軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

第27話 誰かがやらねばならぬのだ

「えっ、もうゴミが片付いたの!? 焼却場からも遠くて、量も多いからかなり時間がかかると思っていたけど……」

「全部まとめて燃やしたので」

「燃やした!? ちょっ、それ大丈夫だったの!?」

街の清掃の依頼を終え、僕たちはレイラさんに報告していた。

目を見開いて心配する彼女に、ガッツさんが説明してくれる。

「心配は要らない! ゴミ山だけを奇麗に燃やしてくれたからな! まさかあんなに早く片付くとは思わなかった!」

「すごいわね……もしかしてだけど、実はライルくんって、逸材?」

「はは、そんなことないですよ」

さらにその翌日、僕は下水道へと繋がる街の水路沿いにやってきていた。

下水道の掃除。

それが今日の依頼なのだけれど、

「えっと、また会いましたね」

「おう! 今日もよろしく頼むぜ!」

三回連続で中年のEランク冒険者、ガッツさんと一緒だった。

「下水道掃除の依頼は、街の清掃よりも不人気で大変な仕事だ! だがこれをクリアできれば、お前さんはもう立派な冒険者の仲間入りだぜ!」

冒険者らしい仕事じゃ全然ないけどね。

水路の壁面にある入り口から、僕たちは下水道へと足を踏み入れた。

ここには各家庭のトイレの水がそのまま流れてきているため、当然、昨日のゴミ山に匹敵する、いや、それ以上の悪臭が鼻を突く。

「〈消臭〉」

すぐに〈消臭〉で臭いを消してやった。

「下水道の掃除って、ゴミとか汚物の詰まりをどうにかするってことですか?」

「それもあるが、もっと重要なことがある。っと、早速いたぞ!」

ガッツさんが下水道の奥を指さす。

通路の床で、直径三十センチくらいの何かが動いていた。

「あれは……もしかしてスライム?」

「そうだ! あいつは糞尿を喰らって成長し、繁殖する、ある意味で最強最悪のスライム……その名もシットスライムだ!」

まさに糞尿の色そのものといったそのスライムは、戦闘能力こそ通常のスライムと大差ない最弱だというけれど、身体から汚水を発射して攻撃してくるらしい。

確かにある意味で最強最悪だ。

「どんな腕のいい冒険者も、こいつと戦うのだけは嫌がる!」

「それはそうでしょうね」

「だが倒さなければどんどん増えて、やがて下水から這い出してくるようになる! かつて下水掃除を怠ったがために、街中シットスライムだらけになって滅びた街もあるそうだ!」

そんな滅び方、嫌すぎる。

「誰かがやらねばならぬのだ!」

そう威勢よく叫びながら、ガッツさんは手にした長めの棍棒でシットスライムに立ち向かっていく。

……少しだけかっこよく思えた。

「〈冷房〉」

でもその前に、僕は〈冷房〉を発動。

巻き起こった極寒の空気が、シットスライムを一瞬で凍らせた。

「な、何だ!?」

「生活魔法で凍らせてみました。これで汚水攻撃をされる心配はないと思います」

さらにこのまま放っておけば、氷が解けた頃には勝手に死んでいるはずだ。

それからもシットスライムに遭遇するたび、僕は〈冷房〉で凍らせていった。

「すごいぜ……いつもなら汚水を浴びまくっているというのに、まだ汚水が発射されてすらいないなんて!」

「いつも浴びてるんだ……」

「酷いときは頭から汚水を浴びることもあるぞ!」

うーん、それは想像しただけで吐きそうになる……。

「それにしても、かなりの数ですね」

何体ものシットスライムが下水の中で蠢き、さらに壁や通路にまで溢れかえっていた。

「おかしいぞ……久しぶりの下水道掃除だから、それなりに増えているとは思っていたが……さすがにこれは多すぎる。ここに来るまでも、すでにいつもの倍は倒しているはずだ」

どうやら普段よりもシットスライムの繁殖が酷いらしい。

まぁどんなに数が増えようと、魔法で一撃なので関係ないのだけれど。

下水道の奥から、さらにうじゃうじゃと湧き出してくるシットスライム。

「さ、さすがに多すぎる! どうなっているんだ!?」

「とにかく倒しまくるしかないですね」

あり得ないと叫ぶガッツさんに対し、僕は気にせずシットスライムを一掃していく。

しかし奥に進めば進むほど、下水道の汚さが際立つようになってきた。

「シットスライムは定期的に片づけているかもしれないけど、ちゃんとした掃除はしてなさそうですね。どんどん汚れが溜まってきて、大繁殖する環境が整ってしまったのかも」

「そういや、最近は雨が少なかったな……それも影響しているのかもしれない。本来は雨である程度は汚れが流れる仕組みになっているんだ」

このまま放置しておくと、やがて先ほどガッツさんが言ったように街中にまで溢れ出してくるかもしれない。

と、そのときだ。

「大きいのがいますね」

「なっ!? あ、あんな巨大なシットスライム、見たことないぞ!?」

通路の向こうから姿を現したのは、全長二メートルはあろうかという、巨大なシットスライムだった。

「まさか、ビッグシットスライムなのか!?」

「ビッグシットスライム?」

「シットスライムの上位種だっ! 通常のシットスライムとは一線を画する繁殖力を持つ! だがそれだけではないっ……」

そのシットスライムが身体を大きく撓めたかと思うと、噴水のように汚水を射出してきた。

「汚水の雨を降らせてくるんだあああああっ!」

「汚っ……〈そよ風〉!」

風を起こして汚水の雨を押し返してやる。

「た、助かった……ビッグシットスライムの汚水は、シットスライムより遥かに汚い……一説には凶悪な病原菌が含まれているとも言われてるんだ……」

「……それは最悪ですね」