軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

第28話 それはそれで事実ではあるけどな

「〈冷房〉」

極寒の空気がビッグシットスライムの身体を氷結させていく。

ただ、大きいのでしっかり身体の奥まで凍ってくれたか、なかなか判断が付かない。

――〈消音〉を習得しました。

あっ、倒せたみたいだ。

ビッグシットスライムを討伐した経験値で、生活魔法を覚えたのだろう。

「汚水攻撃を除けば、それほど強くないとはいえ、ビッグシットスライムをこうも簡単に討伐してしまうとは……」

それから下水道中のシットスライムを倒しまくり、やがて目に見える範囲には一体もいなくなった。

「でも汚れがこのままだと、またすぐに繁殖してしまいますよね?」

「そうだな……どこにもいないように見えても、やつらは必ずどこかに潜んでいやがる。なにせ小さいやつは直径一センチしかないなんて場合もあるからな」

それがゴミや汚物を食べて成長し、大きくなっていくのだという。

「じゃあ、下水道ごと綺麗にしてしまいましょう」

「言うのは簡単だがよ……」

「まぁ見ててください。まずは一気に大量の水を流して、ゴミとか汚物の詰まりをざっくり取り除きますね」

この下水道は都市の南にある川に繋がっている。

そのため都市の北から、南の方向へと水が流れるようにできていた。

「〈水生成〉!」

なので街の最北端から、下水道内に大量の水を流入させてやる。

「な、なんて水量だ!? 生活魔法の〈水生成〉ってレベルじゃないだろう!?」

驚くガッツさんをしり目に、何か所かでそれを行って、再び下水道内へ。

「だいぶマシにはなりましたね」

「マジか……こんなやり方で、下水道を奇麗にしちまうとは……」

「まだ汚れが酷いところは〈汚れ落とし〉で取り除いていきます」

さらに長く利用されてきて劣化が進んでいる箇所は、〈修繕〉で元通りにしておいた。

そうして下水道内を巡ること、数時間。

やがて建造した直後なのではないかと錯覚するほど、綺麗になった下水道がそこにはあった。

「すご過ぎるぜ……これで、下水道掃除の仕事は当分ないだろうな」

「あっ」

ガッツさんの言葉で、僕はハッとする。

「ごめんなさい……仕事を奪っちゃったかも……?」

「いやいや、今のはそういう意味で言ったんじゃない! むしろありがたい限りだ! 誰も受けようとしない仕事だが、街のためには必要なことだと思って受けてきただけだからな!」

「そうなんですか? てっきり、そういう仕事でしか生計を立てられないのかと……」

「ぐはっ!? そ、それはそれで事実ではあるけどな!?」

やっぱりガッツさんは、この手の街中で完結する仕事ばかり受けているようだ。

街の外に出て魔物と戦うには弱すぎるのだろう。

ただ、決してそれだけではない。

街中で完結する仕事なら、もう少し楽なものがいくらでもある。

なのにこんなハードな仕事ばかり引き受けているのは、単純にこの街のことが好きで、少しでも街を良くしたいと思っているからだろう。

「ガッツさんのその心意気、まさにサポート要員に不可欠なものです!」

「お、おう?」

「感動しました! 僕もガッツさんと同じで、魔物をガンガン倒して活躍できるような冒険者になるのは難しいですけど、パーティを支えていけるサポート要員として頑張っていきたいと思っているんです!」

「……よく分からないが、お前さんはどう考えてもサポート要員なんてタマじゃないだろ?」

「はは、何を言ってるんですか。僕なんてガッツさんと大差ないですよ」

「実はおれのこと馬鹿にしてないか?」

その後も僕は様々な依頼を受けては解決していった。

もちろんどの依頼でも、生活魔法が大いに役立った。

迷い犬探しでは、〈失せ物探し〉が活躍した。

これは名前の通り失ったものを探し出せる魔法で、使えばその方向が感覚的に分かったり、失くした物が向こうからこっちに近づいてきてくれたりする。

普通は自分の所有物にしか使えないのだけど、魔力量を増やすと他の人が探している物にも有効だということが分かったのだ。

もう何か月も見つかっていなかった飼い犬が、向こうから近づいてきてくれ、あっさり依頼を達成することができた。

お尋ね者探しの依頼でも、〈失せ物探し〉は効力を発揮した。

さすがに「人」には使えないかなと思いつつ、ダメ元で使ってみたところ、連続放火魔として指名手配されていた人物と、街ですれ違ったのである。

新しく覚えたばかりの〈消音〉を使い、後を付けて隠れ家を特定し、ギルドに報告したところ、数日後に騎士団が犯人を捕らえたと教えてもらった。

さらに土木工事を手伝う依頼では、小柄な僕を見て現場の人たちから「誰だ! こんな非力そうなやつを寄こしたのは!」と激怒されたけれど、〈重さ軽減〉が本領を発揮。

重たい資材を軽くしてあげたお陰で作業は大いに捗り、みんなからの評価が一変した。

蜂の巣の駆除は〈虫よけ〉を使うだけで終わったし、引っ越しの手伝いは〈重さ軽減〉と〈小物収納〉の合わせ技で簡単に達成できた。

やっぱり生活魔法って便利だなぁ。

「すごいわ、ライルくん! まさかこの短期間の間に、これだけの依頼を達成するなんて! しかもどれも依頼主から満点評価よ!」

レイラさんが絶賛してくれる。

特に下水道を奇麗にしたことは、依頼主にこれ以上なく喜ばれたそうだ。

依頼主はこの領地の役人で、冒険者ギルドとしても鼻高々だったらしい。

「ライル、もうおれが教えることは何もなさそうだ! お前さんはこれから冒険者として十分に活躍していけるだろう!」

と、ガッツさんも太鼓判を教えてくれた。

そもそも何か教わったことがあったかなと思ったけど、それは言わないことにした。

「そんなライルくんの頑張りが評価されて、このたびめでたくEランクへの昇格が決定したわ!」

「え、ほんとですか!?」