軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

もうボッチとは言わせない

「……あ、どーもどーも」

私です! どうやらOL女と副店長に見つかっちゃったようだね。あれ? どったの副店長? 顔色悪いじゃん。

「あ、幼女ちゃん。そっち下ろして」

「……うぇい」

幼女ちゃんと一緒に運んでいたテーブルをソッと下ろして汗を拭う。いや、たいした大きさじゃないけど子供にゃ結構重いのよ。

「あ、アンタ達どうやって中に入ったのよ」

「まぁまぁそんな事いいじゃないっスかぁ」

どうせ気にしてる場合じゃないんでしょ? だからそんなバケモノを見る様な眼で見るのはやめようね。

まぁ説明しちゃうと幼女ちゃんに開けて貰った。

この大金庫とやらねぇ、探索の時に発見はしてたんだけど私の【隙間に入り込む能力】じゃ無理だったんだよ。扉の隙間がビッチリくっついてたせいで私が隙間と認識できなかったんだ。

意外に通れない場所ってのは多いのよ。

「……店長、子供を大金庫に入れるのは感心しませんな。見方によっては監禁と捉えかねません」

「違うわよ! 入り込んでたの! 私が招き入れた訳じゃないわ!」

「……」

「まって! 無言で首を振るのをやめなさい! 本当だから! おかしいのは私じゃないの! この子達が普通じゃないの! 忍び込んだ泥棒なのよ!」

私たちを指差して叫んでるけど、信用はして貰えないみたいだね。つか副店長と和解したん? 幼女ちゃんの話によると、ネックレスには呪いに見える魔術が掛かってるとかなんとか……やっぱ副店長はカギよりそっち目的?

ま、ええか。副店長がOL女と仲良くなろうが私に関係ないし。それよりも――

「泥棒なんて酷い事いいますねぇ」

「本当の事じゃない。そのテーブルを持ち出そうとしてたの分かってるんだから」

「嫌だなぁ。これは『前金』ッスよぉ」

「前金?」

たった今運んでいたテーブルをバンバン叩きながら言ってやると怪訝な顔をした。

「そ、前金。その様子からすると……来たんでしょ? サーカス団がさぁ」

「あ、アンタやっぱり知ってたのね」

「んひひ、買っときゃ良かったでしょ? ……情報」

あ、サーカス団ってのはピエロ泥棒たちの事ね。

まぁサーカス団というには全員がピエロでバランス悪ぃかな!

「キミたちがどうやって忍び込んだかは置いておいて。警察が来るまでここに隠れるわよ! 覚悟を決めなさい!」

「んふふふ、警察が来るまでどれくらいッスかね?」

「二時間くらいよ……。正直厳しいけど、それまでは――」

「そーこーでっ!」

前金の話になるんすわ。

「二時間……私たちが時間を稼ぎまっせ? その報酬にこの古びたテーブルを前金として頂きたいんだよねぇ」

「……アンタいったい何を言ってるの? いくら異能があるからって相手は犯罪者よ! 子供だからといって見逃してくれないわ」

どーだっていいんだよそんなこたぁ。お前私がアイツらの存在知ってたの忘れてねえか?

その気になれば見つからずに逃げるなんて簡単なんだよ。

「ふむ、商人ってのはやっぱり難しいッスね。売りたいものを買ってもらうのがこんなに大変なんてねぇ……」

交渉すらマトモに出来ないのは子供の信用のなさかもね。ありきたりな事言えば信用が足りない。

だったら子供らしくいくか。

「このテーブル欲しいんだよね。くんない?」

「……」

おねだりだ。

「どうせさぁ。ピエロ泥棒がここにやってきたら全部奪われるんでしょ? だったらコレちょうだい?」

「…………好きにすれば……」

なんか諦めたように言われたけど、言質は取ったからね?

「オーケーオーケー! はい、じゃあコレは――【私の物】ね」

「なんなのよいったい……意味が分かんない。どうしてそのテーブルが欲しいのよ?」

「う〜ん、逆に聞くけど……何スかこれ?」

「知らないわよ! 前の店長が置いていったんでしょ!」

うん、自分でも変な事言ってるのは分かる。欲しがってんのに何かわかってないなんてメチャクチャたもんね。

でもね……マジでこれなんなの?

「それは、ダンジョンから出土したテーブルですな。価値はさほどありませんが、珍しい物ではあるので大金庫に先代が保管してたのです」

答えてくれたのは副店長の方だった。

ふ〜ん、価値はそんなにないんだ……。

実は幼女ちゃんにも見てもらったんだけど、幼女ちゃん視点でも只の古びたテーブルって事なんだ。つまり呪いすら視認できる彼女を以てしても、不思議な力は備わってないってことになるんだけど……ね。

「ほんじゃあ……頂きます」

私がテーブルに手をかざすと、溶けるように大金庫の床に吸い込まれた。

「んふっ……んふふふふふふ!」

そうか、やっぱりねぇ!

このテーブルさぁ……『収穫物』だわ。

宝石店に張り巡らせた領域畑に力が宿るのを感じる。

ヤンキー神が言ってたよね。初心者の内は感情を集めるのが良いんじゃないかってさ。

つまりあるんだよ。他にもエネルギーを収穫できる物が感情以外にもね。

「それがコレって訳ね〜、あぁ急に笑い出して怖がらせちゃったッスね。こっちの話だから」

不気味そうに見ているOL女に、安心させる様にニッコリと笑ってやると、さらに青い顔をする。酷くない?

宝石店を領域畑にした時、大金庫もその範囲に入った訳なんだけどさ。その時に中で妙な感覚がしたんだ。

けど確認しようにも私じゃ大金庫に入れなかった。

だから幼女ちゃんを連れてきて開けて貰った訳なんだけど、テーブルを見た瞬間に気づいたね。コイツを収穫物として取り込めばかなりのエネルギーになるってさ。

でもできなかった。感覚としては【私の物】じゃない。所有権がないと言えばいいのかな。そんな感じ。

だから前金としてひっそりと持ち去って調べようと思ってたんだ。でもOL女に見つかったならちょうどいい。

そもそも私に所有権がないなら、誰が所有者なのか?

大金庫にあるんならOL女の持ち物って事でいいだろ。

そして私はOL女からテーブルを正式に貰った。

所有権が私に移ったからこそ、収穫物としてテーブルを取り込めたんだ。

「いや〜、感情をチマチマ集めるのとはレベルがちがうねぇ。まぁ、これは収穫しちゃったら無くなる物だから安定供給は無理だとして、他にも探してみれば似たような品物あるかな?」

「なによ……いきなりブツブツ言い出して……。テーブルはどこにやったのよ。……怖いわよ……アナタ」

「あぁ、申し訳ないッス。じゃあ前金は頂いたので勝手に支払いはするッスよ。二時間コースで承りま〜す!」

まあ、ぶっちゃけ? 警察が来るまで時間稼ぎするって恩着せがましく言ってるけど、本音は私の実験だ。コレから先も領域畑は作らなきゃいけないからね。

どれだけの事ができるかピエロ泥棒を使って確認はするつもりだったんだよ。

思ったよりテーブルのエネルギーが多くて驚いたけど。……マジでなんなんコレ?

「ちょ! やめなさい! いいから警察が来るまで大人しくしておくのよ!」

「幼女ちゃ〜ん、やっちゃって〜」

「……ヨロコンデー」

どこでそんな言葉覚えてきた?

幼女ちゃんが大金庫の扉に触れると、ゴリゴリと扉が回転して閉まり始める。

私と幼女ちゃんは大金庫からピョンと外に出て、OL女にニィイイと笑いかける。

「それじゃあお世話になりました。機会があれば又、どこかで」

「……ました」

手を伸ばして私達を大金庫に引き入れようとするOL女の顔は、ガチャンという扉の向こうに消えていった。

「んふふ、そんじゃあ行こうか幼女ちゃん」

「……これから何するの?」

あぁ、そうだね。説明してなかったね。

「ゲームだよ」

「……ゲーム?」

「そそそ」

このジャンルのゲームをするのは初めてだから楽しみだね!

迫り来るピエロ泥棒から時間を稼ぐから『タワーディフェンス』? いやいや……

「ピエロ泥棒達プレイヤーによる『非対称型脱出ホラー』」

いや〜、一人プレイに慣れた私がついにコレをやるとはねぇ〜。

「マルチプレイって憧れるよね」

プレイヤーの皆さん。

頑張りましょうね。