軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

第55話 もっと前から薄々そんな感じしてたけど

ニワトリスの上位種、コカトリス。

厄介な石化毒を持つ凶悪な魔物だ。

同系統の魔物とはいえ、逃げてばかりで戦闘力の低いニワトリスとは根本的に別の魔物だと考えた方がいいだろう。

「ちょっと待って!? コカトリスって、このダンジョンだと下層にしか出現しない魔物のはずよ! まさか、私たち下層まで転移させられたってこと!?」

「かかか、下層ですかっ!? そ、そんなのっ、駆け出しのあたしたちだけじゃ、生きて帰れないじゃないですか……っ!?」

予想よりずっと危険な場所に飛ばされたと知り、クーヴァとコレッタが絶叫する。

「そ、そんな……お、おれが、トラップを踏んじまったばかりに……」

常に自信満々なアルクですら、この事態に愕然としている。

「コケコケエエエッ!!」

コカトリスが奇声を上げながら躍りかかってきた。

もちろんその石化毒も危険だけれど、三メートル近い巨体から繰り出されるその鋭い嘴や爪の攻撃も当然ながら非常に脅威だ。

「があっ!?」

「アルク!?」

強烈な蹴りを咄嗟に剣でガードしたアルクだったけれど、あっさり吹き飛ばされて地面を転がる。

「こ、このっ!」

慌てて矢を放つクーヴァ。

それがコカトリスの胸に突き刺さったものの、まったく痛がる素振りすら見せない。

「分厚い羽毛に阻まれた!?」

「お、終わりですっ……やっぱり冒険者なんて危険な仕事、やるべきじゃなかったんですよおおおおお……っ!」

クーヴァの矢が通じないと知って、コレッタが頭を抱えて絶望する。

「コカトリスって……ニワトリスよりも遥かに美味しいらしいね。さすがにゴルドリスほどじゃないみたいだけど」

「そんな暢気なこと言ってる場合じゃないでしょっ!?」

「いや、食材にできるなら、もしかしたらこれが使えるかもって思ってさ」

僕はその生活魔法を発動した。

「〈食材切り〉」

ニワトリスを何体も狩る中、実は密かに考えていたのだ。

まだ生きている状態であっても〈食材切り〉が通じるんじゃないだろうか、と。

だって魚介類とかだったら、生きたまま調理して食べるなんて普通のことだし。

それは相手がニワトリスの上位種だったとしても変わらないはずだ。

〈食材切り〉を放った次の瞬間、コカトリスの巨体が一瞬でバラバラになった。

「……コケ?」

何が起こったのか分からないという顔をしたまま、コカトリスの首から上が地面に落ちる。

「「「はい?」」」

その声はアルクたち三人のものだ。

「うん、上手くいったね」

「い、い、い、今なにをしたんだ!?」

「何をしたって……〈食材切り〉を使っただけだよ。やっぱり生きたままでも、ちゃんと食材判定されるみたい。今更だけど、ニワトリスにもこれを使ってたら早かったね」

部位ごとに解体されたコカトリスはすぐに絶命する。

「あ、その袋みたいなのは気を付けてね。コカトリスの石化毒が入ってるやつだから」

「「「ひぇっ……」」」

呪息嚢と呼ばれているそれは、結構な値段で売れるらしい。

肉と一緒に〈小物収納〉で保管しておくとしよう。

「コカトリスが相手なら問題なく対処できることが分かったけど、さすがに他の魔物には使えないはず。できるだけ急いで上層に戻ろう」

というわけで、〈注意報〉と〈道案内〉、それから〈歩行補助〉を併用し、一気に上層を目指すことに。

「コケエエエッ!」

「あ、またコカトリス。〈食材切り〉」

「コケッ!?」

その道中で何度かコカトリスに遭遇したけれど、〈食材切り〉で瞬殺しながらどんどん進んだ。

「コケエエエッ!」

「わっ、いきなりブレスを使ってきたっ。でも多分、これでどうにかなるはず。〈空気清浄〉」

コカトリスが石化毒の息を吐き出してきたけれど、〈空気清浄〉で簡単に無効化することができた。

「な、なぁ……もしかして、おれ、とんでもないやつをパーティに加えちゃったんじゃないか……?」

「……私はもっと前から薄々そんな感じしてたけど」

「こ、これなら生きて地上に戻ることができるかもしれませんね……」

と、そこへ緑色の毛並みの熊の魔物が立ち塞がった。

「グルアアアアッ!!」

「ヤバい、コカトリス以外の魔物だ……っ!」

「くっ、どうにか私たちで倒さないとっ……」

「あたしたちが食材にされちゃいますううううっ!」

「〈食材切り〉」

「~~~~ッ!?」

「「「え」」」

緑色の熊が肉の塊と化した。

「おっ、ダメ元だったけど通じたね。美味しいかどうかはともかく、熊肉は割と食用にされてるし、いけるかもって」

「「「……」」」

さらに今度はイノシシの魔物が襲いかかってくる。

「ボアアアアア!!」

「〈食材切り〉」

「~~~~ッ!?」

「イノシシもジビエ料理で有名だからね」

「「「……」」」

続いて巨大な一つ目蝙蝠の魔物も飛びかかってきた。

「ギャアギャア!」

「蝙蝠の魔物……うーん、さすがにこいつは無理だよね。でも念のため〈食材切り〉」

蝙蝠は何事もなかったかのように噛みついてこようとする。

……よかった。

さすがに蝙蝠は難しいよね……と思いつつ、そういえばどこかの地域では、食用にされている蝙蝠もいると聞いたことがあるのを思い出す。

「ちょっともう一回やってみよう。〈食材切り〉」

「~~~~ッ!?」

「……うわっ、いけた!」

さっきはできなかったのに、今度は効果があった。

「なるほど。つまり食用にできるっていう、僕自身のイメージが大事なわけか。実際に食べるかどうかは別として」

この考えが正しければ、〈食材切り〉は色んな魔物に通じることになる。

「「「……」」」

「って、あれ? どうしたの? さっきからずっと黙ってるけど……」

アルク、クーヴァ、コレッタの三人がそろって叫んだ。

「「「いや汎用性高すぎいいいいいいいいいいいいっ!!!」」」

――〈視力向上〉を習得しました。