作品タイトル不明
吸着ボールを生み出す能力
「……なに?」
「にゅへへ、ちょいとそこな幼女ちゃん。何処へ行くのかな?」
灯台拠点の防波堤で相対する、二人の幼女。
どーも、私と幼女ちゃんです!
「……いや、どこって……ごはん買いに行ってくるって言ったでしょ」
「そーかぁ〜、こんな雪が降ってる日に大変だ〜」
とまぁ聞いての通り、メシを買いに行く幼女ちゃんの前に立ちはだかった私は、大袈裟な態度でビックリを表現する。
……おい、イラっとした顔すんなや。
「……順番だからね。つぎはオバケ姉ちゃんがいってよ」
「待って待って幼女ちゃん。ちょいと話聞いてくれてもいいじゃ〜ん」
何言ってんだコイツみたいな顔をした幼女ちゃんが、私の横を通り過ぎようとするので腰に纏わりついて止めようとする。
「……じゃまなんだけど」
「コイツ力つえぇーな!」
私に構わず進もうとする幼女ちゃんのせいで、防波堤に積もった雪にズリズリと引きずった跡を作ることとなった。
話聞けっての。
「まぁまぁ、幼女ちゃんの為にもなるからさぁ」
「……わかったよ……てみじかにたのむ」
呆れたような顔をして鼻からため息をはいた彼女は、諦めたように私に向き直った。
お、聞く? 聞いちゃう?
私の新しい能力!
いや〜、前回作ったハムスターボールのゲームなんだけど、思ったより変な能力になっちゃってね。
ここで幼女ちゃんに見せる以外の使い道思いつかなかったから披露しようってワケよ。
「さてっ! じゃあ幼女ちゃん。キミはこの防波堤を見てどう思うかね?」
バッと手を広げて、私達の立っている幅二メートルほどの防波堤を示す。
「……どうって……灯台に続く防波堤」
「そうその通り! よく出来ました!」
「……もしかして、ナメられてる?」
「そしてこの灯台は私達の拠点! つまり灯台に続くこの防波堤は『玄関』なワケだよ!」
「……そうかな?」
そうなんだよ。そう言うことにしとけや。
「でもね。玄関であるが故に、何度も通るであろう我々の防波堤は、雪が積もっていて歩きづらいよね?」
「……まぁ……そうだね。『我々の』ってだいぶ猛々しいけど」
住んでんだから灯台含めて私達の物でいいんだよ。
覚えとけっ!
「そーこーでっ! 今から私が、この防波堤の通路に積もった雪を除去しようじゃないか」
「……雪かきでもするの?」
「んっへっへ。まぁ見ててよ」
「……見せたいんだね……」
私は防波堤に続く湾岸に向かって、大の字のポーズを取ると目を瞑り、そしてカッと目を開くと必殺技のように声を張る。
「【ハムスターボールッ!】」
私を起点に『半透明の玉』が広がって私を覆った。
「……なにそれ」
「吸着ボールだよ!」
私の周りに生成した球体をペタペタ触って、幼女ちゃんが不思議そうに首を捻る。
はい、コレが今回の能力!
【ハムスターボール 〜コスモスフィアの正体〜】をプレイして得た能力……。
【吸着ボールを生み出す能力】
能力はゲームのハムスターボールと似たようなもんかな?
「……きゅうちゃく? 別にベトベトしないけど……」
ベトベトって言い方やめて……ベトベトしないから。
「それはアレだね。質量が足りないから、まだ幼女ちゃんを巻き込めないんだよ」
「……巻き込むってナニ!? わたし巻き込まれるの!?」
まずは小さな物から吸着させていかなきゃいけないからね。ちなみに周りに吸着できるほど小さい物がなかったら知らん!
「じゃ行くよ〜見ててね……えっほ! えっほ!」
「……え、わたしなに見せられてるの? 雪かきじゃないの?」
そしてボールの中で走り出す私。
しかしボールは進まず、その場で走っているだけの私の図が完成しました。
まるでランニングマシーンのような光景に幼女ちゃんも戸惑いを隠せていないようですね。
ちゃうねん。こっからだから。
「えっほ! えっほ! えっほ!」
しかし……こ、これはキツイな。
私がこの吸着ボール……もといランニングマシーンの中で必死に走っていると次第に変化が現れた。
ズリ……ズリ……という重い音を立てて吸着ボールが徐々に前進を始める。
そしてボールには雪が付着し、ボールが積もった雪の上を進むたび、雪だるまのように大きくなって行く。
そうコレがこの能力……球体に吸着させる能力だ。
最初だから雪くらい小さい物しか吸着させられないけど、たくさんの物を巻き込んで吸着ボールを強くすれば、無抵抗な人間くらいなら巻き込めるくらいの質量になるはず。
「えっほ! えっほ! ただしそれまでが大変なんだけどねー!」
うむ、申し訳ないが出だしが物凄く遅い能力なんだ。
質量が大きくなれば使い道もあるんだろうけど、ゲームエネルギーのリソース上使い勝手は良くない。
いざと言う時に使える能力ではないのだよ。
それこそ時間がある時の雪掻きや、もしかしたら掃除くらいは使えるかも知らんけど。
「えっほ! えっほ! はぁはぁ……」
ズリズリと歩く程度のスピードくらいになった所で、いったん休憩。それでも吸着ボールはズリズリと移動を続ける。
私が内部で走ったことで溜まったエネルギーで少しの間自走くらいはできる。
そして再び走る。
そして防波堤の先にある、少し角度の曲がった所で角度を変えて走る。
う、うむ……少しばかり操作にクセがあると言うか……難しいんだよね。
ある程度スピードが乗れば私の意思で操作できるんだけど、それもある程度……。
それを解消するために付けた制限が、転がりたい方向に向かって走るという力技だ。
ちなみに周りに雪がくっ付いて雪玉状になっているワケだが……外は透過して見えるようになっている。
そしてようやく湾岸までたどり着いた所で、再び幼女ちゃんの待つ防波堤に向かってボールを戻す。
「ど〜お? 幼女ちゃん?」
吸着ボールの中からニュッと顔を出して外の幼女ちゃんに声をかければ、彼女は言いづらそうな顔で防波堤の通路を指差す。
「の、残ってるね……雪」
「……おつかれ……じゃまだからその雪玉どかして」
う、うん。
全部の雪をボールに吸着させるには大きさが足りないらしい……何往復か必要か。
「まだまだ! この能力はコレだけじゃないよ! ライドオンモード!」
ある程度育った吸着ボールで使える必殺技!
雪玉の上に最初の吸着ボールほどの大きさの玉が現れ、まさに雪だるまのような形に変形する。
そしてその下の玉から上の玉にズボッと現れた私は、雪玉の上でダッシュする。
「チャージ ラン!」
その場で回転を始める雪玉と、その上で必死に走る私。……そして。
「シューーート!」
今までのスピードとは比べ物にならない……といっても大人がランニングするくらいのスピードでゴリゴリ進んだ私は湾岸までたどり着き、そして再び引き返して来た。
「ど〜お? 幼女ちゃん?」
チャージランが消えた私は、再び雪玉の中からズボッと顔を出してドヤ顔を見せると、幼女ちゃんは防波堤を指差して口を開いた。
「……変わってないよ」
「あ……」
チャージラン中は一気に進めるけど、吸着機能は解除されちゃうんだよね……。だから私は進んで帰って来ただけだ……忘れてた。
「……もういいからどいて」
「おわっ! ちょ! 押すんじゃねぇ!」
防波堤に鎮座する巨大雪玉が邪魔だったのか、幼女ちゃんが転がす。
そしてあろう事がこのガキ……海に落としやがった。
「おわ〜!! 何すんだテメー!」
そして海に浮かんだ雪玉は海水で溶けて無くなり、プカプカと海に漂うボールに包まれた私が残った。
「……うくんだ……それ」
「浮くんだ!? コレ!」
もしかして簡易的な船にできるか? 始まったかこの能力!
「でも、ここからどうすればいいんだろ……」
「……ごはん買いに行ってくるね」
あ、ボールの中で走れば少し進むわ。
私は必死に走って上がれる陸地まで、吸着ボールを漕いだ……。
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「今日はパーティーでダンジョンに潜るからダメだ」
扉を開けた負け犬が私達を見ながら肩をすくめる。
今日は負け犬とダンジョンに行って小遣い稼ぎでもしようと思ったらコレ。
まぁ仕方ないね。
「オケ、お仕事頑張ってくださいね〜」
「……うむ、励むがよい」
負け犬がお仕事なら、別に無理にでも付いて行く必要はない。
私達はアッサリと背を向けると、手をフリフリ振りながら立ち去ろうとする。
「あれ? その子たち……カリバーさんがオクトー区域で面倒見てた子たちだよね?」
ガチャリと向かいの扉から顔を出したのは、一人の純朴そうな青年。
あ〜、誰だっけコイツ?
思い出した。負け犬をスカウトしたパーティーのリーダーっぽいやつ。
『主役面』した男だ。
いや別に含むところもないし、主役ヅラってもの私の主観だけど。
「あ、あぁリーダーさん。コイツらは気にしないで下さい」
多少ドモりながらも言葉を返す負け犬は、頭を掻きながら愛想笑いを浮かべる。
悪事が見つかった小悪党みたいな反応だな。
「キミたちもセッテ区域にやってきてたんだね」
そう言って朗らかな笑顔を浮かべる主役面の青年。
「え、えぇ。荷物持ちにちょうどいいので……」
「ふふ、カリバーさんは顔に見合わず面倒見がいいよね?」
そして主役面は何か思いついたようにポンと手を打つとニコやかな顔を私達に向けて来た。
「わかった! キミたち将来は冒険者志望だよね。こんなに小さいのに偉いね。もし良かったら今日の探索……僕たちについてこない?」