軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

ゲームリンク

どーも私です。

泥棒さんから収穫した感情エネルギーを受け取りました。なかなか『恐怖』という名の作物を育てるのがお上手な泥棒さんでした。

彼には、私の畑の名誉農民の称号を授けようと思います。

「よしよし、この感情エネルギーを使って領域畑を強化していくぞ!」

んで? ……結局の所、畑の強化とはなんぞや?

……

…………

………………『私の領域』に近づける! そうだそうだ。

ヤンキー神が言ってたわ。このエネルギーを領域畑に使って万能の領域に近づけるんだよ。量さえあれば、それこそ私の領域みたいに何でも出来るようになるんだ!

領域畑の中なら私は神になれる!

いやぁ〜楽しみだなぁ……。

「うん……量さえあればな……」

そう……莫大なエネルギーが必要なんすわ……。

領域畑ってのはそれを収穫して、なおかつ利用しやすい場所ってことなんだ。

で、このエネルギーを領域畑に注ぎ込むでしょ?

「ははは、何も変わらねぇぜ!」

いや、ほんの僅か……すこ〜しだけ領域畑に対する私の侵食度的なものが増えるみたいだけど……。

「……ぶっちゃけ誤差ですな」

これ、効果が目に見えて現れるまで何万人の感情エネルギーを収穫しなきゃならんのよ……。しかもそれをやり遂げたとしても万能には程遠いってね。

「はい、やってらんねぇ!」

まあアレよ。この領域畑ってのは超越者としての力を覚える為の勉強みたいなもんだから……。

チュートリアルよチュートリアル。

それに感情エネルギーを集めるのが無駄という訳じゃない。そもそも畑に肥料を撒くかのような行為が果てしないだけだ。

「言っちゃえば、領域畑のレベルアップに膨大な経験値を必要とするだけ……」

ならばエネルギー単体で、現象を起こすだけなら問題ない。

この感情エネルギーは、超越者の力に近い。量さえあれば、できないことはほとんどないエネルギーのはずだ。

私に分かりやすく噛み砕くなら、感情エネルギーを畑のレベルアップに使うんじゃなくて、MPとして魔法を行使するってこと。

だから半分だ! 半分だけ畑のレベルアップに使う。

「ふふん、そうと決まれば残りの半分はやってくるであろう泥棒達のために使おうかね」

ん〜どうしよ……。試しに領域畑に『落とし穴』でも作ってみる?

「……んげぇっ! 持ってるエネルギーで作れる落とし穴が……二個……」

だから私の持つ力ってなんでこんなに効率が悪いんだよ! ヤンキー神がコツコツ落とし穴作ったりしてるわけねぇだろがよぉ!

いや、分かってるよ。ヤンキー神は元々の力が大きいから、最初から莫大なエネルギーを使えるんだろ。私の超越者の力はほとんど封印されてるから、こんなチマチマした行動が必要なんだ。

「とはいえ……さすがに落とし穴二個しか作れないエネルギーじゃなぁ……何もできん……」

人ひとりから得られた感情って考えれば破格なのかもしれんけどさ……。

いや、待てよ? これって超越者のエネルギーってことは融通が利くんじゃない?

ちょっと探って調べてみるか。

……

…………

………………

「んへへへ……ビンゴォ」

――――――――――――――――――――――

「ほっと、これで全部かな? まぁこんなもんだろ」

私は起動していたジェットブーツを解除して、絵画の前に設置されたベンチに腰掛ける。

何をやってたのかって聞かれると、宝石店の中をジェットブーツで巡ってたんだよ。

「んじゃあ行くよー! 【ゲームリンク】監視カメラ」

ポンッ!

私の広げた手のひらからモニターが現れる。

映し出されるのは宝石店に能力で設置していた監視カメラの映像……。

それが――

ポンッ! ポンッ! ポポポポポポポポンッ!

私の周りには幾つもの宝石店の内部を映している監視カメラの映像が所狭しと並んでいた。

「いぇ〜い。効率的な感情エネルギーの運用みっけた……」

これは私の最新の能力、監視カメラの能力だね。

でも監視カメラって五個しか設置できないの覚えてる? そう、本当ならお金を使って増やさなきゃいけなかった能力だよね。

でも私の周りに浮かぶモニターの数は三十個ほど……。別にお金を使って増やした訳じゃないよ。

じゃ何か? 感情エネルギーを使って監視カメラの能力に注ぎ込んだとか? ……違うんだよねぇ。

感情エネルギーを監視カメラの能力に注ぎ込んでも、これだけの数を拡張するエネルギーにはとても届かない。むしろ一個すら難しいね。

これは領域畑と監視カメラの能力を『接続』したんだ。

『領域畑内においてのみ、監視カメラを増やす』

そう、効率的な感情エネルギーの運用とは、ゲームの能力と領域畑を接続し運用すること。

そもそも、感情エネルギーもゲーム能力も元は同じ超越者の力なんだから親和性が高いんだよ。

異能力として、持ってもいない落とし穴を作るより、持ってる能力とリンクさせて運用すればコストが安いんだ。もともと私が出来る事だからね。それをブーストさせるのに使ったんだ。

「そして領域で得られた感情エネルギーは、その領域内に限定して使うと効率がいい!」

元は領域で採れたエネルギーだからね。地産地消ってやつよ。

「さぁらに〜、【ゲームリンク】 水滅玉(すいめつだま) !」

モニターの一つに映っていた彫刻がいきなり涙を流す。

『領域畑内においてのみ、 妖球(あやかしだま) の効果を遠隔で発動できる』

本来なら 妖球(あやかしだま) の効果って私の身体を起点に作動してるんだ。でも領域畑の中でのみ、見えている範囲なら発動できるようにした。

モニター越しでもな!

「これで、いつでも好きな時に、泣く彫刻のイベントを起こす事ができるってことよ!」

『領域内でのみ』ってのが制限になってて効率も増してんのよね。領域畑って私から離れると維持ができない。

ずっと維持ができないからこそ制限の効果が増してるんだ。

ゲームの能力ってのは私本体に掛かる異能に対して、領域畑は領域自体に掛かる異能だからね。感情エネルギーを領域に限定するってのは、使い捨てのゲームクラッシュに近いんだよ。

ピコンッ……

「なんせ私が宝石店からいなくなる時が、この領域畑の終わりだからね」

ピコンッ……

まぁ、なんにせよ。これで泥棒達を恐怖のドン底に叩き落としてやるぜ!

ピコン……

「ピコンピコンうるせぇな……分かってるから」

せっかく気持ちよくなってたのに……。

浮かべたモニターが私の前でめっちゃ主張してくる。

「え〜っと? あぁなんだ。マキヒゲ副店長じゃん」

こんばんは、今日も見回りお疲れ様です。結構な頻度で見回りやってんのよこのオッサン。

一回襲われて眠らされたクセにようやるわ。てかなんで泥棒が徘徊してるの分かってるのに、一人でうろつくかね?

まぁ、私に関係ないか。何考えてるか分からんオッサンは、豚貴族だけでお腹いっぱいだわ。

「……」

あとさぁ……

「アンタの後ろをコソコソ付いてきてんのって、お友達ですかね?」

うん……副店長と同じ制服着てるし知り合いなんだよね?

懐から何か取り出そうとしてるけど知り合いなんだよね? え? 出す? ナイフ出しちゃう?

あ、ちげーな。これスプレーだ。

えー……それを副店長のいるフロアに噴射すんのね。

そして副店長はフラフラバタンキューってな。

はい、眠らされましたわ。

「あ〜……そゆこと」

『解析が終わるまで商品に手を出すなよ』

ピエロ仮面泥棒が言ってた言葉だよ。

手を出して警戒されるリスクを分かっていたのに、この店には泥棒が入った事になってたんだよ……。

つまりさ……

「泥棒って二種類いたりします?」

副店長を眠らせた男は、ニヤリと笑いながら副店長に近寄る。

ようよう兄ちゃんご機嫌だね。

キミの制服って副店長と似てるけどさ、従業員だよなオマエ。

「思っクソ内部犯じゃねぇか!」