軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

97.気になる木と力の差

学校を出て、街の中を探索する。

とはいえメンバーが増えても、やる事は変わらない。

レベル上げと物資の調達だ。

物資の方は食料もそうだが、出来れば対モンスター用の重機や廃車が欲しい。

(昨日のダーク・ウルフ戦でかなりの量を消費しちまったからなぁ……)

普通のモンスター相手ならば、また回収して再利用できるが、あのダーク・ウルフの『闇』に飲み込まれれば二度と回収できない。

おかげで質量攻撃の弾がカツカツだ。

まさにアイテムボックス攻撃の天敵と言っていい。

嗅覚による隠密の無効化といい、つくづく相性の悪い相手だ。

一応、イチノセさん達が休んでる間に、学校の瓦礫や、周辺にある重そうな物なんかは回収しておいたが、それだけでは心もとない。数は力だ。

万が一、モンスターの大軍、群れに出くわした時の為にも十分な備えが欲しい。

なのでこうして街を歩いている間も、六花ちゃんの眼を盗んでは廃車や自販機、折れた電柱やブロック片なんかをアイテムボックスへ収納してゆく。

「……おや?」

そんな感じで移動を続ける中、俺は不意にあるモノに目が行った。

それは家屋を突き破って生えている『巨木』だ。

世界がおかしくなってから、そこかしこに生えている謎の樹木。

「なんか、この『木』、また大きくなってませんか……?」

「……そう言えば、そうですね」

俺の言葉にイチノセさんが頷く。

もともと数十メートルもある巨大な木だったが、その幹がより太くなっている気がする。

(モンスターばかりに気を取られてあまり目を向けていなかったが、この木も大概謎の存在だよな……)

モンスターが現れたその日に、同じように急に出現していたこの木。

街の至る所に生え、その存在を誇張している。

この木は一体何なのか?

「……でも不思議ですよね」

「何がですか?」

イチノセさんは木の幹をなぞりながら、

「いえ、だってこんな大きくて異常な植物、本当なら気になって仕方がないはずなのに……なんというか、こうして注意深く見つめないと、なんか気にも止めなくなっちゃうというか……」

「あー、確かにそうかも」

イチノセさんの言葉に六花ちゃんも頷く。

俺も同意見だ。

今まで気にも止めていなかった。

道を塞がれたり、邪魔だなと思う程度で、それ以上深く考えずにいた。

でも、よく考えればそれっておかしいよな……。

モンスターも異常だが、この木だって異常な存在なのだ。

モンスターについてはさんざん考えているのに、どうしてこの木の事になると『別にどうでもいいかな』と思ってしまうのだろう?

そう、まるで『そう思わされている』ような―――。

(……もしかして)

この木も何かスキルを持っているとか?

自分から意識を逸らさせる―――例えばイチノセさんの『認識阻害』のような。

……可能性はある。

野生動物や虫だってレベルやスキルを持っているのだ。

植物にだけそれが当てはまらない理由はない。

ましてや、この木はモンスターと共に現れた存在だ。

常識に当てはめる方がおかしい。

まてよ?

てことは、この『木』を斬り倒せば、経験値が手に入るとか?

「……」

一瞬、試してみたい衝動に駆られるが、すぐに思い直した。

こんなでかい木、斬り倒すのは相当な手間だ。

チェーンソーでも使って時間をかければいけるかもしれないが、音がうるさくてモンスターを引き寄せるかもしれないし、そこまで時間をかけるなら普通に『索敵』で獲物を探した方が余程効率的である。

それに―――この木を切ろうと思った瞬間、『嫌な感じ』がしたのだ。

それも『かなりやばいレベル』の。

もしかしたら、迎撃用のスキルでも持っているのかもしれない。

こちらから仕掛けない限りは何もしないが、自分に危害を加えられた瞬間発動するタイプのやつなら、手を出さない方が賢明だろう。

「―――どーする?試しにちょっと切ってみる?」

と、そこまで考えて思考が現実に戻る。

六花ちゃんが鉈を手に、木に近づこうとしていた。

俺は慌てて止める。

「いえ、止めておきましょう。多少斬ったところで、どうにかなるとは思えません。

それよりも『索敵』に反応がありました。そっちへ向かいましょう」

「……モンスターですか?」

「ええ、おそらくはゴブリンです。数は四匹。内一匹はホブ・ゴブリンの気配がします」

そう言うと二人の表情が変わり警戒態勢に入る。

俺たちは『索敵』の反応があった方へと向かう。

そして、『意識』が木からモンスターへと移った、その瞬間―――

「……ん?あれ?」

「どうしました?」

「いえ、なにか違和感が……」

「違和感?」

なんだろうか……?

なにか考え事をしていた気がするんだけど、何だったっけ?

思い出せない。

『何』について考えてたんだっけか?

「……いえ、なんでもありません」

まあ忘れるなら、気にする程の事でもないのだろう。

背後で木々がざわめく。

その音を聞きながら、俺たちはその場を後にするのであった。

ゴブリン三匹と、ホブ・ゴブリン一匹を発見する。

壁に寄りかかり、のんきに欠伸をしていた。

「狙い目ですね」

「はい」

「うっし、頑張るよー」

イチノセさんが銃を、六花ちゃんが鉈を構える。

「イチノセさんは援護射撃、相坂さんは私の後について来てください」

「了解です」

「りょーかい」

続いてモモとアカの方を見る。

「わんっ」

「……(ふるふる)」

二匹とも気合十分のようだ。

「では、行きますよ!」

アカが武器に擬態し、影にモモが潜むのと同時に、俺はダッシュする。

同時に、イチノセさんが引き金を引く。

発砲音と共に、一体のゴブリンの頭が弾けた。

「ギギャ!?」「ギィィィイイイイイイイッ!」

「ギギャアア!ギャアギャア!」

ゴブリン達は突然仲間がやられたことに慌てふためき、動揺している。

その隙に、俺とモモの『影』が、瞬時にゴブリンたちに巻き付き、その身体を拘束する。

強化された『操影』の拘束力は以前よりも遥かに増している。

だから、より力を込めれば―――

「ギギッ―――ギチャッ!?」

ゴブリン達は『影』の拘束に耐え切れず、そのまま握り潰された。

≪経験値を獲得しました≫

よし。

これで残るはホブ・ゴブリン一体。

握り潰されないようなんとか耐えている様だが、それで精一杯のようだ。

踏む込み、一気に接近。

武器に擬態したアカで、その首を斬り落とす。

重機を使えば一瞬だが、六花ちゃんの目もあるし、ここは普通に倒すことにした。

それに『剣術』や『急所突き』の熟練度も、少しでも上げておきたい。

≪経験値を獲得しました≫

魔石が転がり、戦闘終了を告げる天の声が響く。

僅か数秒で戦闘は終わった。

「よし、終わったな。お疲れ、モモ」

「わんっ」

ほめてーと、モモがすり寄って来たので、うんと褒めてやる。

うりうりー、ここがいいのか?ん?ほれほれー。

「わふ、わふぅーん……」

モモも目を細めて気持ちよさそうに身を任せている。

うはぁ可愛い。癒されるわー。

「ク、クドウさん!私も!私もしたいです!」

イチノセさんもモモをモフりたいようだ。

モモは可愛いからね。仕方ないね。

しょうがない、ここは譲ってあげよう。

これが社会人の度量ってやつさ。

「ふわっ、ふわぁぁ……」

「わふぅー……」

イチノセさんはモモを撫でて幸せ。

モモもその撫で心地に満足したのか幸せ。

みんな幸せ。うん、良い事だ。

「あれ?相坂さん、どうかしましたか?」

後ろを見ると、六花ちゃんが呆然とした表情でこちらを見ていた。

どうしたのだろう?

彼女もモモを撫でたいのだろうか?

いや、なんかそんな感じじゃないな。

「……相坂さん?」

「……えっ?あ、いや、なんでもない!なんでもないよ、うん」

「……そうですか?」

ならいいけど。

ちらりと、隣に居るイチノセさんを見れば、彼女も首を傾げていた。

ただモフモフする手は止まってない。

「えっと、それじゃあ、次に行きましょうか」

「………………そうですね」

イチノセさんは名残惜しそうに、本当に名残惜しそうにモモから手を離す。

モモは可愛いからね。仕方ないね。

モモも「くぅーん」と名残惜しそうに喉を鳴らすが、分かってくれ。

今はレベル上げが大事なんだ。

さて、次の獲物を探すとしよう。

俺たちは再び移動を開始した。

自分の前を歩くその後ろ姿を眺めながら六花は思う。

(このおにーさん、すっげー……)

先程の光景が、脳裏に焼き付いて離れない。

そりゃそうだ。

だって自分が武器を構え、さあ一歩を踏み出そうとした瞬間、戦闘はもう終わっていたのだ。

(あのおにーさんの動き、全然見えなかったんだけど……)

速過ぎるどころの話ではない。

気付けば、ゴブリン達は『影』によって体を引き千切られ、ホブ・ゴブリンの頭が宙を舞っていた。

教えて貰ったスキルから、強いだろうなーとは思っていたがこれ程とは思わなかった。

(あのおにーさん、レベル18って言ってたよね?私と6つしか違わないのに、なんでこんなに差があるわけ……?)

六花はこれでも自分は強い方だと思っていた。

仲間内では一番レベルが高かったし、ステータスだって相当上がっている。

力と敏捷に至っては40を超えているのだ。

ゾンビやゴブリンならもう相手にならないし、西野の支援が無くとも、たとえオークやシャドウ・ウルフ相手でも一人で十分戦える力を持っている―――そう、思っていた。

でも、やはり上には上がいるのだ。

(もしかして、私とんでもない人の仲間になったのかな……)

そう思わずにはいられなかった。

それと同時に、そんな凄い人物やようやく再会した親友に隠し事をしている自分が酷く矮小な存在に思えてしまう。

(やっぱり素直に話すべきなのかな……。いや、でも話してもなんにもならないじゃんか)

ではどうすればいいのか?

悩む六花。だが、答えは出ない。

元々考えるのが苦手な彼女だ。

すぐに彼女の脳はオーバーヒートし、ぷしゅーっと湯気が出てくる。

うーんうーんと、悩む彼女の脳内に、天の声が響いた。

≪―――メールを受信しました≫

「……ふぇ?」