軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

友達? なにそれ食えるの?

「どう言うことか、……説明してくれるかな?」

「な、何のことでしょ?」

どーも私です。今は……うん、何と言いますかねぇ。

お部屋のベッドの上でチョコンと正座しております。

「……もくひ権を行使する」

私の横では同じように正座した幼女ちゃんが、目を逸らしながら前方の三つ編みちゃんの言葉を交わそうとしている。

「拒否します。キミ達には黙秘権がありません」

向かいの三つ編みちゃんもベッドの上で正座しながら、感情のこもらない視線を向けてくる。うん、まぁ、尋問されてますわ……。

「……人権とはなんぞや」

「そもそもキミ達のこと人かどうかも怪しいと思ってるよ私……」

有無を言わさない三つ編みちゃんのセリフに幼女ちゃんが眉間にシワを作る。

幼女三人、ベットに正座しながらパジャマパーリィーとはいかないか。

「それで……少し前に映像で流れた『謎の子供』って二人のことだよね?」

これですわ……。

いや〜、町長をハメてクロックシティー全域に放送した事件のことだねぇ。もちろん三つ編みちゃんは見てたんだろうし、テレビでそのことが流れていたからさ。

バレちゃうのはしかたねぇわな。

映像見る限り動画としては出回ってないみたいだし、静止画も荒かったから余程じゃない限り私たちと結びつけるのは難しいだろう。

まぁ三つ編みちゃんからしたら、正体不明の妖怪モドキ二匹と関連付け出来ちゃうのはしかたないよね。

ま、認めないけどさ。

「ちゃいますよ」

理由? 当たり前でしょ……逃げ隠れしてるから、こんな静かな一般家庭に潜り込んでんのにさ。

でもね……だからって無理矢理隠す気もないよ。

「嘘だよね。どうみたってアレ……白髪ちゃんだもん」

「……たにんのそらに」

「……」

「……」

証拠なんてないからね。認めなけりゃ真実にはならんのよ。それにねぇ。

「まぁ、おねぇちゃんの言いたいことも分かりますわ。妹が何処かで危ない真似してたら、姉としては不安ッスもんね!」

「違うよぉッ!? 突然家に出現した妖怪の出所を知って驚愕してるんだよ!」

はい、ここです。

「んでぇ? 仮にアレが私らだったとしたらぁ? どーしたいんスか? おねぇちゃぁあん」

「そんなのっ! ッ…………」

ニヤニヤ笑って言ってやれば、三つ編みちゃんはハッとした後、考え込む。

「え? どうしよ……」

だよね。

別に三つ編みちゃんには関係ねぇのよ。

「だって。あれ……」

「別にねぇ、私ら何も悪いことしてねぇもんよ」

「……うむ、わたし達は善良なこども」

幼女ちゃんが善良かは置いておくとして、だから何だっつー話。……それでキミが不利益被るの?

それとも、私達の情報を売る伝手でもあるのかな?

「だって……あんなに邪悪な笑い声を……あれ?」

「そだね。映像見てたんなら分かるでしょ? 私達は町長を罠にハメた。それは町長が私達を殺そうとしたからだよね」

「ころッ!」

「だから私達はお茶の間に届けてやったんだよ。町長の本性をバラして力を削ぐために。聞いてたでしょ?」

「……そう、だったかも」

「結局の所……アレは町長と私達の生存競争だ。その結果、町長は『負け』て、私達は『勝った』。それだけのことだよ。それでぇ? おねぇちゃんはそんな私達をどーしたいのかってね」

三つ編みちゃんはベッドで正座の姿勢のまま、頭を抱えるという器用なマネをした。

そして、ゆっくりと顔を上げた時に、彼女の顔には申し訳なさそうな感情が浮かんでいた。

「うん、ごめん。どうもしないね」

よっしゃ騙せた!

「あひゃひゃ、分かればいいんですよぉ……おねぇちゃあん」

納得してくれたようだね……。

ふぅ〜〜、やっぱガキだわコイツ。まんまと話を逸らされやがった。

たぶん彼女は本能的に思ってたんじゃないかな?

『追い出す口実』が欲しいってさ。言語化は出来ないほどの感情だろうけど。

だから正体不明である私達の『前』が分かって、尻尾を掴んだ気になった。だから、私達は町長に殺されかけた哀れな美少女だよ〜っ思ってもらう事にした。

うん、これがそもそもの間違いだね。

言っちゃうぜ?

『キミは私達を追い出す権利がある』

当たり前だよね。だって私達はこの家に侵入してきたインベーダーだぜ。追い出す口実なんて十分なんだよ。

だから私達はいつも『元から居る妹』だってスタンスなんだよ。

どんなにバレバレだろうが、『お前が忘れてるだけ』だってね。でも映像で私達の足跡を見つけられて、それが崩れかけた。

でも、やっぱ子供だからね。上手くその感情を形に止める事ができなかったんだろうね。だから私は、その事に思い至らないように『関係ないよね?』って誤魔化したんだ。

「いや〜納得してくれて私嬉しいな〜」

「……うむ、よきことよきこと」

「待って!じゃあ何でウチに来たのさ! 警察でも駆け込めばいいじゃない!」

あ、やべそこ突っ込む!? したかない、ここは正直に答えてあげよう。

「さぁ〜あ、少なくとも警察に厄介になると困るのかもね……例えば、警察の内部に伝手のある貴族とか居るかもよ。知ってた? 亡霊デュラハンの捜査を警察に指示してたの町長なんだぜ?」

「そういえば、そうなのかな?」

あとは三つ編みちゃんに不審がられないよう逃げるかな。

「ところで途中からアレが自分たちだって認めてたよね?」

「……」

「……」

クローゼットに入ろうとした私と幼女ちゃんの両肩にミシリと三つ編みちゃんの指が食い込む。

やっべ……。

「か、仮にの話ッスよぉ……ぐおわっ!!」

「……さらば!」

隣の幼女ちゃんに蹴られた!

私がよろけた隙に幼女ちゃんが一人でクローゼットに入り込もうとする。

このガキッ!! 性懲りもなく私を囮にしようとしやがったな!

「テメーの裏切りにも慣れたぜ!! 白ガキィィィ!!」

「……や、やめろ。離すがいい」

私は半分クローゼットに突っ込んだ幼女ちゃんの腰にしがみついて、道連れにしてやる。

そんな私達の醜い争いを見て三つ編みちゃんが、ため息をはいた。

「コイツらすぐ裏切るな……」

「先に裏切ったのはこの白ガキだぁ!」

「…… 糧(かて) になれ」

「すごく仲悪いっ! よく一緒にいられるね。友達なんだから仲良くしなよ……」

そんな私達を哀れな目で見ながら、三つ編みちゃんは仕方がないなぁとばかりに手を離す。

あ、すんませんね。

それじゃあクローゼットに引っ込みますんで。

――――――――――――――――――――――

私はクローゼットに逃げ込んだ二人を見送ったあと、椅子に座る。

まったく騒がしいなぁ……。

でも、あの二人が来て家の中が賑やかになった気がするな。

いやいや、なにいい事みたいに言ってんのさ私!

どう見たって普通じゃないじゃないか!

控えめに言っても怪異だよ。

家に入り込んだ妖怪だよ。

映像の子供があの二人だという証拠もないけど……。

「たぶん間違いないよね〜」

映像を見た時は、どんな子供だよ! って思ったけど、あの二人を見ていると納得しかない。あの二人組の怪異ならアレだけの事をやるっていう感じがする。

「……はぁ」

結局……あの二人って何なんだろう。

ふと、机のスタンドミラーを見て呼吸が止まる。

「ッ! ……ねぇ白髪ちゃん。急に後ろに立つのやめてよ……ビックリするから」

「……」

スタンドミラーに白髪の髪が映っていた。

振り返ると、表情の乏しい白髪の少女が無言で立っている。

まったく……前は長髪ちゃんがスタンドミラーに映ってビックリしたんだよね。本当にやめて欲しい。

「それで、どうしたの?」

「……」

何か用があるのだと思って口を開けば、白髪ちゃんは無言でコッチを見続けるだけ……ちょっと怖い。

居心地が悪くなってきたところで、ようやく白髪ちゃんの口が動いた。

「……友達じゃない」

「え?」

「……」

何を言っているのか分からなくて聞き返す。

友達じゃない? 何のことだ?

「……キサマは言った……友達だと……」

『よく一緒にいられるね。友達なんだから仲良くしなよ……』

確かにさっき言ったかもしれない。でも……それがどうかしたのだろうか?

なんとなく……白髪ちゃんの雰囲気が怖くて黙ってしまう……。

「……」

ゴクリと唾を飲み込む。……もしかして……怒ってる? その理由が分からない。

怖い……この子が何を考えているのか分からなくて……怖い。

ジッ……と私を見てくる目が赤く光る。

白目が黒く染まる……。

分からない……この子が私にどんな言葉を望んでいるのかが分からない。

「ッ……友達、だから……一緒にいるんじゃないの?」

カラカラの喉でようやく言葉を絞り出す……。

「…………」

「…………」

分かった。

理由は分からないけど、私は白髪ちゃんの地雷を踏んだんだ。

「……そうじゃない……友達だから一緒に居るんじゃない」

「ごめん、何のことか……分からないよ」

「……わたし達が一緒にいるのは……お互いを利用しているからだ」

『利用』?

だから一緒にいるの?

「……だから、わたし達はお互いを警戒しなくて済むんだ」

「……」

「……だから…………『怖い』こと言うな」

私は思い違いをしていたのかもしれない……。

「……友達だからで一緒にいられない……わたし達には敵がおおい。お互いに理由がないと一緒にいられない」

家に住み着いた『二人組』の怪異……違うんだ。

二人組の怪異じゃなくて、二つの怪異が手を組んでいるだけなんだ。

「……友達だからで一緒にいられない」

友達じゃダメ? お互いに利益がないと居られない?

「そんなの……」

やがて白髪ちゃんはゆっくりと目を閉じる。

そして次に目を開いた時には、普通の目に戻っていた。

そして用はなくなったとばかりにクローゼットに振り返る。

「待って!」

とっさに呼び止めてしまう。

そして迷った結果、ありきたりな言葉を口に出してしまった。

「と、友達だから一緒にいるでもいいじゃない!」

白髪ちゃんは軽く振り返って、鼻でため息を吐くと軽い口調で返してきた。

「……わたしの値段は三十万ネルス……わたしの安心の価値だよ……姉ぇ」

そしてニャァァアと笑う。

「何言ってるのか分からないよぉ……」

「……分からなくていい。個人の価値観です……だからね……」

彼女は最後にクローゼットを閉めながら捨て台詞のように口を開いた。

その顔はどこか悲しげで……イタズラっぽい表情だ。

「…………あまり怖がらせないでね」