作品タイトル不明
やっぱ居ねぇよ!
「どぅしたのぉ? お姉ちゃぁあん……」
「…… 姉(あね) ぇ。こっちでアソボ……」
推定この家のガキにそう言ってやると、三つ編みちゃんは疑問顔をして考え込む。
お、騙せるか?
ほらほら、私達は昔からこの家にいてお前の妹だよ。
見覚えがないのは、馬鹿なガキだから記憶がぶっ飛んでるだけだよ〜。
「誰っ!? 母さん! この子達どこの子!?」
ダメですやん……。
リンリンリンリン!!
「何言ってるの〜アムネシア。姉妹なんだから仲良くしなきゃダメよ〜」
「何言ってるの母さん! 私に姉妹なんていないでしょ!」
リンリンリンリン!!
「あら〜、困った子ね〜。また喧嘩でもしたの〜?」
「し、してないよ!? 初めて会った子とどうやって喧嘩するのさっ!」
リンリンリンリン!!
必死に母親に異常を訴える三つ編みちゃんだが、その度に幼女ちゃんの催眠の追加注文が入る。
「お父さん! この子達誰なの! まさか隠し子!?」
「はっはっは、滅多なこと言うんじゃないよアムネシア」
「どうしちゃったの! お父さん! 母さん!」
リンリンリンリン!!
「そのリンリンやめろ!!」
「……なんのこと?」
催眠指輪を振り過ぎてダンサーみたいになってる白髪幼女の腕を掴まれた。そして子供がしてはいけないようなドスの効いた声で顔面を近づけてくる。
幼女ちゃんは目を逸らして誤魔化そうとしてる。けど無表情に見えてアレは相当焦ってる顔だね……。
しかたねぇ、私もサポートするか。
実際、このガキを攻略せんと八方塞がりだしね。
「まぁまぁ、お姉ちゃぁん……ちょっとビックリしただけッスよね? ほら、思い出してみて。私達どこをどう見てもお姉ちゃんの妹じゃん?」
「…………妹?」
ここで首をクリッと捻ってぶりっ子アピール!
ほらほらぁ! 記憶違いだって、ガキにはよくあるだろ?
「……」
「ね? ほら居たでしょ妹」
三つ編みちゃんは、控えめにチラチラと私と幼女ちゃんを見比べる。
……そして、申し訳ないような顔で服を掴んでくる私達の頭をソロリと撫でた……。
「……え、と……ご、ゴメンね」
勝ったわ……。
「…………やっぱり居ないよ!」
私達の頭を撫でながら天井に向かって吠える三つ編みちゃん。
だ、駄目ッスか?
クソッ! 誤魔化すにはこの三つ編みガキ……育ち過ぎてる!
もうちょっとガキなら誤魔化せたかもしれんけど、コレくらいの少女だとダメっぽいな。
「ど、どうする幼女ちゃん……」
「……どうもこうもないよ……一度潜り込んだんだから最後まで誤魔化すしかない」
絶賛天井に向かってツッコミを続ける三つ編みガキを他所に、私は幼女ちゃんにコソコソ話しかける。
「コレ行けるか?」
「……しょせんガキの戯言。子供が何か言っても私達は『妹』をまっとうすればいい……」
「な、なるほど……」
つまりこの家の娘に対しては、知らぬ存ぜぬを突き通せと。まぁそれしかないか。
「……いちおう指輪を強めに掛けてるから問題ないとおもうけど、なるべく親には違和感もたれないように……ガキの発言にも気をつけて……」
幼女ちゃんの言葉に私は神妙に頷く。
「母さん! 居ないよ妹! 思い出してよ! この家には私以外の子供なんていないでしょ!」
「喧嘩はダメよ〜」
「お父さん!」
「ハッハッハ、アムネシアは元気だね」
ふ……むぅ。
確かに現状問題ないように見える……いや問題ないかコレ?
「……とりあえずとめろ。なるべく指輪の魔力を消耗したくない」
「ら、らじゃ!」
とにかく、あんまりこんな発言をこのガキにさせないようにすればいいのね。
「お姉ちゃぁん。こっちみてぇ〜」
後ろから話しかけるけど、三つ編みちゃんは必死に両親に異変を伝えようとする。
とりあえず止めとくか……服をグイグイ引っ張るけど私の力じゃ引きずっていけねぇ……。
「お姉ちゃぁん……マミィ〜とパピィ〜の邪魔しちゃダメだよコッチで遊ぼぉ〜」
無理矢理でも引きずってくか……。
クソ、全然動かねぇ。今セットしてる能力なんだっけ?
『ポケットパペット』
【髪のような物を操る能力】
多少無理矢理だけどええやろ!
シュルリと髪を伸ばして三つ編みガキの口を塞いでこれ以上変な事喋らないようにする。続いて腕や体にも巻きつけた。
「ん“ん“ーー!!?」
「お姉ちゃぁん。コッチだよ〜」
突然拘束された三つ編みちゃんが暴れると私の巻きつけた髪は、ブチリと千切れ光の粒となって消え去る
「あら、やっぱり拘束するほどの力はないか」
「ヒッ!!」
三つ編みちゃんは怯えた顔をしながら床に座り込み、青い顔で私から後ずさった。
あ、ゴメンね。怖がらせるつもりはないんだよ。
「オゴォ!」
そして私は幼女ちゃんに思いっきり頭をぶん殴られた……。
「……おい違和感」
リンリンリンリン!!
幼女ちゃんが片手で指輪を振りながら、もう片方の手で私の胸ぐらを掴むという器用な真似をして、眉間に皺を寄せていた。
「痛いんだけど!」
「……どこの世界に髪が突然伸びて掴みかかってくる子供がいる……」
この世界の常識とか知らねぇよ!
むしろ山とか吹き飛ばす化け物とかいんだから、髪が伸びるくらいなんだよ!
この世界じゃ普通かも知れねえだろうが!
「い、いねぇかな?」
「……本気で言ってるの?」
……いや、ゴメン。
少し考えなしだったかもしれん……。
幼女ちゃんはチラリと座り込んでいる三つ編みガキに視線をやるとため息を付いた。
「……あのガキはもういいけど、親の前で変な事しないで……あるていどは大丈夫だけど……」
「す、スマンこってす」
幼女ちゃんは、怯える三つ編みちゃんに歩み寄ると、目線を合わせるように座り込む。
三つ編みちゃんは座り込んだまま後退り、壁を背にした。
「…… 姉(あね) ぇ……アレは気にしなくていい」
アレやめて……。
「……お前が余計なことしなければ害はないと約束しよう……」
「ッ……き、キミたち何なの!?」
すまんな幼女ちゃん。何とか言いくるめてくれ。
怯えながらも幼女ちゃんを睨みつけるよう目を尖らせる。お、三つ編みちゃん、結構気丈だね。
「……さっきからいってる。『妹』だよ。少なくともお前の両親にとってはな……」
脅しやんけ……。
お前が何言おうが関係ねぇという脅しやろソレ!
「……わかったか……私たちは妹だ」
「ッ!」
三つ編みちゃんはニコニコ笑う両親を見て、悔しげに唇を噛むとキッと睨みつけてきた。
どうやら納得はできないものの、今はどうしようもないと両親の反応を見て思い至ったらしい。
ふむふむ、なかなか賢いね。
「よろしくねぇ……お姉ちゃぁん」
「……不気味な顔やめろ。妹だっつってんだろ」
してねぇよ!
――――――――――――――――――――――
「マミぃ〜、コレ美味しいねぇ〜」
「ふふふ、今日はお野菜たっぷりシチューよ〜」
「……おかわり」
「ハッハッハ、よく食べるね――――」
リンリン……
「――白髪ちゃんは。母さん、僕もお代わり」
「はぁ〜いアナタ。大盛りにしたわよ」
暖かな家庭の団欒……。
「アムネシアもお代わりどうかしら〜?」
いつもと変わらない日々……。
「うん、いる」
でも私だけは分かっている。
「はい、たくさん食べるのよアムネシア〜」
この家庭が虚構だと言うことに。
「お姉ちゃぁん、飲み物とってぇ」
「……わたしにも」
突如現れて妹ヅラをしてくる少女たち。
「ふふふ」
「ハッハッハ」
両親は……ダメだ。
コイツらに操られている。
私が、私が何とかしないと!
「お風呂に入ったなら早く寝なさい〜」
でも、少しだけ思う。
「母さん……ううん何でもない」
私は本当に正しいのか?
本当はこの二人の妹はずっと居て……私がおかしいだけなんじゃないか?
「おやすみなさいお父さん、母さん」
「おやすみなさいアムネシア」
「おやすみ……アムネシア」
そんな気もしてくる。
私は正しいの?
おかしいのは……本当に、私より小さなあの子達なの?
本当に私の記憶は正しいの?
グルグルとそんな考えを巡らせながら、自分の寝室に行くため階段を登る。
トットットットと階段を登る足が重い。
ペタペタペタペタ――
自分の部屋の前まで来て、振り返り心臓が跳ねた。
「どうしたッスかお姉ちゃぁん?」
「……はよ入れ」
な に し に き た!
「な、何でここにいるの!」
「ん〜……なんでって、自分の部屋に帰ってきただけッスよぉ?」
「……うむ」
部屋? 部屋……同じ部屋なの?
え、そうなの?
もしかして本当にこの子達……私が忘れてるだけで妹なの?
妹を自称する怪異は部屋の前で立ち止まる私を他所に、当たり前のように部屋に入る。
そう、なの?
私が忘れてるだけなの?
二人は部屋の中をキョロキョロ見渡すと、顔を見合わせて頷く。そしてクローゼットを指差した。
「ここにすっか?」
「……うむ」
そしておもむろにクローゼットを開くと、よじ登って扉を閉めた。
私はベッドをみて納得する。
「そっか、一つしかないもんね」
そっかそっか………………
「やっぱ私に妹いないよ!!」
三人部屋ならベッドが一つっておかしいよねぇ!!
だからクローゼットに入ったんだよねぇ!!
「アンタたち誰よ!!」
自称妹どもが入り込んだクローゼットを開け放ち、大声を上げる。
「いねぇし!!」