作品タイトル不明
第57話 ちょっと軽く拷問して聞いてみよう
魔物の素材を売って得た報酬。
アルクたちは何も要らないと主張してきたけれど、さすがにそういうわけにはいかないとこちらも主張した結果、僕の取り分が半分、残りをアルクたち三人で分けるということになった。
「じゃあ、目的地があるから僕はこの街を出るね」
「ああ……悔しいけど、今のおれたちじゃレベルが違い過ぎる……お前を引き止めることなんてできやしないぜ……」
ラモンの街を出発することになり、アルクが残念そうに言う。
「けどよ! おれたちはもっと強くなってみせる! それでライル、お前と遜色ないレベルの……いや、お前以上の冒険者になれたらっ……今度こそお前を仲間にしてやるからな……っ!」
「……謎の上から目線ね」
「でも、アルクくんらしいです……」
僕は苦笑しながら頷いた。
「あはは、考えておくよ。それより今後ダンジョンに挑戦するときは慎重にね?」
そうして彼らと別れ、僕は魔境を目指す旅を再開したのだった。
「ん? 何だろう、あの集団?」
魔境に向かって街道を進んでいると、前方に怪しげな集団を発見した。
というのも、明らかに堅気ではなさそうな男たちばかりで構成されているのだ。
「〈注意報〉! ……なるほど、どうやら盗賊っぽいね」
しかも結構な速度で移動している。
「もしかして、誰かを追いかけてる?」
〈重さ軽減〉を使って体重を軽くしてから跳躍し、空から様子を確かめてみた。
すると案の定、盗賊団の前には隊商と思わしき一団がいて、背後から迫ってくる盗賊団から逃げようとしているようだ。
「追いつかれるのも時間の問題だね」
盗賊団を乗せた三つの重装車を曳いているのはトカゲの魔物。
確かアースドレイクといって、怪力と持久力を併せ持つことから、地域によっては馬の代わりに利用されている種族だ。
僕は〈重さ軽減〉と〈歩行補助〉を併用したまま走った。
見る見るうちに盗賊団との距離が縮まってきて、気がつけば最後尾の車に追いついてしまう。
「なっ!? 何だ、てめぇは!?」
「おい、後ろから変なガキが来てやがるぞ!」
「ちょっと待てっ? こいつ、この速さに余裕でついてきてねぇか!?」
盗賊たちに見つかってしまったけれど、構わず魔力弾を放った。
狙ったのは後方にある両側の車輪。
バギンッ!
「「「……は?」」」
後ろの車輪がそろって分離し、明後日の方向へと転がっていく。
直後に盗賊たちが乗っている台の後方が地面と激突すると、その衝撃で彼らは重装車から放り出された。
「「「~~~~っ!?」」」
その重装車を飛び越えると、残る二つの重装車の後部車輪も魔力弾で撃ち抜いてやる。
「があっ!?」
「な、何が起こった!?」
「後輪が外れたんだ……っ!」
盗賊たちが次々と地面に投げ出されて悲鳴を上げる。
「こいつは貴様の仕業か……っ?」
「もしかして君が頭目?」
他の盗賊たちが少なからずダメージを負って痛がる中、唯一、地面にしっかり着地して無傷の男がいた。
こめかみの辺りに彫った多頭の蛇のタトゥーが特徴的で、その身のこなしからして明らかに強い。
「どうやったか知らんが、オレたちに喧嘩を売ってきたことを後悔するんだな!」
腰のサーベルを抜き放ち、躍りかかってきた。
もちろん接近戦に持ち込まれたら勝負にならないので、押し戻させてもらおう。
「〈水生成〉」
ザバアアアアアアアアアアアアアアアアアンッ!!
「えっ……ぬがああああああばばばばばばばばばばばっ!?」
出現した膨大な水が、唖然とする男を呑み込んだ。
さらにそれだけでは飽き足らず、アースドレイクごと三台の重装車を押し流していく。
「〈冷房〉」
追い打ちをかけるように極寒の冷気を放てば、盗賊たちを閉じ込めながら一帯が完全に凍りついた。
「……道を通れなくしちゃった……ちょっとやり過ぎたかな?」
「あの……」
恐る恐る声をかけてきたのは、盗賊たちから逃げていた商隊の一団だった。
「た、助けていただきありがとうございます。私はこの商隊のリーダーをしているタイラーと言います」
四十代半ばくらいだろうか、よく日焼けした男性がお礼を言ってくる。
詳しく聞いてみると、彼らはとある商会に所属する商人たちで、やはり街道の途中で盗賊団に襲われ、逃げていたようだ。
ちなみに護衛の冒険者もいたそうだが、盗賊たちが思いのほか強く、やられてしまったらしい。
「しかしまだお若いのに、これほどの魔法を使いこなされるとは……」
「いえ、ただの生活魔法ですよ」
「生活魔法!? ははは、御冗談を」
タイラーさんは苦笑しながら、氷漬けになった盗賊の男を確認すると、
「この悪趣味な多頭の蛇のタトゥー……間違いありませんね。ここ最近、この一帯で略奪行為を繰り返している盗賊団、ヒュドラの牙の幹部格でしょう」
「あ、頭目じゃないんだ」
嫌悪感を露わにして、タイラーさんは教えてくれる。
「しかもただ物資を奪うだけではありません。近隣の街や村で人間を攫い、闇市場で売り払うなどして強制的に奴隷にしているというのです。我々も、もし捕まっていたらどうなっていたことか……」
どうやらかなりあくどい盗賊団のようだ。
「当然、近隣の領主も団を壊滅しようと動いていますが、なかなかその拠点を突き止めることができずにいるそうです」
「なるほどね。どこかに隠れ家でもあるのかな? ちょっと軽く拷問して聞いてみよう」