軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

第73話 尻尾が飛んでったのだ

「〈道案内〉!」

生活魔法の〈道案内〉を使う。

すると進むべき道が、矢印によって示された。

「道案内って……完全に今の状況に合致した魔法ですわね」

「生活魔法、便利過ぎるのだ……」

「勘違いしてはダメよ。普通の生活魔法使いじゃ、絶対こうはいかないはずだから」

というわけで先人たちが残してくれた目印を無視し、もう少し行けるところまで斜面を下りていくことになった。

「魔物も少し減ってきたのだ?」

「そうかもしれませんわね。なにせこの急斜面。魔物にとっても嬉しい環境ではないはずですわ」

横穴の方が魔物の数が多いそうだけど、そうした理由もあるのだろう。

「あ、でも、空から魔物が来ます」

〈注意報〉に反応があった。

それも結構な大きさで、危険度が高い魔物のようだ。

警戒する中、暗闇の奥から巨大な影が姿を現す。

「グルオオオオオオオオオオオオオオオッ!!」

大きな雄叫びを轟かせたのは、翼を有する獰猛なトカゲだった。

「ど、ドラゴンなのだ!?」

「いえ、ワイバーンですわ!」

ワイバーン。

トカゲとよく似たフォルムで飛行能力を持ち、ドラゴンの亜種とも言われている凶悪な魔物だ。

目の前に現れたのは全長五メートルほど。

闇に紛れる黒い鱗のワイバーンで、特徴的なのが尻尾の先が死神の鎌のような形状をしている点だろう。

「しかもこいつ、リーパーテイルと呼ばれる上位亜種だわ! あの尻尾の攻撃を受けると、一定確率で即死させられるから気をつけて!」

「即死!? こ、怖すぎるのだ!」

「……おいで……オルちゃん……」

アルテアさんが怯える中、カーミラさんが死霊魔法を発動する。

召喚されたのは、ケルちゃんと呼ばれた三つ首のキメラアンデットではなく、双頭の魔物だった。

頭の一つは狼のそれだけど、もう一つは牛だ。

背中にはケルちゃんと違って翼が生えていて、どうやら空を飛ぶこともできるらしい。

「オオオオオオオンッ!!」

「ブモオオオオオオッ!!」

ワイバーンに躍りかかるオルちゃん。

その尻尾の大鎌を振り回してワイバーンが反撃する。

「ひひひ……無駄よ……アンデッドに……即死攻撃は……効かない……」

もちろんすでに死んでいる相手に、リーパーテイルの即死攻撃は何の意味もない。

狼の頭が喉首に噛みつくと、牛の頭がその鋭い角で鱗を貫いた。

当然ながらワイバーンも負けてはいない。

逆に噛みつき返すと、翼を力強く羽ばたかせて宙返りしたかと思えば垂直落下し、双頭のキメラアンデッドを勢いよく斜面に叩きつけた。

「オルちゃん……っ!?」

アンデッドなので痛みはないだろうけれど、狼の首が明らかに逆方向に曲がってしまい、カーミラさんが悲鳴を上げる。

ただ、ワイバーンとオルちゃんが揉み合っているその隙を見逃さず、ローザさんが鞭を振るった。

バチバチバチッ!!

「~~~~~~ッ!」

雷撃を纏う鞭の先端がワイバーンを直撃する。

さらに全身が痺れて一時的にスタン状態になったところへ、アルテアさんとタティさんが畳みかけた。

さすがBランク冒険者たちだ。

相手はワイバーンの上位亜種という強敵だというのに、戦いを優勢に進めている。

それでもリーパーテイルはすぐにスタンから立ち直ると、その尻尾を猛スピードで振り回す。

「ひぇっ!? あ、危ないのだ!」

「スタンからの回復が思ったより早いわね……っ!」

慌てて距離を取るアルテアさんとタティさん。

やっぱりあの尻尾が厄介だ。

「僕もサポートします……っ! 〈食材切り〉!」

トカゲは割と食用にされているので、トカゲに似たワイバーンも食材にできるイメージが湧きやすい。

ただ、さすがにあの強靭な鱗に守られている胴体に有効的なダメージを与えられるとは思えないので――

ザンッ!

「~~~~~~ッ!?」

尻尾の先端の大鎌がくるくると宙を舞った後、斜面を転がり落ちていく。

「ええええっ!? 尻尾が飛んでったのだ!?」

狙ったのは細くなっている尻尾の部分。

太い胴体ではなく、そこなら上手くいけば切断できないまでも、厄介な即死攻撃を封じることができるかもと考えたのだ。

「……切れちゃった」

「これで尻尾を警戒する必要はありませんわ! 一気に畳みかけますの!」

即死攻撃を喰らう心配がなくなり、みんなで猛攻を仕掛ける。

「グルオオオオオオオオッ!?」

「あ、空に逃げるのだ!?」

「〈食材切り〉!」

ザンッ!

「~~~~~~ッ!?」

咄嗟に右翼を狙って〈食材切り〉を放つと、翼膜がぱっくりと切断された。

片翼が飛行能力を失い、リーパーテイルは錐揉みしながら斜面に激突する。

「少年さすがに活躍し過ぎなのだ!? せめてトドメは吾輩に任せるのだ!」

そこへすかさず距離を詰めた俊敏なアルテアさんが、大剣をリーパーテイルの喉首に叩きつけた。

まさにそこは鱗が少し薄くなっている、ワイバーンの急所とも言える場所だ。

「アアアアアアアアアアアアアアアッ!?」

断末魔の悲鳴を響かせ、絶命するリーパーテイル。

「……ふう。何とか倒せましたわね。リーパーテイルは、主に大穴の深部に棲息しているという魔物ですわ。それが現れたということは、いよいよ深部に到達したということですの」

――〈胃腸活性〉を習得しました。