まったくもってその通りだと思う。
「それで、まずはと言う事は他にも理由があるんでしょうか?」
ナミニッサが続きを促してきたので、俺はメアルの事以外の理由を伝える。自分が着ている服は元々山に居る魔物の素材で作った事。今は切れてる部分があるから新調したい事。それと同時にサローナ達の新しい武器や防具も用意したいという事を伝えた。この国や王都で揃えてもいいのだが、今のサローナ達の強さに見合う武具を揃えようと思ったら、山で魔物を狩って俺が造った方がいいんじゃないかと思ったのだ。以前ステータスのDEX値で迂闊に作っちゃ駄目ですと注意されたが、自分の嫁さん達ぐらいにはいいんじゃないだろうかと思う。まぁ、最悪ラグニールの城にある宝物庫を見せてもらおう。色々あるんじゃないだろうかと思う。
俺がその事を伝え終わると、何故か皆嬉しそうに顔を綻ばせる。理由を聞くと、俺お手製の装備を身につけられる事が嬉しいそうだ。そして最後にタタが再び訪ねてくる。
「山に行く事は賛成しますが、どうやって向かうのでしょうか?あの山は人が入り込めるような場所ではないと聞いておりますが?」
「あぁ、それも問題ないよ。強くなったタタとナミニッサとカガネの結界魔法でガードすれば行けると思う。それにいざとなれば俺が神格化して皆を連れていくから」
その言葉に皆が納得の表情を見せるので、これで決まりかな?と思った。
「じゃあ、準備が出来次第、この国から旅立とうか」
「「「「「「「はいっ!!」」」」」」」
そうして俺達は再び旅立つ準備を始めた。