軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

第26話 手が回らないのだ

荷馬車にあった盗品らしき品々を並べていく。

「多すぎるわよ!? ライルくん、それ本当に〈小物収納〉!? 実はアイテムボックスを隠し持ってるってオチじゃないわよね!?」

「はは、違いますよ。アイテムボックスなんて希少なもの、見習い冒険者の僕が持ってるわけないです」

驚愕するレイラさんの疑いを、僕は苦笑気味に否定する。

「やっぱ変だよな! おれも〈小物収納〉にしては、随分とたくさん入っていくなと思ったんだ!」

何やら遅れて訴えてくるガッツさんを余所に、僕はあることに気づいた。

「あ、これ、よく見ると割と壊れているものがありますね。元から壊れていたらわざわざ盗んだりしないでしょうし……もしかしたら荷馬車とガッツさんがぶつかったときに壊れちゃったのかも……」

〈重さ軽減〉で軽くなっていたとはいえ、荷馬車ごと宙を舞ったくらいだからね。

「直しておきましょう」

「直す……?」

僕は〈修繕〉を使い、壊れたものを元通りにしていく。

「ちょっと待って? 荷馬車とガッツさんがぶつかった……? それ、大丈夫だったの?」

「……おれ自身も理解できないんだが、見ての通りピンピンしている。なんせ荷馬車の方が吹き飛んだからな」

「どういうこと!?」

二人がそんなやり取りをしている間に、すべての品を修復することができた。

「本当に直ってる!? どうなってるの!?」

「これも生活魔法ですよ。〈修繕〉っていう」

「り、理解できないことだらけだけど……とりあえずこの盗品については、騎士団と連携して持ち主を探していくことにするわ」

「はい、お願いします」

というわけで、パトロールの依頼達成だ。

思ったより大変だったね。

こういうのをいくつもこなしていって、それでようやくEランクに昇格できるというのだから、なかなか多難な道のりだろう。

「でも負けていられないね。なんたって、僕は世界一のサポート要員を目指しているんだから」

そして翌日、僕は新たに街の清掃という依頼を受けていた。

「二日連続で仕事を請け負うなんて気合が入ってるな! しかもこの清掃は、若いやつらがなかなかやりたがらない不人気な依頼だぜ!」

またしてもガッツさんと一緒だった。

「おれは週に二回はこの仕事をしているから、分からないことがあれば何でも聞いてくれ!」

週に三回がパトロールで、週に二回が街の清掃らしい。

「とはいえ、清掃の仕事はごくごく単純! ゴミを片っ端から焼却場に持っていく! それだけだ!」

「それだけでいいんですね? 落書きを消したり、糞尿を水で流したりしなくても?」

「むっ……相変わらず鋭いな。確かにそこまでできれば素晴らしい! だが生憎と、ゴミを片づけるだけで精一杯でな……とてもではないが、手が回らないのだ!」

「なるほど、確かにあちこちにゴミが放置されていますしね」

酷いのはやっぱり治安の悪い区域だ。

場所によってはゴミの回収自体がないらしく、道路の端がゴミ捨て場のようになっている。

ただ、そのまま放置していてはネズミや害虫などが繁殖し、感染症の原因になりかねない。

それで底辺冒険者や見習いにこうした依頼が回ってくるのだろう。

「今日はここのゴミを片づけるぞ!」

やがて現場に辿り着くと、そこには道のど真ん中に積み上げられたゴミの山があった。

ゴミ処理場はここからそれなりの距離がある。

こんな大量のゴミをそこまで運ぶだけでも重労働だけれど、それ以上にこちらの意欲を萎えさせる大きな要因があった。

鼻が曲がりそうなほど強烈な悪臭だ。

腐った生ゴミや糞尿まで放置されているのだから当然だろう。

「はっはっはっ! なかなかハードそうな仕事だろう! だが冒険者として上を目指すなら越えていかなければならない壁だ!」

冒険者として上を目指すなら、普通に魔物を倒した方がいいと思う。

「コツは〝無〟になること! 無心になれば、ゴミの汚さも臭いも気にならなくなる!」

ガッツさんはそう教えてくれるけれど、簡単にそんな境地に達することは難しそうなので〈消臭〉を使ってみた。

「あれ? 何だ? 急に臭わなくなったような……?」

ふう。

これでまともに呼吸ができるね。

「あとはどうやって処理するかだけど……もしかして〈小物収納〉を使えば簡単かも?」

「昨日のあれか! 確かにそいつを使えば、めちゃくちゃ効率よくゴミを運べるかもしれないな!」

「あるいは……このままここで燃やしちゃうとか」

「え?」

ゴオオオオオオオオオオオオッ!!

ゴミ山が燃えていた。

猛烈な炎が天高く立ち上り、周囲を赤々と照らしている。

もちろん僕が〈火起こし〉を使って燃やしたのだ。

処理場でも焼いて処理するわけで、それならこの場で焼いても一緒だしね。

周辺の住民や浮浪者が慌てて逃げていく中、ガッツさんが頭を抱えて絶叫する。

「うおおおおおおおおおおおいっ!? 周りの家屋はほとんどが木造なんだぞ!? 辺り一帯に延焼したらどうするんだ!?」

「大丈夫ですよ。ほら、全然燃え移っていってないでしょ?」

「っ……言われてみれば」

僕はゴミ山の周囲の家屋に、〈防火〉を使ったのだ。

名称通り火に対する耐性を付ける生活魔法で、これが延焼を防いでくれていた。

「いざとなったら〈水生成〉もあるしね」

そうしてゴミ山が跡形もなく燃え尽きるまで、三十分もかからなかった。

「こ、これだけのゴミ山が……たった三十分で片付いてしまった……一日がかりで取り組むつもりだったのに……」