軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

第72話 別のパスタを食べようと思います

「……すいません、作った張本人の僕が意識を失ってしまって……すでに何度か食べているから、大丈夫だろうって油断してました……」

自分で作ったチキントマトクリームパスタを食べて、意識が飛んでしまっていたみたいだ。

遠くからローザさんたちが僕の名前を呼ぶ声が聞こえてきて、どうにか戻ってくることができたのである。

「いきなり白目を剥いたまま固まって、びっくりしましたわ……」

「……これからはあらかじめ〈目覚まし〉を使ってから食べることにします」

〈目覚まし〉は予約が可能で、決めておいた時間に覚醒させてくれるのだ。

「それは根本的な解決になりますの……? 何にしても無事に意識が戻ってよかったですわ。ただ、念のためもうしばらくここで休んでいた方がいいと思いますわ」

「で、でも、僕のせいで休憩が長引くことに……」

「そんなことまったく気にする必要はありませんわ。ここまでライルくんのお陰でとても順調に来ているわけですし」

ローザさんが言うと、それにアルテアさんが力強く同意する。

「そうそう! 気にしなくていいのだ! ……そんなことよりも、危険だからもうそのパスタは食べない方がいいと思うのだ! よかったら吾輩がちゃんと処理してあげるのだ!」

「ちょっと待ちなさいよ! あたしだって食べたいんだけど!?」

「人の分まで食べようとするなと言ったのは誰なのだ?」

「さ、さっきとは状況が違うでしょうが!」

言い争うアルテアさんとタティさん。

「えっと……じゃあ、二人で分け合ってください。僕は代わりにさっき手に入ったカニを使った、別のパスタを食べようと思います」

〈食材切り〉で倒したカニの魔物デスクラブ。

〈注意報〉を使ってみても特に反応はないため、実際に食材として利用できるはずだった。

毒が入っていたり、めちゃくちゃ不味かったりする場合は、しっかり〈注意報〉が教えてくれるからね。

「それも食べたいのだああああああああああっ!?」

「それも食べたいんだけどおおおおおおおおっ!?」

「えええっ……?」

「……あ、あたくしも」

「……食べたい……」

「ローザさんたちも……?」

結局、新たに作ったカニのクリームパスタをみんなで食べることに。

「「「うまああああああああああああああああああああああああああっ!?」」」

コカトリス肉のパスタに匹敵する美味しさだったみたいで、

「少年、これも危険なのだ! また意識を失ってしまったらダメだから、少年の分は吾輩が食べてあげるのだ!」

「あたしも食べてあげるわ!」

「いえ、大丈夫です。そういうこともあろうかと、〈味付け〉を最低限にしたやつを僕用に分けておいたので」

「「……」」

それでも十分過ぎるほど美味しかった。

口の中にカニの旨味と風味が広がって、身体中に多幸感が満ち溢れていく――

って、危ない危ない。

また飛んじゃうところだった……。

なんだかんだ一時間くらい休憩を取って、僕たちは探索を再開した。

「すでに四千メートルくらいまでは来たはずですわ」

「傾斜がかなりキツくなってきたのだ!」

「ええ、魔物だけでなく、転落にも気をつけて進まなければいけませんわね」

深部と呼ばれている五千メートルが近づいてきて、ますます傾斜が厳しくなってきた。

傾斜角度としてはすでに40度に迫るだろう。

「そうだ。もしかしたらこういう場面でもあれが使えるんじゃ……?」

「ぜひお願いしますわ」

「まだ何も言ってないですけど!?」

「今までの実績を考えたら当然ですの」

「うーん、あまり期待はしないでくださいね? 基本的には歩くのをサポートするだけの魔法なので……〈歩行補助〉」

試してみたかったのは〈歩行補助〉だ。

こういう斜面を進むときに使ったことはなかったけれど、もしかしたら上り下りがしやすくなったり、滑り落ちるのを防いでくれたりするかもしれない。

「明らかに歩きやすくなりましたわ!」

「本当なのだ! こんなに傾斜があるのにすいすい進めるのだ!」

「これ、足腰への負担も軽減されてる気がするわね?」

「……心なしか……摩擦も……増してる……」

どうやら効果抜群だったみたいだ。

もっと早く気づけばよかったなぁ。

さらに五百メートルほど進んだところで、

「本来ならそろそろ横穴ルートのはずですが……あっ、この穴のようですわね。目印がありますわ」

横穴の入り口に目印を発見する。

丸の中の矢印は穴の奥の方を指していた。

「けど、少年のお陰でまだまだ普通に斜面の方を進めそうなのだ!」

「そうね、ぜんぜん歩けるわね。傾斜角度はもう50度近いけど……」

「ですが、問題は目印ですわ。正規ルートから大きく逸れてしまうと、せっかく先人たちが刻んでくれた目印が使えなくなってしまいますの」

このまま斜面を進むと早く深部まで進める一方で、目印が利用できず、いずれ行き詰まってしまう可能性があった。

「急がば回れと言いますし、ここは大人しく横穴から進んでいく方がよさそうですわね」

「もしかしたら」

「ライルくん、お願いしますわ」

「だから早すぎですって!?」

〈道案内〉を使えば目印を頼らなくても大丈夫かもって言おうとしたのに……。