作品タイトル不明
ラクガキの能力
どーも私です。
【らくがきスケッチブック‼︎ 〜奪われたカラーパレット〜】
唐突なホラー展開にブチ切れ気味になりながらも、クリアと相成りました。
まぁ、言いたい事は一つ……ほのぼのアクションアドベンチャーで釣っといて、心臓を止めにくるのは卑怯じゃないッスかね?
可愛らしい絵柄で心を『キュン』とさせといて、エグめのホラー展開で『ギュッ』とされたんだぞ……心臓を変拍子で奏でられて、ぶっ壊れるかと思ったわ!
「そうは言っても、メチャメチャ面白かったけどね」
まぁ本題は、このゲームをプレイして作った能力のことだね。ずばり! 発表しちゃうよ!
『ラクガキの能力』
はい、シンプルにラクガキする能力です。
ふふふ、このゲームには色んな能力が散りばめられていたよね? どれを能力にしても面白い能力になったはずさ。
でも私は『ただラクガキをするだけ……』の能力にした。
「ラクガキの能力って何?」
って思うでしょ。にゅふふ、名前の通りだよ……。
「今からそれをご覧に入れましょう」
「……なんかまたオバケ姉ちゃんが不気味にわらいはじめた……」
そこの白ガキ……不気味に笑ってねぇだろ。可愛い笑顔やろがい。お前、私を落として自分だけがマトモなフリすんのやめろや。
まぁいい、この能力は何度も言うけどシンプルだ。
私はソファーから飛び降りるとスタスタと壁の方まで歩く。
そして壁に手のひらを当てた。
「そりゃ!」
その手をスッ……と下に滑らせると、なぞった部分にベットリと鮮やかな赤色のインクが付いた。
さらに人差し指を立ててピンと跳ねると、壁に付いたインクがズリュリと動く。
腕をグルグル回すと、インクは円を描くように広がり牢屋の壁全部を真っ赤に染めた。
「んふふふ、模様替え完了」
僅か五秒で壁紙を変えてやったぜ。リフォーム業者も真っ青だね。
「…………拷問部屋?」
「血じゃないよ!?」
赤が良くないのか? 言われたら血液にしか見えなくなっちゃったじゃねぇか!
チッ、相変わらず幼女ちゃんは可愛げがないね。
……少し驚かしたろ。
「ふふふ」
「……なに?」
壁際に立つ私は不敵に笑うと幼女ちゃんに振り向く。
立っていた私の足元から、ドロリと影のように黒いインクが丸く広がった。
「……?」
まるで穴の上に立っているかのような不自然な光景に幼女ちゃんは首を捻る。
驚け。
「……ッ!!」
私の黒い影が、地面を這う大蛇のように幼女ちゃんに向かって伸びていく。
幼女ちゃんは布団から飛び起きると、ソファーに飛び乗って猫のように影に威嚇した。
「……フシャーー!!」
「アヒャヒャヒャ!」
はい、分かったかな?
「これが『ラクガキの能力』だよ」
言ってしまえば、私が触れている部分にラクガキする能力だね。一度触れてしまえば動くペンキのようにラクガキできるんだ。
「……ラクガキ?」
「そそそ、影が襲ってきたかと思った?」
「……フンッ!!」
「オゴォッ!!」
幼女ちゃんが襲ってきた!
ゴメンて! 能力の慣らしじゃん。ちょっとしたイタズラでしょ! 可愛いもんでしょ!?
「「はぁはぁはぁはぁ」」
暴れ疲れて牢屋にグッタリとする幼女が二人……。
「……しょうもねぇことしやがって」
「しょうもなくねぇよ。色々出来んだよ?」
このままだと下らん能力扱いされそうだから、もうちょっと情報くれてやろうかね。
――――――――――――――――――――――
ガチャリと会議室の扉が開く……。
「あ、若造兄さんお疲れ様です」
「……」
「今日はどうしたんです?」
「…………………………」
「どうしました? 変な所でもありますかね?」
「………………………………」
若造は足の小指でもぶつけたような顔で、恐る恐る牢屋の奥を指差した……。
「なんで………………『外』があるんですかね?」
私は若造兄ちゃんの指を追って後ろを見る。
そこには……『リゾート』があった。
牢屋の向こう側には開放的な海……牢屋オーシャンビューだ。
青い海に白い入道雲。
静かに打ち寄せる波。
誰もいない綺麗な砂浜。
そんなプライベートビーチが、牢屋から地続きで広がっている。
「バカンス中だからですね」
「……」
幼女ちゃんはバカンスらしく、ソファーに座りながらオーシャンビューを眺め、ジュースを啜る。
うむ! 彼女にも気に入っていただけたようで何より!
会議室で呆然と立ち尽くす若造も、どうやら素晴らしい光景に目を奪われているようですな。
「いやそれはダメでしょう!!」
「うお!」
と思ったら急に絶叫し始めた。
クソッ騙せなかったか!
てかお前が急に入ってくるから悪りぃ〜んだろうが!!
「え? 空間歪んでる!? なんで地下に外があるんですか!? このダンジョンは空間を拡張する程の余裕はありませんよ! いや、そう言う問題ですかねコレ!?」
うっせ、せっかく楽しんでたのに……ネタ明かししねぇと止まらなさそうだね。
「あーあー、若造兄さん。これただの絵だから」
そういって私は海に出るように歩くと手を伸ばす。
そして空中を掴むように握ると引っ張った。
景色がペラリと剥がれ、元の牢屋の壁が現れる。
「お分かりッスか? 壁にリゾートの絵を描いてただけッスよ」
「……波が……打ち寄せてましたよ?」
「そういう絵なんで」
この能力の恐ろしさ……分かったんじゃない?
ただのラクガキと侮ることなかれ、実写とみまごうような絵を描けるんだ。しかも動く!
「…………………………なるほど、そうですか」
納得いってねぇけど、ムリやり納得しましたって器用な顔やめようね。もうちょっと取り繕えや。
コイツらだからそれくらいやるやろって顔だ。
まぁ、私が単純なラクガキの能力にしたのはこう言う事。ほかの特殊能力を捨てて、ラクガキに特化させたのはダテじゃない。
この壁紙は私が描いたんだよ。
もちろん私に絵心はない。ないけど『想像した物』を描く事が出来るようにしたんだ。
わざわざ細かく描いたワケじゃないんだよ。泥でも塗りたくるように壁一面をなぞれば完成だ。
ふふふ、中々の能力に仕上がったね。
制限で出力上げて、『ラクガキをする』って能力に特化させた結果だよ。
気になる制限としては、
● ラクガキをするには触れていないとダメ。
● 生き物には描けない。
● 複雑な絵を描くときには筆が必要。
● 筆の召喚には時間が掛かる。
生き物には描けないってのはそのまんまだね。これが出来たらカメレオンのように保護色できたのにね。
そして複雑な絵を描く時には、『筆』を召喚してせっせと塗りたくらなきゃいけない。さっきのプリズンオーシャンビューも筆で描いたんだよ。
というか景色が動くような絵も筆じゃないと無理だね。
まぁ言うて何処まで行っても、ただ絵を描くだけの能力だからね。リソースに余裕があったんだよ。
そのかわり能力の出力が高いだろ? 壁一面を色で染めるなら一瞬だね。
そして描いた絵は直ぐに剥がせる『テクスチャー機能』。逆に透過させたテクスチャーを重ねておけば、描いた絵を隠しておけるよ。
ラクガキがバレないね。
「ところで若造兄さん。今日はどんなご用で?」
「……もうすぐ総ダン長の視察がある話はしましたね」
うん、だから牢屋に冷蔵庫を設置してくれたんだもんね。食事運んで来れないから。
「その間の食料を運んできました」
「あ〜なるほど、助かりますわ」
「いいえ……それにウチだけではありませんよ」
「ほ?」
ガチャっと会議室の扉が開く。
若造が入ってきた扉の対面だ。
「あらクイック。もう着いてたのね」
入ってきたのはメガネを掛けた姉ちゃんだ。
あら、いらっしゃい。
この姉ちゃんアレだね。高飛車女側の幹部。
私達の食事を運んできてんのって、二つのダンジョンが交互にやってくれてんのよ。
そんでこのメガネの姉ちゃんは、若造じゃない時に運んで来てくれる姉ちゃんだね。
若造兄ちゃんと違って私達を怖がってないから、事務的にサッと食事を置いて帰っちゃう姉ちゃんだよ。
「ええ、時間前に行動するのは当たり前ですからね」
「相変わらず嫌味な男ね……」
あ、やっぱり敵の幹部同士知り合いなのね。
「向こうの会議が長引いたのよ」
「別に嫌味など言っておりませんが。被害妄想ではないですか?」
「〜〜アンタ昔っからそうね! 表情一つ変えない鉄面皮男!」
「ふぅ、貴女も相変わらずだ……」
仲良いね……仲良いのこれ?
つかさ、前々から思ってたんだけど……コイツら、戦争中とか言ってるけど仲良いよね。
キツネ顔と高飛車女もそうだけど、幹部同士も気やすく話すんだ。
メガネ姉ちゃんは、牢屋のカギを開けるとダンボールを運び込む。
「お、お姉さん。これ何スか?」
「ん? あぁ、飲み物よ……」
私が疑問に思って聞くと、無愛想にそう返してきた。
その言葉には面倒臭いから話しかけんなって雰囲気がヒシヒシと伝わってくる。
うん、無愛想だけど要件だけ伝えてくる感じ、正直楽ですね。
私達の行動に一々反応する、若造兄ちゃんの方が疲れるからね。
「そ、それは飲み物です!!」
うん、若造よ。聞いたからそれ……。
メガネ姉ちゃんが言ったろ。
「今回しばらく来れませんので、二つのダンジョンが共同で、小悪魔のお二人に食料を提供させて頂いております! そしてソレは飲み物です!」
分かったって……。
「な、なによアンタいきなり……どうしたのクイック」
「だ、黙りなさい! 小悪魔のお二方にそんな無愛想な態度を取って貴女は!」
う、う〜ん。若造兄ちゃんは私達に怯えてるから、なるべく不機嫌にさせたくないんだろうね。
んでメガネ姉ちゃんの態度に私達がヘソを曲げるかもと思ってんだ。
いや、それくらいで怒らんから……。
「あ、な! なんなのよアンタ!」
「まぁまぁまぁまぁ」
牢屋越しに若造に食ってかかろうとするメガネ姉ちゃんを、落ち着かせるように後ろから押さえる。
「……まぁまぁまぁまぁ」
そして幼女ちゃんは、私のマネをするようにメガネ姉ちゃんのパイプ端末を触りながら、若造の時のようにマップのコピーを取っていた……。
う、うん。幼女ちゃんに目配せされたからこうしたけど、本当に油断ならねぇ幼女だなコイツ……。
「あ……あ……は、離れて!!」
白目を黒く染めて、クルクルと天然コアを回転させる幼女ちゃんに、若造は顔を青くする。
そんな若造の態度にメガネの姉ちゃんは振り向いたが、幼女ちゃんはいつも通りの顔に戻っていた。
「なによ、この子達がどうかしたの? ……意味分かんない」
私は若造にだけ見えるように、人差し指を唇に当てる。黙ってなよ。
あっち側のマップも欲しかったんだよ。
「ッ……い、いえ。なんでもないです」
「アンタのそんな焦った顔初めて見たわよ。いつも見下したような顔してる癖に……」
私達は若造兄ちゃんの、そんな焦った顔しか見たことありませんけど……。
「ふん、まあいいわ。戦争が終わったらどうせまた同僚になるんですもの。その時はこき使ってやるわ」
そう言ってメガネ姉ちゃんは会議室を出て行こうとして、扉に向かう。
そして……。
「イタッ!!」
扉に突き指して悶絶してから出て行った。
アヒヒヒ、痛そ……。
「……はぁ私も帰ります。視察が終わるまで来れないので……牢屋から出ないで下さいね」
若造兄ちゃんも自分のダンジョンに帰るため、扉に向かい、ドアノブに手を伸ばしてから……ピタッと止まった。
そして静かに呟く。
「……なるほど……すごいですね」
「あ、気付きました?」
「……ええ、同じことしたんですね?」
「にゅふふ、よく出来てるでしょ?」
若造はドアノブに伸ばしていた手を、少し上に伸ばして握る。
う〜ん、さすがに若造兄ちゃんほど警戒されてたら気づいちゃうか……。
うん、実はドアノブをね。
『ラクガキ』してたんだよ。
そして本物のドアノブは、扉と同化するように塗りたくってたんだ。
さっきメガネ姉ちゃんが突き指したのはそのせいだね。
ドアノブだと思っていたラクガキに手を伸ばしたから、扉に突き指しちゃったんだ。
そして悶絶している間にラクガキを消して証拠隠滅。
ま、横から見たら、すぐバレるんだけどね!
「それでは……」
若造兄ちゃんは、本物のドアノブを握って出て行った。
んふふふ、かわいいイタズラだろ。
私に相性のいい能力って意味、分かったかな?