作品タイトル不明
第56話 まだこっちに来るなって
「あっ、この見覚えのある通路の感じ。どうやら上層に帰ってこれたみたいだね」
転移トラップで下層に飛ばされた僕たちだったけれど、生活魔法を駆使することで、元いた地下5階に戻ることができた。
「一時はどうなることかと思ったけど、サポート要員としてみんなを無事にここまで連れ帰ることができてよかった」
「「「どう考えてもサポート要員なんかじゃなああああああい!!」」」
「え?」
なぜか三人から一斉に否定され、僕は面食らう。
「もしかして、サポートが不十分だったってこと……?」
「ぜんぜん違う! サポートどころの働きじゃなかったってことだ!」
「魔物は瞬殺するし、索敵はするし、トラップは発見するし、道は間違えないし、疲れたら体力を回復してくれるし、素材を無限に運搬できるし……完全にオールマイティじゃないの! どこがサポート要員よ!」
「正直、ライルくん一人で、このダンジョンを攻略できると思います……完全にもう一人パーティです……あたしたち必要ないです……」
「うーん、それらをすべてひっくるめて、サポート要員ってことでどうかな?」
「「「サポート要員の定義……」」」
もちろん今日はこれ以上、探索を続けるつもりはない。
地下5階の安全地帯で再び休息を取ったら、すぐに地上を目指すことに。
「せっかくだから、休息がてらコカトリスの肉を味見しよっか」
例のごとく〈加熱〉と〈火起こし〉で中は柔らかく、外はパリッと仕上げ、まずはそのまま食べてみることに。
「コカトリスの肉って言ったら、庶民には手が届かないような高級肉だぜ……? ほ、本当におれたちも食べていいのか?」
「良いに決まってるでしょ? 一緒に倒したんだから」
「「「どう考えても一緒に倒してない」」」
ごちゃごちゃ言いながらもコカトリスの肉を口にした三人は、目を見開いた。
「「「う、美味すぎる……」」」
その目から滂沱のごとく涙が溢れ出してくる。
どうやら泣くほど美味しいらしい。
「もしかしておれたち、本当はコカトリスにやられて死んじまったんじゃ……」
「ここが天国だとしたら、こんなに美味しい物を食べれるのも納得できるわ……」
「た、たとえ死んでたとしても、後悔はないですぅ……」
「大丈夫、死んでないから。……もぐもぐ。うん、確かにニワトリスの肉とは比べ物にならないくらい美味しいね」
続いて〈味付け〉を施す。
レモンハーブ風にしてみた。
「さ、さっきよりも、さらに美味しくなってるってことだよな……?」
「そんなの、本当に食べていいのかしら……?」
「なんだか怖くなってきました……」
味付けしたコカトリス肉を、アルクたちが恐る恐る口に運ぶ。
「「「…………………………」」」
「あれ? どうしたの?」
「「「…………………………」」」
「ちょっ、僕の声、聞こえてる!?」
「「「…………………………」」」
「ねぇっ!? 大丈夫!? 戻ってきて!」
「「「…………………………はっ!?」」」
ようやく意識を取り戻したみたいだ。
「死んだばあちゃんに会ったぜ……お前は昔から無鉄砲だから、もうちょっと落ち着きなさいってさ……」
「私は死んだお爺ちゃんに会ったわ……まだこっちに来るなって……」
「あ、あたしは、昔飼ってた猫に会いました……にゃーって鳴いて……何言ってるかは分からなかったです……」
「本当に天国に行きかけてたの!?」
どうやらコカトリス肉+〈味付け〉は、精神的に参っているときに食べたら死にかけるらしい。気を付けないとね。
なお、僕は一瞬意識を失いかけただけで済んだ。
腹ごしらえが終わるとすぐに安全地帯を出発した。
だけどそんな僕たちの前に再び現れたのが、
「コケコケッ!」
「「「ゴルドリス!!」」」
僕たちを転移トラップの罠にかけた、憎きあの黄金の鶏だった。
もっとも、あの個体は僕たちと一緒に下層に飛んだので、恐らく別の個体だろう。
「〈食材切り〉」
「コケッ?」
一撃だった。
ゴルドリスが解体されて、肉が部位ごとに地面に転がる。
「す、すげぇ……肉が黄金に輝いてる……」
「コカトリス肉よりも美味しいのよね……?」
「幻と言われるゴルドリスのお肉が……こんなにあっさり手に入っちゃうなんて……」
「食べてみる?」
「「「絶対食べない!!」」」
僕が訊くと、三人は青い顔で首をブンブン左右に振った。
「今度こそ天国に逝っちまうって!」
「まだ死にたくないわ! お爺ちゃんにも来るなって言われたし!」
「さ、さっきは死んでも後悔ないって言いましたけどっ……やっぱり嫌ですうううううぅっ!」
無事に地上に戻ってくることができた。
ダンジョンで入手した素材をギルドの窓口に持っていくと、
「コカトリスの肉がこんなに大量に!? 他にも下層の魔物の素材が……っ! あ、あなたたち、まだ駆け出し冒険者のはずよね!? すごい逸材だわ!」
「いや、おれたちはほとんど何にもしてないんで……」
「何もかも彼が一人でやったから……」
「あたしたちなんて、ただの足手まといでした……」
「えっ、どういうことよ!?」
コカトリス肉は需要が高く、しかもどれも完璧に解体されているということで、高値で買い取ってもらうことができた。
「うんうん、結構な金額になったね。配分はどうする? 普通に四分割?」
「「「全部ライルのもので」」」
「何で!?」