作品タイトル不明
第66話 随分と簡単に言ってくれるのだ
「アーミィアントの単体の強さは大したことありませんわ! 恐ろしいのは一匹を攻撃すると、大量の仲間が集まってくることですの!」
「そそそ、それは知らなかったのだ!? でも、一撃で仕留めたのだから仲間を呼ぶ余裕なんてなかったはずなのだ……?」
アルテアさんの楽観に、僕は首を振って訴えた。
「いえ、あそこの横穴からわんさか出てきそうです!」
恐らくアーミィアントの巣になっているのだろう、その横穴から続々と蟻が飛び出してくる。
もちろん真っすぐこっちに向かって殺到してきた。
「何で仲間がやられたのが分かってるのだ!?」
「蟻は独自のフェロモンで連携を取ってると聞いたことがありますわ!」
ローザさんが叫びながら鞭を振るい、先頭の蟻、数匹の頭部を破壊する。
だけど味方の死など物ともせず、死体を踏み越えて襲いかかってくる。
「も、物凄い数なのだああああっ!?」
「みんな一か所に固まるのですわ! でないと呑み込まれてしまいますの!」
「〈虫よけ〉!」
僕は昆虫系の魔物に対して絶大な効果を持つ生活魔法、〈虫よけ〉を発動した。
蟻の動きが急激に鈍くなる。
「やっぱり逃げては行かないか。デスグラスパーと似たような性質みたいだね」
ただ、弱体化はしてくれたみたいだ。
「少年は何をしたのだ!?」
「〈虫よけ〉っていう生活魔法を使いました。本来なら逃げていくはずなんですけど……その代わり弱体化してると思います」
「確かに明らかに動きが緩慢になっていますわ」
変わらず向かってくる蟻の群れを、ローザさんが鞭で一方的に蹂躙する。
「むしろ絶好な的ですわね」
「めちゃくちゃ倒しやすいのだ!」
アルテアさんも大剣を振り回して蟻を次々と蹴散らしていく。
「ケルちゃん……おいで……」
さらにカーミラさんが死霊魔法を発動すると、現れたのは全長五メートルを超す三つ首の魔物。
一つは狼の首で、一つは獅子の首、最後の一つは鰐の首というキメラだけれど、所々の肉が削げて骨が見えていた。
アンデッドらしい悍ましい見た目……。
「ひひひ……餌がいっぱいよ、ケルちゃん……好きなだけ……食べていいわ……」
「「「オオオオオオッ!」」」
ケルちゃんと呼ばれたそのアンデッドは、嬉しそうに尻尾を振りながら蟻の群れへと飛びかかっていった。
そんな中、一匹の蟻がいつの間にか後衛のタティさんに背後から襲いかかっていた。
「あ、危ない!」
「心配無用よ」
一瞬で身体を反転させながらタティさんが放った蹴りが、アーミィアントの頭部を吹き飛ばした。
「ただのヒーラーだと思った? こう見えて格闘もできるのよ。白魔法で身体能力も強化すれば、そこらの前衛よりも前衛で戦えると思うわ」
「す、すごいです、さすがBランク冒険者……っ!」
ローザさんたちの活躍で蟻が瞬く間に減っていく。
ただ、巣穴からはまだまだ大量に這い出してきていて、キリがなさそうだ。
「僕もサポートしますね!」
「って、少年っ、前に出たら危ないのだ!」
「〈害虫駆除〉」
「「「……は?」」」
〈害虫駆除〉を発動すると、周辺にいる蟻が一斉に絶命して動きを止めた。
こちらはしっかり効くようだね。
「〈害虫駆除〉〈害虫駆除〉〈害虫駆除〉〈害虫駆除〉……」
「ちょっ、一体どうなってるのだ!? 蟻が一瞬で死んでいくのだ!?」
「生活魔法の〈害虫駆除〉です。名前の通り害虫を駆除できる生活魔法なので、昆虫系の魔物には効果覿面なんですよね」
僕はそのまま巣穴に近づいていくと、〈注意報〉の反応が消失するまで〈害虫駆除〉を連発し続けたのだった。
――〈防風〉を習得しました。
「あ、全滅できたみたいです」
「全滅できたみたいって、随分と簡単に言ってくれるのだ!?」
「戦闘でもサポートができてよかったです」
「あれのどこがサポートなのだああああっ!?」
アルテアさんが絶叫する一方で、ローザさんは苦笑しながら、
「リーゼからある程度の話は聞いてましたが……これは想像以上でしたわ。生活魔法使いなのに、サポートだけでなく、火力役としても十分に活躍できると聞いたときは何を言っているのかと思いましたけれど……」
「いやいや、ぜんぜん火力役なんかじゃないですよ。今のは昆虫系の魔物にしか効果がない魔法ですし」
アーミィアントの外骨格は、武具を造る際の素材として利用されるらしい。
売ればそれなりのお金になるということなので、綺麗な素材は回収していくことに。
「アイテムボックスに入るのはせいぜい三分の一くらいですわね」
「それなら僕に任せてください!」
アイテムボックスの容量的にすべての素材を回収するのは難しいというローザさんに、僕は素材の回収役を買って出た。
「〈小物収納〉」
散乱していたアーミィアントの素材が次々と消失していく。
〈小物収納〉によって亜空間の中に保管しているのである。
「って、どんだけ入るのだああああああっ!?」
「まだまだ入りますよ?」
やがてすべての素材を亜空間に収めることができた。
「「「小物とは……」」」
こうしてアーミィアントの群れを撃破した僕たちは、ついに大穴の中腹に築かれた集落〝ギア〟に辿り着いたのだった。