軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

ペットのシロと野良

檻に入れられたまま、飛行船の格納庫っぽい場所に収納され、そのままフライト。

いや、完全に貨物扱いやん。人権とはなんぞや?

格納庫に運び入れた係員さんも、檻の中の私たちが目に入ってる癖に完全に無視しおったわ。

まぁ自家用の飛行船とか言ってたから、コイツらもマフィアの一味か、下請けでマフィアに逆らえないかのどっちかだろ?

まぁいい、ちょっと位置は違うとはいえ、このまま飛行船に乗ってりゃ目的地の王都に近づくだろうし。

王領クロックシティとか言ってたな。恐らくだけど『王都』ってのは王領の都心部って扱いなんじゃねぇかな? 王都が独立してあるんじゃなくて、たくさん都市がある中の一つって感じだと思う。何々領の王都みたいな? いやまぁ予想なんだけどね。

「エサの時間よぉ……」

「お、お嬢! わざわざこんな薄汚え場所に来たんですかい?」

檻の置かれてる荷物置き場で横になってたら、キモノお嬢がやって来やがった。相変わらずの張り付いた笑顔で、不気味な糸目を向けてくる。

つか傷グラサンよぉ。その薄汚え場所に子供押し込んでるのは何処のどいつだよ。

「どーもご主人様。お茶も出せずにスンマせんねぇ」

「ふふ、期待してないわ。ペットは気にしなくてもいいのよ」

「はは、そりゃ寛大なご配慮。ちなみに扱いとしては愛玩ですかね?」

ペットに求める役割ってのは可愛がる為の愛玩が多いよね。猫とかがそう。

それ以外だと乗り物の為の馬とか、猟犬ってのがパッと思い浮かぶ。キモノお嬢が私たちに望んでるのはどれかな?

「そうねぇ、白いほうは見た目も悪くないし毛色も珍しいわ。愛玩でもいいけど……オマエはどうかしら?」

うわっ! なんかゾクっとした。

これはアレか? オマエは別に処分してもいいんだけどって言いたいのか。

「ん〜……ちなみに愛玩以外だと、どんな就職先が用意されてますかね?」

「……知りたい?」

「愛玩で!」

アカン! アカン! エマージェンシー!

糸目の奥の瞳が狂気を宿してたわ! 絶対嗜虐趣味あるよこのキモノお嬢。

『いい声で鳴きなさい』とか言ってカナリア扱いもあり得る。すっごく嫌な予感しかしねぇ!

「きゅーん! きゅーん!」

可愛がってぇ! ほらほら可愛いでしょ!

愛玩にピッタリな美少女愛玩ペットですよ。

「……優雅じゃないわね」

おぅふっ……顔は笑ってるけど虫を見るような雰囲気を感じる。どうやら優雅じゃないものがお嫌いのようですね。

「そうそう、エサの時間よ。ペットのお世話はご主人様がしっかりとやらないとねぇ?」

それ、後々にお母さんがお世話する事になるよね? いやそうであれ! 毎回メシのたびにこのキモノお嬢と顔を合わせるなんてストレスでハゲるわ。

「たくさん食べなさい」

そう言ってキモノお嬢は笑みを深くして、袋を取り出す。その顔は笑顔にも関わらず、酷く邪悪なものに見えた。

「お嬢、それはいくらなんでも……」

「んん?」

「い、いや、なんでもありやせん」

傷グラサン弱! キモノお嬢にビビって下を向きやがった。キモノお嬢は袋を傾けて、ザラザラと檻のスキマから中身をぶちまける。コロコロと檻に散らばる丸い玉。

ん〜……なるほどね。

これペットフードじゃね?

はいはい、分かった。

とことん人間扱いする気がないんだな。

おそらく私たちの反応をみて楽しんでるのもあるんだろうね。

「ほら……食べなさいよ」

「……」

「……」

ふ〜ん。

「食べないの?」

首を捻って楽しそうに囁きかけるキモノお嬢。

そして檻に向かって手を伸ばそうとしてきた。

「あ〜! そうでしたそうでした! エサならさっきあげたばかりなんですよ!」

「……」

檻に手が届くか届かないかの所で、傷グラサンが陽気に声を上げた。

「……」

「……」

糸目の奥の視線が傷グラサンに移ったのが分かった。ダラダラと冷や汗をかく傷グラサン。

キモノお嬢は檻に伸ばしていた手を、ゆっくりと傷グラサンに向けて肩に手を置いた。

「……」

「ヒッ……お、お嬢……」

「も〜……私が最初にエサやりしたかったのに。……ダメじゃない」

「……す、すいやせん」

ボリ……ボリ……

「まぁいいわ。エサやりは今度からアンタに任せるから……」

ボリ……ボリ……

「あ〜……獣臭え……」

「……うん、でも」

「そうね。食えねぇこたぁねぇな?」

う〜ん、これノド乾くな。あと臭え。

「へぇ……」

私と幼女ちゃんは檻に散らばるペットフードをボリボリと食べる。

糸目をコチラに向けるキモノお嬢と、目を丸くする傷グラサン。どーしたよ? その顔ってどんな感情なん?

「あ、メシの準備ご苦労様ッス。また楽しみにしてますよぉ」

「面白いじゃない……」

そりゃよかったね。

結局このキモノお嬢は、とことんペット扱いをして私たちの反応を楽しんでるんだ。

「次は水も用意しといて下さいねぇ」

ニィイイと笑ってペットフードをひとつまみ。

ならばこっちも不敵に笑ってやるのが一番いい。

オマエが望んでるのは、私たちが悔しがったり怒ったりする事だろ? でも残念ながら人間扱いしてないのは元から分かってるんだよ。

「ふふ……」

ほらね。

笑ってはいるけど不機嫌になってるのが分かるよ。

オマエ、格下だと思ってるヤツに反抗されるの嫌いだろ?

別にペットフード食ったから何やねん。美味しく無いけど食えるよ。……なめんなよ。

「いいわ……そうねぇ。オマエ」

そう言って扇子を幼女ちゃんに向ける。ビクリと震える幼女ちゃん。

「オマエは『シロ』よ」

え? あ、これペットの名前か。

「オマエは……『ノラ』ね」

そう言って今度は私に向ける。

うん、ネーミングセンスはないようだね。口には出さんけど。

「また、明日来るわ」

そう言ってキモノお嬢は出て行った。

「……は〜〜〜……」

なんか傷グラサンがなげぇため息吐いて、勢いよく椅子に座り込んだ。

お、どったん?

「挑発すんなよ……こっちにまで被害来たらどーすんだよ」

いや、別にどーもせんけど?

がんばってね?