軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

話し合い

命懸けで魔獣と戦った1組の二人にも説明するべきだろう。

そう考えたアルマークはウェンディ、モーゲンと別れたあとでアインの部屋を訪ね、ことの次第を説明した。

アインは時折相槌を打ちながら、興味深げに話に聞き入り、蛇の呪いの下りでは、難しい顔でしばし考え込んだ。

アルマークの話を聞き終えると、アインは最後に、

「光栄だな。僕は伝説の鍛冶屋と冒険をともにしたわけだ」

と言って笑った。

フィッケにも説明に行くつもりだ、というアルマークに、アインは顔をしかめて手を振る。

「要らない要らない。君はバカか。フィッケになんか話したら明日にはブレンズを通して初等部全員の耳に入っているぞ」

「そうかな」

「そうとも。フィッケの保護者として僕が代わりに聞いたから、もうそれでいい」

アインは面倒そうに言った後で、にやりと笑って付け加えた。

「しかしどうやら、君にくっついていれば退屈しなさそうなのは確かだ。また僕の頭脳が必要なときはいつでも声をかけてくれ」

秋が深まってきた。

学院では武術大会が終わると、次は魔術祭の準備が始まる。

初等部の学生たちはクラスごとに出し物をするのだが、三年生の出し物は、演劇と決まっている。

その日の授業が終わり、先生が帰った後で、クラス委員のウォリスが前に立った。

「さて、まだだいぶ先の話ではあるけれど」

ウォリスはそう前置きして、クラスを見回す。

「魔術祭に向けて、僕らのやる劇の題目を決めなければならない」

「そうか、今年は劇か」

ネルソンが声をあげる。

「かっこいいのがやりてえな」

「魔術祭って何?」

アルマークは隣のウェンディにそっと囁く。

「ああ、アルマークは初めてだものね」

ウェンディは微笑んで、そっと説明してくれる。

「魔術祭は、冬の一大行事だよ。武術大会と並んで学院の二大行事なの。クラスごとに魔法を交えたいろんな出し物をするの」

「へえ。さっき、今年は劇ってネルソンが言ってたけど」

「うん。三年生は、劇。去年はダンスをやったな。途中で少し魔法を使ったりしながら」

ウェンディがそう言って、その時の振り付けなのだろう、右手を伸ばしてくるくると回す。

「また王様が見に来るのかい」

「来ないわよ。一般の人だけ」

ウェンディは首を振って、苦笑いする。

「まだ学生の使う魔法だから。昔、暴走して危なかったことがあるんだって。それから偉い人は来なくなったみたい」

「ああ、なるほど」

アルマークは頷く。

未熟な魔法が飛び交う魔術祭に来るくらいなら、武術大会の方がよほど安全だということなのだろう。

アルマークとウェンディがそんな話をしている間にも、クラスの話し合いはどんどんと進んでいく。

劇の題材について、ネルソンが真っ先に、かっこいい騎士物語がやりたいと提案する。

次にノリシュが、悲恋物語がいい、と提案し、女子数人が頷く。

ウォリスに意見を求められたレイドーが、じゃあ大家族ものでもやるかい、と言い、ネルソンが、そりゃお前の実家の話だろ、と突っ込む。

レイラは相変わらず我関せずの態度で窓の外を見ている。

バイヤーが、歴史上の事件や人物を題材にしたらどうだろう、と提案し、ピルマンがそれに賛同する。

モーゲンの提案した森の味覚採集物語は、残念ながら誰の賛同も得られなかった。

「トルクはどうだい」

ウォリスに話を振られたトルクは、唸りながら頭を掻く。

「俺は別に騎士物語でもなんでもいいけどよ。お前らみんな大事なことを忘れてねえか」

トルクはそう言って、クラスメイトの顔を見回す。

「台本は誰が書くんだよ」

トルクの言葉に、騒がしかったクラスがぴたりと静かになる。

「劇ってのは台本がなきゃ始まらねえんだからよ。台本を書けるやつの書きたいものにすりゃいいんじゃねえのか。ちなみに俺は書けねえからな」

「なるほど。一理ある」

ウォリスはにこやかに頷く。

「トルクの意見ももっともだ。この中で、台本が書ける者。もしくは台本に挑戦してみたいという者はいるかい」

みんなが顔を見合わせる。

さっきまで活発に発言していたネルソンやノリシュも、小さく首を振ってうつむいたり他の学生の顔を見たりしている。

ウォリスは、そんなみんなの顔をぐるりと見回してから、にこりと笑った。

「なるほど。分かったよ」

それから、ネルソンの隣の席の女子を指差す。

「キュリメ」

「えっ」

突然指名されて、キュリメが真っ赤な顔で固まる。

ただでさえ大人しい女子だ。それが突然みんなの注目を浴びて、すっかり狼狽している。

「わ、私?」

「うん。君だ」

「ウォリス、何言ってるんだよ。キュリメは手なんか挙げてねえぞ」

隣の席のネルソンがそう声をあげる。

「なぁ、キュリメ」

「う、うん」

キュリメは真っ赤な顔で、やっとそれだけ答えてうつむく。

ウォリスはそんなキュリメの反応に構わず、笑顔で言った。

「キュリメ、君の悩む顔を見分けるのはそう難しいことじゃない」

その言葉に、キュリメの肩がびくりと震える。

「君の性格では、手を挙げるのがためらわれたのだろうけど」

ウォリスはあくまで明るい声で続ける。

「僕には分かったよ。やってみたいんだね、キュリメ」

ウォリスの言葉にネルソンがあんぐりと口を開け、その隣でキュリメがおずおずと顔を上げる。

「僕は、君ならできると思うよ。もちろん必要なことは他のみんなにも手伝ってもらうから、心配はいらない」

ウォリスは明るい口調のままで、励ますように言う。

「どうだい? キュリメ」

「……みんなが私でいいのなら」

キュリメは、今にも消え入りそうな小さな声で、そう答えた。

「ありがとう」

ウォリスは微笑んで頷く。

「他に意見のある者は?」

ウォリスがクラスを見回すが、もちろん誰も異議を唱える者はいない。

「よし。決まりだ。僕らの劇の台本はキュリメに書いてもらおう」