軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

目先の利益に囚われない……それが農家!

どーも私です。

ただいま頑張って『恐怖』の感情を収穫中です。もしかして私は農家に向いているのかもしれません。

私の驚かしていたピエロ仮面は、ガタガタと震えながら壁際まで後退している。

ん〜……、一応彫刻から流している涙は消しておくか? もうちょっとコイツから搾るなら、最後まで『気のせい』という可能性を残しておくのがいいもんね。

『おい、こんな所で何サボってる……』

『……どうした? 何かあったのか?』

とか思ってたら、どうやらお仲間が探しにきたみたいだね。ふむ、二人か……。今日は三人組だったんだね。

『あぁ……あああ……あそこに……』

さっきまで私が驚かしていたビビり仮面は、仲間のピエロ仮面達に縋り付いて彫像を指差す。

『…………ほう、立派な彫刻だな』

『……この彫刻がどうした? 盗みたいなら決行日まで我慢するんだな』

ざんねぇ〜ん……もう涙は消滅させて頂きましたぁ。

『え? あれ……さっきまで……なんで……』

ビビり仮面は、先程まで涙を流していたはずの彫刻を恐る恐るみて、水滴の跡すら残っていない事に動揺する。そしてどこかホッとしているようだ。

うへへ、お前いい反応するじゃん。

わかるよぉ〜、『もしかしてやっぱり自分の見間違いだったんじゃないか?』って説が出てきたんだもんね。

アンタとしてはそっちの方が胃に優しいからね。ソッチを信じたいよね。

「でもダメだよぉ……キミには恐怖という名の作物を育てるお仕事があるからね」

ほら仕事に戻ろうか。

あ、お仲間さん達も一緒に恐怖……育てませんか?

笑いの絶えない職場ですよ。主に私のな……。

『はぁ……しっかりしろよ。ちゃんと今日の分の解析は済ませてきたんだろうな?』

『あ、あぁ……』

『いったい何があったんだ?』

『……い、いや……気のせいだったようだ。少し疲れて……いたのかもしれない……』

『そうか……無理するなよ。あと彫刻が気に入ったのかもしれないが、決行日までは手を出すな』

『大金庫までの解析はもうすぐだ』

『そうだ。解析が済み次第、全員で一気に持ち出す手筈だからな。総勢十人で根こそぎ奪うぞ。それまで警戒されるリスクを冒すなよ』

『あぁ……大丈夫だ……すまない』

へぇ……

「いい事言うじゃん」

なるほど、根こそぎ奪うまで警戒されないように……かぁ。ふむふむ、勉強になるよ。参考にさせてもらおうかな?

「本当なら、コイツら三人ともビビらせてやろうと思ってたんだけどねぇ」

やめた。

コイツらの言う決行日? とやらに全員がやってくるみたいだからさ。

「どうせなら全員、農家にしてやろうぜ……」

今日、この三人全員に対して幽霊騒動を起こしちゃったら、警戒されて来なくなっちゃうかもしれない。

それくらいなら、ここで見逃してお友達をたくさん連れてきてもらった方がいいよね!

「でもまぁ……ビビり仮面だけは最後にビビらせとくか」

三人のうち一人だけなら問題ないやろ! つかお前は反応が楽しいからサービスだ!

「ってことで、 闇滅玉(あんめつだま) ! はい、お化粧ヌリヌリ……」

手に持った【闇】? を顔に塗りたくる。

よ〜し、目の部分にパンダみたいに闇をくっつけてぇ……口も同じようにする。頬もコケたように見せる為、闇を追加しとこうかな?

「最後に顔全体に闇を纏わせて、透過度30%くらいかな? ……完成!」

鏡がないから上手く出来てるか分からないけど、こんなもんかな?

―――――――――――――――――――――――

仮面の泥棒は平静を装いながらも、仲間の二人に大丈夫だと強がる。言える訳がない……幽霊が怖いなどと……。

「あぁ……分かっている。分かってるさ。はは、こんな重いもの盗むくらいなら宝石の一つでも多く盗むよ」

「まあその通りだな。お前がすごい剣幕で彫刻を指差したから、何事かと思ったぜ。よほどのお宝なんじゃないかってな」

「くはは、コイツに彫刻の価値なんて分かる訳ないだろ」

「そりゃそうだ」

愛想笑いのような不器用な表情を浮かべて、件の仮面泥棒は取り繕う。

「……もう帰るんだろ?」

「そうだな。解析が終わったなら長居は無用だ。ずからるぞ」

その言葉に安心を覚える。この宝石店にこれ以上居たくない。

普段はなんとも思わない仲間の軽口が、妙に頼もしく感じる。一人で居た時は異界にでも迷い込んだかのような心細さに発狂しそうだった。

だが、仲間と合流した今なら嫌な幻覚を見ることもないだろう。

そう、笑いながら、心強い仲間に視線をやる。

ゾワリ……

ゾワリ……

だが、悪夢が現実を侵食する。

笑う仲間達の背後……。

通路が交差する宝石店の角、その暗闇が広がる床付近から……。

闇に溶け込んだ、暗く不気味な顔がゆっくりと顔を覗かせた……。

覗き込むように……コチラを窺うように……。

その顔は輪郭だけの異形で、両の瞳はポッカリと何処までも暗い闇が広がっており、感情を感じさせない。

怨嗟を吐き出しそうな口は、口というより暗い穴とでもいうような深淵であった。

何も映し出さない、暗い瞳がコチラを捉えた瞬間……。

意識は途切れた……。

――――――――――――――――――――――

『お、おい! どうした!』

『意識を失っているだけだな……』

『様子がおかしいと思ったら調子が悪かったのかよ……』

『潜入中に居眠りとか大物が過ぎる……』

そう言って二人組はビビり仮面を担いで去っていった。

「キャハハハハ! やっぱり農家に向いてるよオマエッ!」

感情エネルギーの収穫完了で〜す!

いや楽しいなオイ。

まさか失神までしてくれるなんて農家冥利に尽きますわ。

「ではでは、収穫したエネルギーはどう使おうかな?」

う〜ん、これ私のゲームリソースとはまた別のエネルギーみたいだね。どちらかと言えば、私の大元の力、超越者としてのエネルギーに近いか?

まぁ、ゲームの能力も本を正せば超越者の力で出来てるけどね。

「ま、この感情エネルギーを使って色々やってみようかね?」