作品タイトル不明
第95話 意外と容赦ないタイプなのよ
「〈注意報〉! ……こっちの方ですね。あの建物の中に三十人ほどいます」
フェリオネアで新たに結成された臨時の治安回復部隊。
僕はその一員として、犯罪グループの居場所を〈注意報〉を使って突き止めていく。
「そんなことまで分かっちまうのかよ……。俺たち暫定政府があらかじめ調べ上げていた情報より、ずっと正確じゃねぇか……」
「やっぱり万能魔法ね」
「違いねぇ」
建物の中に乗り込んでいくと、そこには大勢の若者が屯していた。
「何だ、テメェらは!?」
「ここがオレたちクロウテイルの拠点だと知ってんのか!?」
「暫定政府の治安回復部隊だ。クロウテイルだか何だか知らんが、これ以上、お前さんたちのような連中に好き勝手なことされないよう、潰させてもらうぞ」
「ああんっ? やれるもんならやってみやがれ!」
「「「「おおおおおおっ!」」」
若者たちが躍りかかってくる。
「じゃあ、どんどん更生させていきますね。〈ペット飼育〉!」
血気盛んな彼らに〈ペット飼育〉を使うと、途端に従順になっていく。
「そこで大人しくしててね」
「分かりました!」
「君も」
「はい!」
「君も」
「もちろんです!」
仲間が次々と離脱していくので、犯罪グループの若者たちが動揺する。
「な、何が起こってるんだ!?」
「ヴァン、お前どうしちまったんだよ!?」
「テメェら、戦えよ!?」
一方、治安回復部隊の面々も困惑している。
「す、すごいな……これがフェリオネアを復興に導いたという少年の力か……」
「都市ごと水攻めしてオークを全滅させたとか、建物をすべて新築並みに修復してしまったとか、荒れた農地を一瞬で豊作にしたとか、どれも半信半疑だったが……」
「これを見るとマジだったようだな……」
そんな中、若者の一人が凄まじい咆哮を轟かせた。
「オオオオオオオオオオオオオオオッ!!」
屈強な体躯の青年だ。
他の者たちより二回り以上も身体が大きく、もはや猫の獣人というより、獅子の獣人と言った方がいいかもしれない。
この青年がリーダーのようだ。
「なに手間取ってやがる! とっととぶち殺せ!」
「〈ペット飼育〉。抵抗をやめさせてくれる?」
「……分かりました! おい、お前ら聞いたか! すぐに武器を捨てろ!」
「「「レオルさん!?」」」
名前はレオルというらしい。
レオルの呼びかけを受け、あちこちで繰り広げられていた交戦が収まっていく。
「い、一体どうなってんだ……?」
「〈ペット飼育〉」
「あ、あいつの魔法のせいだ! あれを使われて、みんなおかしくなっちまう!」
「〈ペット飼育〉」
「に、逃げろおおおおっ!」
「〈ペット飼育〉」
慌てて逃げようとした若者たちを、治安回復部隊のメンバーたちが抑え込む。
「やめろおおおおおっ!?」
「〈ペット飼育〉」
「ひいいいいっ!?」
「〈ペット飼育〉」
「そ、それだけはっ……」
「〈ペット飼育〉」
命乞いするかのように懇願してくる者たちもいたけど、僕は構わず〈ペット飼育〉を使っていった。
「……これだけ見ると、どっちが悪党か分からねぇな」
「ライルはこういうとき、意外と容赦ないタイプなのよ」
幼少期に災害に遭うという気の毒な事情があったとはいえ、復興しつつあるこの都市で犯罪行為を繰り返してきたことは許されることではない。
シルアのように、真っ当に暮らしている若者もたくさんいるのだ。
「これで全員かな? あれ? 君には使ったっけ?」
「はい! 使われました!(マジでこいつヤバ過ぎだろおおおおおおっ!? だが従順になったフリして乗り切ってやるぜ!)」
「いや嘘だね。〈注意報〉が反応してるから。〈ペット飼育〉」
「ぎゃああああああああああっ!?」
そうして全員に〈ペット飼育〉を使って、彼らはすっかり従順な若者の集団になったのだった。
「もう二度と悪いことはしないように。分かった?」
「「「はい! もう二度と悪いことはしません!」」」
その後も犯罪グループの拠点に乗り込んでは、若者たちと次々と更生させていった。
「あ、その人、魔薬の密売人だね」
「っ!? な、何だ、お前は!? わ、私が魔薬の密売人だなんて、人聞きの悪い!」
「ついでに更生させちゃおう。〈ペット飼育〉」
「間違いありません。私は魔薬を密売するためにこの都市に来ました」
その途中で見つけた犯罪者にも〈ペット飼育〉を施しておく。
最後に大きな犯罪グループを潰したところで、〈注意報〉の反応がほぼ消失した。
「これでもう組織立った連中は全員大人しくなったはずです。……あれ? どうしたんですか? まだ深刻そうな顔されてますけど……もしかして何か問題が?」
「いや、単純にお前さんの魔法のとんでもなさに戦慄してるだけだ……。正直なところ、これまで何度もお前さんのヤバさを見てきた俺ですら、ビビっちまってる」
ゼファルさんが苦笑しながら言う。
「もうこれからは神と呼んでいいか?」
「それは絶対やめてください」
と、そのときだった。
また〈注意報〉から強い注意喚起が入ってくる。
「っ……」
「どうしたんだ?」
「今、〈注意報〉に大きな反応が……。でも、かなり遠い? なのに、この大きい反応……ちょっとさらに範囲を広げてみます」
〈注意報〉の及ぶ範囲を拡大していくと、
「こ、これは……っ!? た、大変です! 軍がっ……人間たちの軍が、このフェリオネアに向かって進軍してきています……っ!」