軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

陽キャパーティーの物語とか知らんし……

「きっといい勉強になると思うんだ。どうかな?」

そういって赤毛の髪を揺らして首を傾ける 主役面(しゅやくづら) は、人懐っこそうな笑顔を私達に向ける。

はいどーも、私です。

隠キャのクセに陽キャサークルに所属した負け犬に会いに来ました。

そしたら『キミたちも一緒にダンジョンどーお?』と インカレ(インターカレッジ) のお誘いみたいな言葉を投げかけられました。

この主役ヅラの陽キャ、距離の詰め方エグいな。

さぁて……どうする?

チラリと負け犬に視線をやってみれば、焦った顔で『本気ですか!?』と主役ヅラの発言に狼狽している。

ふむ、私としては付いていってもいいと思っている。

コイツらがいれば、よく分からんダンジョンの深い所に行けるんだろうしね。

一応浅瀬の安全なところはよく行くけど、深い所までは行った事ない。

ダンジョンってのは元の世界に存在しなかったモンだ。正直興味あるよね。

幼女ちゃんに視線をやってみれば、意外にもノリ気な表情をしている。

「いや、意外でもないか……」

この子は私より危機感が強い。

わりとチャランポランな私と違って、シッカリしとんのよ。

私はまぁ……『どうにでもなんだろ』っていう適当さがあるからね。この世界の常識を知らない分余計にね。

幼女ちゃんはたぶん、白髪ママさんと再会するという目的があるからだろうね。お金の大事さを実感してるんだよ。

そしてダンジョンはお金になるという実績があるからね。

なんの後ろ盾もない状態でお金を稼げるダンジョンと負け犬は私達にとって貴重だ。

そのダンジョンの奥に安全に行ける機会だもんな。

「なるほど〜……本当に荷物持ちくらいしか出来ませんがヨロシおすか?」

「ふふ、子供なんだから気にしなくていいよ。勉強だよ勉強。安全は僕に任せて貰っていいからね」

「ちなみに……ダンジョンとか言って人攫いだったりしません?」

私の発言に主役ヅラは目を丸くすると、クスクスと可笑しそうに笑う。

「あはは、人攫いして商売できるツテがあるなら冒険者なんてやってないよ」

そらそうね。私好みの答えだわ。

まぁ私も、冗談で言っただけで本気でそう思ってるワケじゃない。

そもそも、一見さんの私達をとっ捕まえて売り払うなんてリスクを負うほど、バカでもなさそうだし。

だったら観光がてら行ってみるかね。ダンジョンを作る時の参考にもなるかもしれんし。

「ふむふむ、それじゃあイケメンお兄さん。今日一日、お願いしますね」

「うん! 任せてよ」

もっとも……人攫いじゃないにしても、私達にとって利益だけある存在かどうかは分からんけどね……。

まぁ全部が全部疑ってたら何も出来んわ。

―――――――――――――――――――――

「よ〜し、今日は『双子の塔』……『セプテム』に行こうかな!」

「お、双子の塔か! セッテの双子は久しぶりだぜ」

赤毛の主役ヅラの発言に、車を運転しながら血気盛んに返すパーカーを来た浅黒い肌の男。

ダンジョンに行くって言われて、真っ先に車に乗るってなんか違和感あるよね!

いやまぁ……荷物もあるし遠いなら仕方ないんだろうけど、こう……雰囲気ってあるじゃん?

森を行軍して道中キャンプしてようやくダンジョンの入り口に辿り着く……みたいな?

これが文明の発達した世界のダンジョン事情か。

「双子の塔ねぇ……」

なんか聞いたことあんな。どこだっけ?

思い出せん……まぁいいや。

「ちょっとリーダーさん! 今日は人工ダンジョンで『工場裏』の予定ですよね!」

「あはは、今日は社会見学も兼ねてるからね。セプテムを見学できるのは勉強になると思うんだ」

主役ヅラの発言に頭を抱える負け犬。

コイツなんか苦労してんな……似合うよ?

「まぁまぁ、カリバーさん。双子の塔は何度か行ってるからよ。安心してくれ、それに子供連れで深いところまではいかねーよ」

浅黒パーカー兄貴の発言で負け犬は口をつぐみ、パーカー兄貴は肩を竦めた。

「双子の塔『セプテム』はクロックシティー三番目に大きなダンジョンだよ」

車の後部座席に座っていた私達のとなりで、無愛想な女がコチラに説明を入れてくる。

無愛想だけど子供に説明くらいはしてくれるらしい。

子供好きかい?

この街で三番目に大きなダンジョンね。

この無愛想な女と、パーカーを着た浅黒兄貴には見覚えあるな。負け犬を勧誘した時にみたヤツらだ。

あと知らん小動物系の女が一人。

ふむ、コイツらのパーティーは、『男二人』と『女二人』プラス『負け犬』の五人なワケね。

負け犬浮いてんな!

まさに陽キャサークルに入った隠キャって感じだ。

まぁいいわ。

今日が終わったらもう会うこともないから、顔を覚える脳のリソースを割く必要もない。

「……ふたごのとう」

「知ってんの? 幼女ちゃん」

「……まえにオクトー区域でもみた。あっちは『サマーニャ』。クロックシティーで二番目に大きなダンジョン」

あ〜、思い出した。

マフィアに捕まっていた時に遠目で見たダンジョンか。

でけぇ塔なんだよね。

あんときは一本なのになんで双子の塔なんだって言ってたけど、セッテ区域の塔と合わせて双子なのか。

――――――――――――――――――――――

「それでよぉ、前回来た時は大変だったんだぜ。剣も槍も魔法も効かねえ魔物が現れてよ」

「へ〜、それで逃げたんスか?」

「はは、そう思うだろ? そこはリードがやってくれたんだよ」

セッテ区域で最大の……そしてクロックシティーで三番目に大きなダンジョン。

『双子の塔』を行軍中です。

洞窟……というより、神殿っぽい石造りの通路だね。

わりとオーソドックスなダンジョンというか、私のイメージするダンジョンってこんな感じよね。

前を見れば負け犬。

そしてその前には主役ヅラと女二人。

そしてそして、私達を守る様に殿を務めるのは、槍を持った浅黒パーカー兄貴。

私達の護衛ってことなんだろうけど、どちらかと言えば会話相手みたいな感じなんやろな。

しかし、このパリピみたいなパーカー兄貴なんだけど……。

「そこでリードが結界の力で無効化した魔物を命からがらトドメを刺したんだ! スゲェだろ!?」

主役ヅラのこと好きすぎるだろ。

ずっと主役ヅラの武勇伝を私達に聞かせてくるんだけど……このパーカー。

いやまぁ、自分の武勇伝じゃない所は、まだ聞きやすいんだけどね。

「いや、持ってる人間ってのはいるもんだよな。選ばれた人間ってのはリードみたいな事を言うんだぜ」

おいそろそろウゼェぞ。ペラペラ喋ってんじゃねぇ。

お前ファンかよ。

幼女ちゃんといえば、私達の周りに作られた半透明の物体を触っている。

どうやらコレ……結界というらしい。

主役ヅラが私達に貼ってくれた、バリアみたいなモンらしいね。

助かる助かる。

安全に気を遣ってくれているみたいで、ありがとさん。

これなら安全にダンジョン見学できるね。

――――――――――――――――――――――

「クソッ! 何なんだよコイツは!」

「エル! 子供達を守って!」

「リード! もうポーションが!」

「リーダー!」

そして一体のモンスターに蹂躙される陽キャパーティー……。

ダメじゃねぇか!!

なにが安全だ! 楽勝で壊滅しかけとるやないかこのザコども!

中央に柱のある闘技場のような所で佇む、ライオンのようなモンスター。

そいつに陽キャパーティーはボコボコにされてます。

いやザコとか言ったけど、たぶんコイツらがザコというよりはライオンモンスターが強いんだろう。

明らかにさっきよりレベルの違うモンスターだわ。

いきなりレベルの違うモンスターが出てくるのは駄目だろ! ゲームじゃねぇんだぞ。

つかなんだ? あのライオン……。

明らかにおかしいというよりは……主役ヅラを目の敵にするように狙ってる。

なんかあんのか主役ヅラに。

「……幼女ちゃ〜ん。ちょっと目隠ししといて。スキマ作るから」

まぁ主役ヅラの主役みたいなエピソードなんぞ知らん。

このまま一緒に殺される気はない。

ダンジョンの石柱にスキマを作成する。

コチコチコチコチ……チーン!

よし! 完成!

コイツらが殺されたら幼女ちゃん連れてスキマに隠れよ。

ついでにオロオロしている負け犬も引き摺り込んでやるか?

こいつ使えるし……。

「リード! 逃げよう!」

「まって……まだ試してないことがあるんだ」

いや、逃げれるんなら逃げろや。

こちとら社会見学に来とんのやぞ。

「みんな! 時間を稼いで!」

「ふ、リードのワガママが出たぜ。しゃーねえな!

早めに頼むぜ!」

まぁ〜だ掛かりそうですかね?

倒せるんなら早く倒してくれや。

コッチも無駄に能力晒す気はないから。

「うおぉおおおお! 喰らえー!!」

なんか結界を剣に纏わせてゴゴゴって感じで最終奥義を放つ主役ヅラ。

はいはい、喰らえ喰らえ。

どっちでもいいけど、早めに決着頼むわ。

というか何だろうね? この物語の中盤から見せられてる気分……。

主役ヅラを主人公にした物語の、中ボス的な存在?

関わりたくねぇ〜……。

「ッ! まだだっ!」

主役ヅラの最終奥義で、ライオンモンスターは傷を負ったものの、まだ立っている。

最終決戦にむけて、陽キャパーティーは『うぉおお』と飛び掛かる。

そして……。

「や、やった!」

倒れ込むライオンモンスター。

はいはい、中ボスクリアおめでとう。

いいから私達を地上に戻してくれ。お前たちの物語はお腹いっぱいやねん。

ガコンッ……

倒れるライオンモンスターの後ろの壁が迫り上がる。

「そ、そんな!」

「クッ、まだだ! まだ諦めないぞ!」

その向こうから百体は超えるライオンモンスターの群れが……これはもう駄目みたいですねぇ〜。

一体でも苦労してたのに、アレは無理やろ。

私達はスキマに隠れながらゆっくりと地上を目指しましょうかね。

私達には関係ないからスマンね。

シャン……

鈴の音が聞こえた気がした……。

「邪魔よ……」

地面から生えた無数の何かが……ライオンモンスターの群れを串刺しにする……。

「おかしいわね……この辺りにマーキングした反応があるんだけど……」

ライオンモンスターを串刺しにしたのは……縄のようなものだった。

私は幼女ちゃんの襟首を引っ張って、スキマに滑り込む。

あーはーはー……ヤベェ!!

関係ないとか言ってすんませんでしたっ!

私達に関係あるヤツ来ちゃったよ!

アイツこんな所まで追って来やがった!

「……いたいんだけど」

無理矢理スキマに引き摺り込んだ幼女ちゃんが、抗議の視線を向けてくる。

黙ってろ……そんな場合じゃねぇんだよ。

「ん? なに……アンタたち?」

紫色の袴のような服を来た女が、奥の通路からゆっくりと姿を現す……。

私のダンジョンを壊した破戒僧……『祈りの巫女』がオクトー区域から追って来やがった……。