軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

ファーーーーー!!!!!

どーも私です。

ご主人様が言うには『お散歩』……という話ですが、別にリードに繋がれて公園を歩くものじゃなさそうです。

なぜなら街中を黒服連れてゾロゾロと進行しているだけなので……。

なにこれ? マフィアのカチコミ?

周り見てみろよ……歩くたびに人が割れて視線を合わせようともしないんだぜ。

関わっちゃいけねぇ集団って一発で分かるもんね。

「あら、おいしそうね」

その先頭を歩くキモノお嬢は、カフェのオープンテラスを糸目でチラ見してそう呟く。

座っていたカップルは、顔を引き攣らせて、そそくさと立ち去っていった。

ついでに私たちも、立ち去らせてくれませんかね?

「適当に何か買ってきなさい」

「へい」

キモノお嬢はスッと音もなくテーブルに腰掛けると、扇子を開いて口元を隠す。

「え〜っとぉ……私たちはどーすればいいすかね?」

「ペットらしく私の後ろに立ってなさいな」

う〜ん……それ、ペットというより護衛の立ち位置なんじゃね? まあこのお嬢に護衛なんて、必要無さそうだけどね。

まぁ、別に幼女二人が後ろに立ってたからって、威圧効果もゼロだけどさ。

「あら、けっこう美味しいわね」

パンケーキのようなスイーツを、ナイフとフォークで切り分けるキモノお嬢はご機嫌そうだ。

いや、いつもニコニコしてるから、本心はよく分からんのだけどね。

ふむ……

「ご主人様〜、哀れなペットにもおこぼれを恵んで貰えないッスかねぇ?」

「あらノラ? オマエも食べたいの?」

「ば、馬鹿! やめろ!」

後ろから傷グラサンの焦った声が聞こえるけど、無視だ。スリスリとゴマを擦りながらキモノお嬢にスリよる。

「ダメよ。ペットにエサ以外の食べ物をあげるのは、飼い主として許可できないわ」

「えぇ〜、そんな硬い事言わないでくださいよぉ」

座ってるキモノお嬢の左腕に縋り付いて、スリスリと顔を擦り付ける。

ほれほれ、ペットっぽいムーブがお好きなんだろ?

うへぇ……近寄るとさらに嫌悪感がすごい……。

触れてる部分の鳥肌が止まんねぇよ。

「……ごしゅじんさまー……わたしもー……」

「ふふ、オマエもなのねシロ」

反対側では幼女ちゃんが私のマネをして、同じ事をやってる。あ、幼女ちゃんも鳥肌たってるね。

「でもダーメ。そろそろ本部に戻るわよ」

「ちぇ、へーい」

「……」

キモノお嬢は口元を拭くと立ち上がり、用意された車に歩き出す。

どうやらコレから本部。というかたぶん、キモノお嬢の家に帰るみたいだね。しばらくはソコが私たちの拠点になりそうだ。

私はキモノお嬢の後ろを歩きながら、視線だけで周りを見渡す。

ふむ……黒服はコッチを見てないな……。私たちの真後ろに傷グラサンはいるけど、意識は向いてない。

「……幼女ちゃん……あんな感じでどースかね?」

小声で隣を歩く幼女ちゃんに話しかけてみれば、軽くグッと親指を立てて見せてきた。

「……よき働き」

彼女の袖口には、キラリと光るナイフが見える。

なるほどね。どーやら幼女ちゃんは、あのキモノお嬢の使ってたナイフがお望みだったらしい。

実はキモノお嬢の見ていない後ろで、幼女ちゃんに目配せされたんだよね。私はソレをキモノお嬢の隙を作れって意味だと判断した。

だから私は意味もなくパンケーキをねだったんだよ。

じゃなきゃあんなマネはせんよ。私たちにペットフード寄越してくるゲスに期待なんか一ミリもしとらんわ。

幼女ちゃんは反対側で、私と同じように行動するフリして、ナイフを袖口に隠したんだね。まぁ武器と呼ぶには心許ないけど、何もないよりマシかな?

問題は……本当にキモノお嬢は気づいてないのかって話なんだけど……どーだろなぁ〜。

少なくとも私は、幼女ちゃんの動きが分かんなかったけど……バケモンだしな〜。

「ふふ……」

あ、ダメかもしんない……。

――――――――――――――――――――――

またもや檻に入れられて移動。

トラックの荷台に乗せられてドナドナされてます。

でも今回は外の様子が見えるから、まだマシかな?

しかし、このクロックシティーとやら。至る所に歯車やら、よくわからん振子っぽいオブジェあんな。あれが全部、時計塔の鐘を鳴らす装置とかウソだろ……。

大掛かりすぎるんだよ。絶対に何個かは、街の観光名所の為に設置してない? そうなんだろ?

ほいで今は、なんか鋪装された山道を登ってる。

う〜ん、道は広めだから明らかに何らかの施設に繋がってそう。ていうかマフィアの本部があるねコレ。

分かってる分かってる。この世界の金持ちってのは、周りに民家のない山奥に、馬鹿みてぇなデカい家を建てるのが流行りなんだろ? 少なくとも豚貴族もそうだった。

そいで見えてきました和風ぽい門。周りは見渡す限り山……いや時計塔はしっかり見えるな。

ほぇ〜……

「いや、縮尺おかしくね? 距離感バグるわ」

十メートルくらいの高さがある、瓦で出来た門……なにこれ関所? 巨人でも住んでんの?

門の前には黒服サングラスが立ってる。マフィアってかヤクザが近いな。

門を車のまま通ったら、砂利の敷き詰められた運動場みたいな広場。向こうには平屋の屋敷が広がってる。

いや、遠いんだけど……。

「オマエらはこっちだ」

あ、ペットは別の建物ですか。

まぁ、いいや。とりあえずこの和風っぽい建物がしばらくの拠点になるんだ。

「領域畑でも作ろうかね……」

――――――――――――――――――――――

「はぁ、キッツいわ……」

俺はガキ二人をペット倉庫に入れて一息つく。

まったくお嬢にも困ったもんだ……。

お嬢はよくペットと称して、色んなモンを拾ってくるが、今回はまさかの人間の子供。口には出さないがイカれてやがる……。

まぁ、お嬢にとって、人間をペットにするのは珍しいことではない。なにか琴線に触れた奴を捕まえてくるのだ。

「いつもなら、魔物か腕に自信のある奴だったりするんだけどなあ」

そう、お嬢に気に入られるというのは、お嬢に逆らって強さを気に入られたヤツの事を言うのだ。

それが今回に限っては人間の子供……どう贔屓目に見ても戦いなど出来るはずもない。

いったいお嬢は、ガキ二人の何処に興味を持ったのか……。

「いやまぁ、普通のガキじゃねえのは確かか……」

タバコの煙を吐き出して、足で潰す。

ただのガキにしては落ち着き過ぎている。脅してみても逆に馬鹿にしてくる始末だ。

子供特有の怖い物知らず? いや違う。

お嬢の怖さを分かってる。むしろ頭はキレる方だ。

「どちらにせよ可哀想にな……」

あ、口に出した言葉で気づいた。

はぁ……たぶんコレだ……。俺がナメられてるんだ。アイツら俺の心情を把握してやがる……。

クソッ、可愛くねえガキどもだ。

まあでも、アイツらは知らねえんだ。

間違いなくお前らは……『可哀想』なんだよ。

お嬢に気に入られた時点でな……。

真夜中になってペット倉庫に向かう。どーせ逃げられないんだから、見張りなんて必要ないんだけどな。

まあ念の為だ。

倉庫に入ると、檻の中に布団が敷いてあるのが見えた。

「そういや、普通じゃねえんだったな……」

このガキどもは、何処からともなく物を取り出すことがある。布団だってそうだ。

こっちはそんな物、渡してない。

白い髪の少女と目が合う。

「よお嬢ちゃん、新しい新居はどうだ?」

「……ぬ?」

お嬢がシロと名付けたガキ。胡散臭い腹立つガキはノラとか付けられていた。

シロは話しかけたにも関わらず、無表情だ。

おそらく、口数は多い方じゃないんだろう。

逆に胡散臭いノラの方は割とお喋りだ。だが話してると非常にイラつく。何もない所から物を取り出しているのは多分、コッチだ。

確かに普通の子供ではない。

だが、お嬢的にはシロの方がお気に入りに見える。

「あ? ノラの方はもう寝てんのか。お前も早く寝ろよ」

「……む。分かった」

……なんか聞き分けがいいな……。いや、シロはこんなモンか? 隣のノラを見てみると、眠ってるようで布団が膨らんでいる。

案外寝相がいいな。ピクリとも動かねえ。

「……」

「……」

「……」

「……なにか?」

え? いるよな?

まさか布団が膨らんでるだけとかないよな?

「……寝顔をみるのはマナー違反」

檻に近寄るとシロがそんな事を言ってくる。

「……静止せよ」

そんなはずはない。首輪を付けているんだから逃げられるはずがない。

……とか思ったが。明らかにシロが焦ってる。

え? マジでいるよな?

「……」

「……」

ノラが眠っているであろう布団に手を掛ける。

「……あ〜あ」

シロの諦めたような言葉に、思わず視線を向けてしまった。

「ッ!!」

ゾッと鳥肌が立つ。

シロは笑っていた。

無表情だと思っていたその顔には、他人を馬鹿にするような……どちらかと言えばノラが浮かべるような怪しい笑みを浮かべている。

「……めくって……みればぁ?」

「チッ!」

衝動的に舌打ちをして布団をめくる。

いないはずがない……シロに担がれているだけだ。

「……」

バッと視線を向けて……息を飲む。

「ふっ、なんだよ脅かすなよ」

ノラの代わりに野菜が転がってんじゃねえかよ……。

「ファァーーーーアアアアアアアアアアアアア“ア“ア“ア“ア“!?!?!?!?!?!?」