軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

第58話 逃げたらどうなるか分かってるよね

「〈加熱〉、〈痛み止め〉、〈目覚まし〉」

「がっ!? はぁはぁ……お、オレは一体……?」

氷漬けになっていた盗賊団の幹部だという男を、まずは〈加熱〉で氷を溶かし、〈痛み止め〉で治療し、〈目覚まし〉で無理やり覚醒させた。

「やあ、起きたね」

「っ……貴様は、さっきのガキ!?」

「単刀直入に聞くね。君たち盗賊団の拠点はどこ?」

「ああっ? 何で貴様にそんなこと教えなけ――」

ドンッ!

男の右腕が根元から飛んだ。

魔力弾で撃ち抜いてやったのだ。

「……は? う、腕がぁっ!?」

「〈修繕〉」

「ぎいやあああああああああああああああああああああああっ!?」

地面を転がっていた男の腕が、切り離された肩と繋がり、元通りに修復されていく。

だけど〈修繕〉は本来なら人に使うものではないため、途轍もない激痛を伴う。

「余計なことは言わなくていいよ。もう一度聞くね? 君たちの拠点は?」

「っ……くくく、舐められたもんだな? オレを誰だと思ってやがる? ヒュドラの牙の幹部、パイソンさ――」

ドンッ!

「〈修繕〉」

「ぎいやあああああああああああああああああああああああっ!?」

「ひぃっ……た、頼むっ……もうやめてくれっ……お、お願いですっ……拠点の場所でも何でも教えますからっ……だ、だからっ……許してくださいいいいいいっ!」

身体の破壊と〈修繕〉を何度も繰り返していると、完全に心が折れたみたいだ。

地面に額がめり込むほど頭を下げ、必死に懇願してくる男に、僕は言う。

「拠点はどこ? そこに攫った人たちもいる?」

「きょ、拠点はここから北に少し行ったところにある奇岩地帯にありますっ……天然の洞窟を根城にしていてっ……非常に見つけづらい場所です……っ! 奴隷にするために、各地で攫った人たちもそこに監禁しています……っ!」

「じゃあ、そこまで連れていってくれる?」

「も、もちろんですっ!」

パイソンと名乗ったその盗賊団幹部の男を引き連れ、僕は彼らの根城を目指した。

ちょうどこの辺りは複数の街道が交差しているところで、盗賊団が拠点にするには都合のいい場所なのだろう。

パイソンが恐る恐る訊いてくる。

「ま、まさかとは思いますが……お一人で乗り込むおつもりですか……?」

「うーん、そこは様子次第かな」

ひとまず拠点の近くで〈注意報〉を使ってみる予定だ。

単身ではどうしようもなさそうなら、近くの街で応援を要請する必要があるだろう。

すぐに奇岩地帯が見えてきた。

不気味な形状の岩が無数に乱立し、岩の多くには大きな穴が開いているため、隠れるのに適した一帯だ。

「と、とても迷いやすく、我々団の一員でも、目印がなければ拠点に辿り着くのも難しいのです……実は岩に、蛇の紋様が刻まれていまして……」

「いや、もう案内はいいよ。ここからは自力で行けるからさ。僕一人の方が見つかりにくいだろうし」

「え?」

「君は近くの街で勝手に出頭して、騎士団とか冒険者の応援を連れてきてよ。もちろん逃げたらどうなるか分かってるよね?」

「ひっ……に、逃げませんよぉっ……」

そうしてパイソンと別れたところで、僕は〈道案内〉を発動。

盗賊団の拠点の方向を示す矢印が出現した。

「〈注意報〉も使ってるけど、今のところはそれほど強い注意じゃないね」

〈道案内〉のお陰で迷うこともなく、盗賊団の拠点があると思われる洞窟までやってきた。

「よし、乗り込んじゃおう」

見つかることを想定していないのか、出入口の周辺には見張りすらいなかった。

僕は正面から洞窟へと足を踏み入れる。

「む? 何だ、お前は? 見たことないガキだが――」

最初に遭遇した盗賊を魔力弾で仕留めた。

暢気な台詞から考えて、やはり侵入者なんてまったく想定もしていないような様子だ。

さらに盗賊と出くわすたびに魔力弾で片付けつつ、奥へ奥へと進んでいく。

「大したやつは出てこないね。もしかしてちょうど出払ってるのかな?」

やがて発見したのは、鉄格子でできた牢屋。

中には二十人近い人たちが捕らえられていた。

男性もいるけれど、女性や子供が多い印象だ。

「もう大丈夫だよ。助けに来たから」

「「「えっ、子供……?」」」

「……こう見えて成人してるよ。Dランク冒険者だし」

牢屋には当然、鍵がかかっていた。

だけど鉄格子を〈加熱〉で溶かしてしまえば、彼らを逃がすことができるだろう。

「いや、それよりこれを試してみようかな。……魔力刃」

魔力操作の応用で、魔力を刃物のようにできないかと密かに考えていたのだ。

ズバッ!

「上手くいったね」

鉄格子が真っ二つになり、人が通り抜けできるようになった。

かなり近距離でしか使えないものの、思いのほか綺麗にスパッと斬ることができたし、万一のときには接近戦などでも役立ちそうだ。

そうして捕まっていた人たちを逃がそうとしたとき、〈注意報〉に強い反応があった。

複数人がこっちに近づいてきている。

「頭目が戻ってきたのかな?」

出くわさずに済むような別ルートもないため、このまま迎え撃つしかなさそうだ。

しばらくすると、盗賊の集団が姿を現した。

「……ガキだと?」

「おいおい、まさか、こんなガキにやられたってのかよ?」

「見ろ、牢屋が壊されてるぞ? これもこいつの仕業なのか?」

僕の見た目のせいか、盗賊たちが戸惑う中、ひと際身体の大きな禿頭の男が一喝した。

「おい、お前ら油断するんじゃねぇ。明らかにただのガキじゃねぇぞ」

身長は二メートルを超え、全身に彫られた多頭の蛇のタトゥー。

パイソンから、あらかじめ盗賊団の頭目の特徴を聞いていたのだけれど、それと完全に一致していた。

こいつが頭目のコブラという名の男だろう。