軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

球体転車で空港へ

高すぎる天井……。

大理石のようなツルツルの床。

「ねぇ幼女ちゃん……キミはどー思う?」

「……どうって……そういうモノ……としか」

私と幼女ちゃんはその広い空間で、眩しそうに明るい天井を見上げながら呟いた。

「ふむ、じゃあこれは人工ダンジョンのテンプレートかね?」

「……わからぬ」

「だよねぇ」

私達は今、人工ダンジョンの『ショッピングモール』にいる。

まぁ、いつものことだろって思う?

そうだね。私達はいつも牢屋を抜け出して、商品の補充とかでショッピングモールまで行ってたもんね。

じゃあなんで二人して、無人のショッピングモールで困惑していると思う?

それはね……。

「ホント、似たような作りしてんねぇ。マップがなけりゃ、どっちか分からんよ」

ここがキツネ顔のダンジョンじゃなくて、『高飛車女』側のダンジョンだからだよ……。

ほら、この間さぁ……幼女ちゃんが、こっちのマップをコピーしてたの覚えてる? そうそう、若造兄ちゃんとケンカしてた、メガネの姉ちゃんからコピーしたやつ。

アレで高飛車女のダンジョンのマップを手に入れたから、放ったらかしにしてたコッチの探索やってみようぜってなったのよ。

んでスタッフルームまで行ってみて出た感想がコレ。

正直、面白みがねぇ!!

やっぱさ、新しい所来たんだから目新しい景色見たいワケよ!

それが何? これじゃあどっちに行っても変わらんやん。

「ん〜、マジで来た意味なかったね」

「……」

誰もいないショッピングモールのロビーをうろつく。

あっちと一緒ならここはスタッフルームだろうね。一般の冒険者が入ってこれないから 人気(ひとけ) はない。

じゃあ職員はいるのって聞かれると、それも見当たらない。理由は分かるよ。

職員が何千人いようが、広大な地域に広がる人工ダンジョンでは、職員に出会う確率も低いんだよ。

広いんだよ……人工ダンジョンの縄張りってのはね。無駄な施設が多いと言ってもいい。

おぼろげに人工ダンジョンの事が分かってきたよ。

人工ダンジョンってのは土地に広がる施設だ。

そしてその土地のあちこちに、このショッピングモールのようなスタッフルームが点在してんのね。

「ゲームでいうとノンフィールド型ってところかな?」

そりゃそうだ。広大な土地の地下全部に通路や空間が広がってるワケがない。それを繋いでいるのが球体転車。

だからスタッフルームであるショッピングモールで職員に出会わないってのは油断し過ぎだね。

確率は低いだろうけど。

いつだったかマミィ〜が言ってた気がする。

『地脈のエネルギーを得るのが人工ダンジョンの基本。人を呼び込むのは心臓の鼓動で血を汲み上げるのに近い……』と。

おそらく、各所にある心臓部を使って地脈とやらからエネルギーを生成しているのが人工ダンジョンの正体ってところかな?

「どーする? 帰る? あっちと一緒だよこれ」

「……う〜ん」

思ったよりガッカリの結果に微妙な顔をしながらウロウロしてたら、ショッピングモール内にピンポーンと音が響く。

え、なに? 館内放送でも始まりそうなんだけど。

あれか? 迷子のご案内とかしちゃう?

私達のことじゃねぇだろうな……。

ショッピングモールの壁の巨大モニターが映像を映し出す。

【職員の皆様おはようございます。 長(オサ) のヘイティー ベアリングですわ】

モニターにデカデカと映し出される高飛車女は、自信のありそうな顔で優雅に、そして事務的に語りだす。

おっと館内放送は間違ってなかったみたいだね。

職員に向けた連絡事項らしい。

【先日お知らせした通り、近々我がベアリングダンジョンと、お隣のウルペースダンジョンに『総ダン長』が視察に参りますわ。一般職員の皆様は、気負わず、いつも通りの仕事を心掛けて下さいまし】

高飛車女は、事務的に資料をモニターに浮かべる。

【また、通達のあった部署ではいつもと違う業務もあるでしょうが、緊張することなく励んでくださいな。えーっと……そうそう、総ダン長を迎えるにあたって、ウルペースダンジョンと共同で、地上に『空港』を建設いたしました。許可のない一般職員は間違って侵入しないようお気をつけ下さいね】

そう言って館内放映は終わりを告げた。

ふむ……。

「ねぇ幼女ちゃん。今の放送で言ってた空港って場所分かる?」

「……分かる。いく?」

ん〜、どうしようかねぇ……。

私達小悪魔を憎んでるっぽい『総ダン長』とやらを見る機会ではあるんだよね。

「迷うな〜……」

危ないか? いや、見つからなければ問題はないか……。

「どう思う?」

「……ん〜、見るだけならいいんじゃない? 上手くいけば情報も手に入る」

そうね。まぁ私達を恨んでるってのは納得いかないけど……隠れて見るなら問題ねぇか。危険人物の情報はいくらあっても構わないし。

「んじゃ、ツラでも拝むかね」

「……わかった。じゃあ今から空港までの行き道を考える」

「にゅ? 幼女ちゃんが牢屋から直通で穴を掘ればいいんじゃない?」

私の疑問に、幼女ちゃんが半眼になってため息をつく。ちったぁ頭使えよって顔すんのやめてくんね?

「……たりねぇ」

てめぇそれは脳みそのことかッ!

「……どこでも穴が掘れるワケじゃない。ヒビがある所だけ。それに……さすがにトロッコ使っても遠すぎる」

「んじゃどーやって行くのよ」

「……ここの職員と同じ事すればいい」

そう言って幼女ちゃんはショッピングモールの一角を指差した。

な〜るほど、『球体転車』を利用するワケか。

そりゃそうだ。職員が間違って入る可能性があるんなら球体転車も空港に通じてるはず。

「……とりあえず、牢屋と球体転車ホームを繋いで、そこから球体転車にのりこむ」

言うか早いか……幼女ちゃんは牢屋からホームをサクッと開通。仕事早いね!

準備はオッケーかな?

――――――――――――――――――――――

はい、総ダン長視察の日がやって参りました。

「幼女ちゃん、忘れ物なぁ〜い?」

「……ねぇよ。なにもってくんだよ……」

牢屋に穴を開けて、トロッコでゴー!

到着しましたのは、球体転車のホーム。

巨大な鉄製の玉がボーリングの玉のように並んでいますね!

「んでぇ? これ動くの?」

「……動かす」

幼女ちゃんが球体に触れると、入り口が開く。

ほ〜、思ったより広いね。

座席が左右に設置してある。列車のボックス席ってよりは、観覧車の内装ってところかな? 外は見えないけど。

私は椅子に座って座席をポンポン叩く。硬いかと思ったらなかなかの手触り……牢屋に欲しい椅子だね。

幼女ちゃんは壁に触れてモニターを操作していたが『……操作わからん。めんどくせぇ』とか言い始めて、天然コアを取り出しムリやり発射させた……。

え、大丈夫それ? マニュアル発進とか怖いんだけど……。

ゴゥウウン……とボーリング場のような音が鳴り響く。

「ん? 動いてるこれ」

「……うごいてるよ」

幼女ちゃんが壁に線路マップみたいなのを映すと、確かに私達の乗る点が、凄い勢いで進んでいるのが分かった。

ふむ、こんなスピードで動いているのに、Gを感じねぇな。スピードによる圧力を感じない。

飛行船の時もそうだったけど、魔法的な事象とみてよろしいか?

「これで、着いてから一ミリも進んでなかったら笑うんだけど」

まぁそんなんで目的地の空港とやらに到着。

一時間くらい乗ってたかな? 確かにトロッコじゃ遠いかもね。圧力掛からんから実感無かったけど、もしかしたら数百キロは出てたんじゃない?

到着したホームは、簡素の一言。

何もない空間に扉が一つあるだけ……。

たぶん空港を作ったのって総ダン長を迎える為だから急増だったんだろ。

あの扉はエレベーターか……。

さっそくエレベーターに乗ると上に上昇する。

グワンと体に圧力が掛かる。エレベーターの方はGを感じんるですけど!

チンとエレベーターが到着すれば……。

「お〜、朝日だー! いい景色じゃん」

「……久々の外だ」

山の上にポカンと作られた広い空港。

大自然の中で人工に作られた空港が違和感を感じる。

遠くに見える山から朝日が昇るのが見えた。

うん、いま早朝なんだよね。

なぜなら人に見つかっちゃうから……。

だから誰もいない早い時間にやってきたんだよ。

「ちと寒いな」

おそらく、ここで待ってりゃやってくるんだろうけど……。スキマ作る場所ねぇな。

とりあえず監視カメラを設置するか……。

「あ〜何処か隠れる場所探そうか?」

監視カメラさえ設置してればいつでも見れるし、声も聞ける。

「……あれ」

幼女ちゃんの指差す方を見てみれば、空港の片隅に簡素なプレハブ小屋があった。

「お、いいね。あの小屋に入ってみようぜ」

扉にスキマを作ってニュルンと侵入。

内装は……うん、簡易事務所って感じ。

ズリュ……

私と幼女ちゃんは顔を見合わせる。

お……やぁ? 背後の扉から、鍵穴に鍵を差し込む音が聞こえるぞ〜。

「「ッ!!」」

私と幼女は弾けるように、事務所に置いてある机を回り込んで下に潜り込む。

やべー! 誰か来た!

カツカツと規則正しい、音を立てて部屋を歩く音が聞こえる。気づくなよ〜……。

「……って若造じゃん」

ビビらせんなよ……。

若造なら最悪見つかっても構わんわ。

若造は、どうやらコーヒーを入れてるようだ。

すると、コンコンとノックするような音が聞こえて、間伐入れずにガチャリと扉が開く音がする。

その音に若造はコーヒーを片手に持ったまま、視線を扉にやり、わずかに目を見開いた。

「……お早い到着ですね」

「ああ……」

ドス……ドス……と重く、重厚な足音を立てながら、入ってきた人物は若造に向かってくる。

巨大な大男……。

ミチミチに盛り上がった筋肉がスーツを盛り上げる。

「今日は……我以外にも客がおるからな……」

その声だけで空気がビリビリと震える……。

「……この時間しか……ゆっくり出来そうにないのでやって来た……」

ゴクリと唾を飲む。

や、やべーオッサン入って来たんだけど……。

こ、こえ〜。なんだこの筋肉スーツ!

何? 王様? 武力で成り上がった王様?

とんでもない圧力を纏ったオッサン。

「……そうですか」

しかし、その筋肉スーツと会話する若造といえば、冷静で……何処か冷めたような視線を向ける。

「……歓迎しますよ……『総ダン長』」