軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

これはマフィアですわぁ……

「お〜、あれ! あれ何すか? あの尖った山みたいなやつ」

高速道路のような場所を走る、車の中からこんにちわ。

興奮気味に車の外を指さして気になる物を情報収集……もとい都市観光をしております。どーも私です。

「うるせえな……双子の塔だよ」

はい、こちら都市観光ガイドさんとして、傷グラサンを隣に添えております。面倒くさそうにしていても、ちゃんと答えてくれる所に、苦労性な性格がチラ見してますね。

「一本しかなくないッスか?」

「確かに、気にした事なかった……」

ただ少しばかり、観光ガイドとしては知識量に不足が見られます。

まぁいいでしょ。

せっかく観光に最適な都市なんだからさ、楽しまなきゃね。

「……あれ、ダンジョンらしいよ」

「およ? ダンジョンねぇ……何でそんな事知ってんの? 幼女ちゃん」

「……ん」

傷グラサンとは反対に座ってるキモノ幼女ちゃんが、腕についてるパイプ端末を見せてくる。

あ〜、ネットみたいな機能ついてるから検索できんのか。……というか調べたんだ。キミも観光楽しんでるよね……。

「……別の場所に同じような塔がたってるんだって、中央の時計塔から全く同じ距離建ってるから『双子の塔』……らしいよ」

「へ〜、ところでダンジョンって結局なんなの?」

「……知らぬわ」

さいですか……。

「おいシロ……お前、何でパイプ端末使えるんだ?」

「……あ、やべ……」

およ? 傷グラサンが顔色悪くして幼女ちゃんに疑わしげな視線を向けてる。

「首輪……付けてるよな?」

「……見ての通りだけど?」

「……」

まぁいいや。ところで今回は見ての通り、檻に入れられての移動じゃないんだ。キモノお嬢の指示で、白髪幼女をキモノ白髪幼女に進化させた後の話。

公園デビューという名の、カジノに行くという言葉に従って、私たちは移動させられる事となった。

「面倒くせえな」と傷グラサンは愚痴りながら移動用の『キャスター付き檻』に私たちを詰め込んだ。そしてそのまま、トラックの荷台まで連れてこられたんだけどさぁ。

荷台に、幼女入り檻を乗っけようとしていた傷グラサンを眺めながら、キモノお嬢がニコニコ顔で呟いたんだ。

「いちいち待ってるの、面倒ね……」

黒服サングラスを含め、その場にいた全員が思ったよね……。

『テメーの趣味で檻に入れてんだろうがっ!』

かくして、「今日は乗り降りが多いから、檻に入れなくていいわ」という鶴の一言で、私たちは車の座席に座らせてもらえる事になりました。

うん! 分かる分かる。お宅のお嬢様イカれてるよね! グラサン達もそう思うでしょ?

そんなこんなで外の見える座席で、優雅に外を楽しみながら向かった先は大きなビル。

受付で「近距離移送核を予約していたものだ……」と重々しく発言した私たちマフィア一行は、エレベーターに乗って地下深くに向かう。

ん〜カジノがあるって雰囲気じゃないんだけど……この世界のカジノは、こんなに人気がないもんなのかね?

もちろん地下深くにはカジノなんてなくて、不思議パワーで光ってそうな装置。……というか門。

それを皆んなで潜れば――

「あら不思議……」

別の部屋にご到着……。

おい、何が起きた? 一瞬で部屋の模様替えをする装置か?

……分かってるよ。

多分ワープしたねコレ……。

そうか、瞬間移動があるのか。

ん〜……だとしたら、なんでこんなに乗り物が発達してんのか不思議だね。

瞬間移動が一般的に存在するならば、乗り物は無用になるはずだ。

まぁ、幾つか予想は立てられるけどね。

そもそも気軽に使える物じゃない……とか。

どこでも送り込めるほど技術はないとか。

あとコレは多分あるだろう……たくさんの物を運び込むことが出来ない。

だってそうじゃなきゃ……金持ち筆頭の豚貴族が飛行船を使って移動していた理由がない。

恐らく、限られた場所と場所を繋ぐ感じか?

そして一度使ったら次に使うのが時間が掛かるとか……。

まぁ部屋から部屋に移動なんて、たいした物は持ち込めないだろうから引っ越しには使えないだろう。

まぁ予想になるけど、そんなに便利な物じゃないんだろうな……。

そしてビルから出てみれば……

「予想通りかぁ……」

辺りの様子が変わってる。

その光景に幼女ちゃんも目を丸くしていた。

周りが街中なのは変わらない。そもそもビルから出てきたんだから当たり前だ。

「少し薄暗い?」

「……かべ?」

幼女ちゃんの視線を追ってみれば、遠くに見える山の向こう側に……壁としか言いようのない物が存在する。

山の向こうってことは結構遠いんだろうけど、問題はその大きさ。

上がボヤけて確認できない。

横もボヤけて端っこが見えない。

「なにあれ世界の端っこ?」

こんな事呟いちゃうのもおかしくはないよね。

上も横も壁が続いてるんだから、そんなふうに思ってもしかたない。

そんな私の言葉に、黒服サングラスどもは微笑ましいものを見るような笑いをしている。

おい、なんだこの反社会勢力ども……。

子供の純粋な意見を聞いたような顔してんじゃねぇぞ。

あ、私、子供だったわ……。

「……もしかして……時計塔?」

「おん? あれが?」

幼女ちゃんの名推理に、黒服サングラスどもはウンウンと首を縦に振っていた。

「はは、近づくと何が何だか分からねえよな」

傷グラサンがこう言うってことは、なるほど時計塔で間違いないんだろう。つまりは、ワープで何処に移動したかと思えば、時計塔に近づいたって事だね。

遠くだから時計塔だと判断出来るけど、近づけば分かんなくなるのか……。そりゃ巨大なわけだ。

でもさ――

「時計の意味なくない?」

「そうだな……」

文字盤とか見えねぇんだけど……そこんとこ時計としてどーよ?

――――――――――――――――――――――

「ふぅん……結構発展してるね」

またもや車で移動、窓から外を覗いてみれば開放的な街が広がっている。

辺りは日が落ちて暗くなっているが、街の明かりで煌々と眠らない街を演出していた。

ビルにはモニターが設置してあり、飲み物の宣伝をしているエロい女が映し出されている。

そして空を回遊する飛行船の側面にも、モニターがあって私には読めない文字が映し出されている。

あぁ、確かにカジノとかありそうなゴージャスな雰囲気だわ。治安は悪そうだけど……。

そして到着したのは、やっぱりゴージャスそうな建造物。たぶん此処が、キモノお嬢の言っていたカジノなんじゃないかな?

車から降りたら、別の車から降りてきたキモノお嬢の後ろに並んで歩き出す。

そして店内に入ると、煌びやかな店内が一瞬静まり返り、視線を集めていた。どけどけ! こちとらマフィアやぞ! 道を開けな!

「おぉ、あれは……」

「バイラールファミリーの……」

ふむ? 犯罪組織をバックにデカい顔してやろうとしたら……どうも様子がおかしい。

怖がられるとか思ってたのに、その視線の多くは羨望や憧れが混ざっているように見える。

もちろん怖がっている人も多いけど。

キモノお嬢も黒服サングラスどもも、それが当たり前のような顔してるし……。

そんな事思ってたら、小太りの男がそそくさとキモノお嬢の元にやってきて頭を下げた。

「お、お嬢様! 事前に連絡をいただけたら出迎えを用意しましたのに!」

お、上司に対する定型文みたいなセリフだね。

「ふふ、優雅じゃないわね。連絡したら視察の意味がないじゃない?」

「ま、まったくごもっともですな」

気にせず歩き進めるキモノお嬢に付き従いながら、小太りオジサンはヘコヘコと頭を下げて、汗をハンカチで拭う。

なるほど、このカジノってキモノお嬢の持ち物か。

というかマフィアの資金源の一部だったりする? カジノか……。う〜ん、マフィアって言っても、もしかしてあんまり非合法な事はやってなかったりするのかね?

こんな街中で堂々と営業してるんだから、非合法ではないだろうし。

「お、バイラールファミリーの所のお嬢じゃねえかい。帰ってきてたんだな!」

「あら、パルマコンファミリーのところの……」

頬の垂れ下がった、いかにもマフィアのドン的な格好の男が葉巻きを咥えながらキモノお嬢に話しかけてきた。

「がはは、楽しませてもらっとるよ! アンタんとこの事業に乗っからせて貰ってから、羽振りも良くなったしな!」

「ふふ、嫌だわ。言ったじゃない。私に付けば損はさせないって」

「おぉ……こえぇな。従わなきゃ潰してた癖によぉ」

そうは言いながらも葉巻きの男は、キモノお嬢に悪感情はなさそうだね。

「聞いてるぜ。ダンジョンで手を貸して、ヤバいブツを手に入れてきたらしいじゃねぇか。流石は個人でオクトー区域のパワーバランスの一角を担うエルテ嬢だぜ」

「耳が早いわね。私は興味ないからそのうちオークションにでも出すわ。ところでそっちはどうなの? 取り引きしている薬に安物が混ざってるらしいじゃない」

あ、薬って風邪薬ですかね? やぁ〜、製薬会社にも精通してるなんてサスガダナー。

「まったく困ったもんだぜ。どうも裏でゴタついてるみてえでな……。裏と言えば、『裏カジノ』の開催はまだなのかい?」

う〜ん、会話すればするほどヤバめなワードがボロボロ出てくるんだけど……耳を塞ぎたい。

「ふふ、近々ね……」

え? なんでそこで私たちに振り返るのかな?

「お、え……お嬢……その子供は一体誰なんだい?」

「ふふふ、私の新しいペットよ」

その言葉に葉巻きの男は、頬をひくつかせる。

そして私たちの首についている物をみて、冷や汗をかき始めた。

「お……う」

「招待状……送りますわね?」

「あ! あ〜……せっかくだけど悪いな! ちょいと用事が立て込んでて次回は見送るかもしれん。また招待してくれや!」

「あらそう、残念ね」

葉巻きの男はその言葉を最後に、キモノお嬢に付いてくる足を止めた。

そして、キモノお嬢の後ろ姿に向かってボソリと呟く。

「ホント……こえぇな……」

こえぇ〜のはコッチのセリフだ馬鹿野郎!

意味深で不穏な言葉残していくんじゃねぇよ!