軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

イロヲモドセ……

【セ カ イ ニ】

今まで主人公ケント君をサポートしてきたシステムメッセージ。

【イ ロ ヲ】

ただゲームの説明だけを表記してきたソレは、温かみのあるクレヨンの緩いフォントを捨て去り。

【モ ド セ!】

ヒステリーでも起こしたように荒々しく描き殴られていた。その文字は、激情をこれでもかと表している。

「いやだから怖いって! いきなりどしたん!? 話聞こか!?」

なんで私は、いきなりホラーゲームをやらされてるんですかねぇ!? さっきまで温かみのある可愛らしいアクションアドベンチャーをプレイしていたはずでは?

「クッソ、騙された……」

このゲームずっと牙を隠してやがったな。

「まぁいい……このゲームのバッドエンド、この私がしかと見届けてやろうじゃないの」

画面の中のシステムメッセージは、今もワケの分からない文章を書き連ねている。

【イヤダ!】だの【コワイ!】だのネガティブなことばかりだ。

ごちゃごちゃうるせぇ!

やがてシステムメッセージは【ユルサナイ】と、ケント君に怒りを向けてくるようになった。

お、おや? どうするケント君。たぶんだけどキミ、このままだとバッドエンドだと思うよ。

倒れていたラスボスの『目玉』が、システムメッセージの怒りに呼応して、充血させた赤い目玉へと変貌を遂げる。

「ふぁいぃ!? ここで操作できるようになった!?」

え、こんな所で操作権を戻されましても……って攻撃してきた! ヌルッとバッドエンドして終わると思ってたのに! ええっと、とりあえず避けてイラスト実体化の攻撃を…………あ、あれ?

「集めたイラスト実体化が全部なくなっとる!?」

それだけじゃない。

ボスを倒すごとに手に入れてきたカラーパレットの色も全部なくなってる。

「いや、ゲーム的にさ……その二つを封じられたら無力なのよ……」

基本的にソレしかできないからね……。いま必死に充血目玉の攻撃よけてるけど……時間の問題やろ。

そして明らかに避けようのない広範囲攻撃でケント君は薙ぎ払われ、画面が黒く沈んだ。

バッドエンドだ……。

「なんちゅうか……後味の悪いバッドエンドだね」

このエンドをわざわざ用意したんだから、なにか意味があるんだろうけど……。

「うん、お、おぉ?」

黒く暗転した画面に、影のような倒れたケント君のシルエットが表示される。

「まだ終わりじゃなかったね」

やがて画面がケント君にズームするように近づくと淡い光が灯り、ムービーが物語を伝えてくる。

「これは〜、ケント君の過去かな?」

あ、ふ〜ん……そう言う事かぁ。

まぁ説明なんてなくて、ムービーから判断した事だから正確じゃないかもだけど……何となく分かったわ。

「たぶん、ケント君は目の病気だったのかな?」

生まれつきというよりは、突発的に起こった病気だったんだろうね。最初はちょっとした違和感だったんだろう。色が分からなくなっていったんだ。

公園で遊んでいたケント君が、色褪せていく景色を見て『?』を浮かべる。

そして病院の映像。

記憶の中のケント君は、このゲームの世界のようにファンタジーな世界というより、どこか現代チックな所にいた。

「……このゲームの世界は、ケント君の精神世界かね?」

ケント君は、日々色褪せていく景色に恐怖を覚えたんだ。そして、自分の中に閉じこもった。

色の無くなった現実を見たくなくて心を閉ざしたんだね。

妄想の中なら、現実で見えなくなった『色』を覚えていられるから。

「……このゲーム、意地が悪いなぁ」

なにがグッドエンドだよ。

最初にクリアしたエンディングは『バッドエンド』だったんだ。

世界から失われた『色』を取り戻す……。

このゲームの世界で色を取り戻すという意味は。

「現実を捨てて心を完全に閉ざすこと……」

ステージが進むごとに、このワールドの色は取り戻されていた。それはケント君が精神世界に閉じこもり、段階的に現実から遠ざかっていくことを意味する。

プレイヤーはその手伝いをさせられていたんだ。

【コノ世界ナラ……イロガアル……】

主人公を導いていたこのシステムメッセージは、ケント君の恐怖心だったんだね。

【?】

……じゃあ、プレイヤーが操作していたケント君は何者なんだろう?

倒れたケント君が、ボロボロの体で立ち上がる。

【モウ、スベテ忘レヨウ……】

この世界に色を取り戻すことに『いいえ』と答えた主人公は何者か?

【世界に色を取り戻しますか?】

『はい』『はい』

もはや選択とも呼べない選択肢を、システムメッセージが問いかけてきた。

『それでも……』

このゲームに置いて常に無言だったケント君が、初めて口を開く。

『いいえ』を選択した主人公は、それでも現実を捨てなかったケント君の勇気。

『カラーパレット【無色】を手に入れました』

ケント君は理不尽な選択肢に筆を振る。

【ナンデ……】

その筆は、選択肢を消し去った……。

「うぉおおお!! カッケぇ!!」

流れる壮大なオーケストラのBGM。

【ナンデナンデナンデナンデ!!】

目玉のボスの周りに、今まで倒したボス達が集まり巨大な姿へと変貌する。

その姿は、嫌味なほどカラフルで毒々しい。

「うお、ここからバトルか!」

使える技はカラーパレット無色のみ!

盛り上がってまいりましたぁー!

「うわ! このオーケストラBGM! タイトル画面に流れていたBGMのアレンジじゃん」

悲しげで美しいオルゴール調だったBGM。それが勇ましく壮大な曲になってる! これはテンション上がるわぁ!

巨大なボスの攻撃を掻い潜り、カラーパレット無色を振る。どうやら目玉への攻撃は最後のようで、合体した部分を先に攻撃するようだ。

ここは最初のボス、犬の化け物が合体した部分だね。

無色の筆を当てるごとに、犬の化け物だった部分の色が抜けていく……。ふむ、そんな難しくない!

ごめん、盛り上がってるとこ水差して悪いけど、難しないわコレぇ!

そして完全に色が無くなったところで分離し、一瞬だけ形を変えて、可愛らしい犬の姿になり消え去った。

「あ、この犬のボスって主人公の飼ってた犬だったのか」

回想の中でチラッと出てたわ。

その後も合体ボスを無色の筆で消していく。

そしてとうとう丸裸になった目玉の化け物に、筆を振る。一撃で倒された目玉は色を血のように吹き出し、透明の霧へと散っていく。

「目玉ぁあ! お前が一番弱かったわ!」

いや、ほとんどイベント戦みたいなもんだから難易度は軽かったね。

今まで色を取り戻してきたワールドマップから、色が抜けていく。

「……そしてエンディングっと」

スタッフロールが終わり、数秒のムービーが流れる。

ピコンピコンという音の中、視界を開くムービーだ。

「お、タイトル画面に戻ってきた」

タイトル画面の色は無くなっていた。

そしてケント君のいた場所には、誰もいなかった。

「むむむ、最後のピコンピコンって病院かな? 病院で目を覚ましたケント君は、現実に戻ったんだろうね」

目の手術でもしてたってところかな。

はたしてケント君は現実に戻った後、やっぱり色が分からなかったのか?

手術の結果が成功だったのかは分からないね。

でも結果がどうであれ現実を選んだケント君なら大丈夫だろう。

いや〜……

「よかった!! 良かったぞ真エンディング!! 私的には通常エンドで終わっていたより評価高いね。まさかこんなエンディングを隠しているとは!」

真エンディングを含めてこのゲームの魅力といっていいだろう。

いきなりホラーゲームが始まった時にはどうしようかと思ったけどさ……。

「全部含めて楽しかったわ!」

ビビらされた時は何してくれんだボケとか思ったけどね!

さぁて、お楽しみはこれだけじゃねぇぜ。

能力の設定といこうか……。

「今回のゲームは、色んな能力が思いつくよね」

空中に絵を描いてイラストを実体化、物体に色をつけて役割を持たせるカラーパレットシステム……うぅ迷う。

さぁどうする?

「いや、違うね……もっとシンプルにいこう」

シンプルな能力にして、それを伸ばす……。

そうすることでこの能力はーー

「私に相性のいい能力になるはず……」

んふふふ、どうなるかな?