軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

伝え忘れてた情報

「さて……どうしたもんかな」

まぁほっといても良いけど、やさしい私としては副店長を助けてあげたいと思うのよ……。

だって危ないでしょ? 泥棒が迫ってるんだよ!

だから女神のように美しく清らかな私は彼を救おうじゃないか!

「ところで泥棒ってことは幽霊見ても騒ぎにはできんよなぁ?」

ねぇ? そうだろ?

どこで幽霊見たか聞かれて『泥棒中です』とはならんやろ。そんなんタダのイカれ野郎じゃん。

「いやいや、ついでだよ?」

副店長を助けるついでに、ちょっと収穫させて貰おうかなと切実に思ってるだけだよ?

やだなぁ、私が副店長の命なんて毛ほども気にしてないとでも?

「ということで、今度はあの泥棒職員をビビらせたいと思いま〜す」

そうと決まれば、手っ取り早く泥棒の後ろに回り込もうかね?

お、いるいる。

えーっと、今度はどんな風に驚かそうかな?

さっきみたいに顔に闇をくっつけて暗闇から覗き込んでみる? それとも視界の端に映る美少女がいいかな?

泥棒職員はソロリソロリと移動して、倒れている副店長の近くにあるショーケースに手を伸ばそうとしている。

なるほど、そこに入ってる宝石を盗もうとしてるんだね。

よし決めた! 妖怪袖引き作戦で行こう!

後ろから袖を引いてコッチを振り向いたら顔見せ。

そして隙間に消えるって感じでいこう!

スー……と足音が鳴らないようにジェットブーツで泥棒職員に近づく……。

そして……袖を掴もうとした瞬間……。

「「ふぁっ!?」」

私が掴もうとしていた袖が、ヌッと伸びてきた別の腕にガッシリと掴まれる。

え? なになに?

私まだ掴んでませんよ! 思わず泥棒職員と一緒に変な声でちゃったわ。

「……やっと捕まえましたな」

「え? え? うわぁっ!」

副店長が泥棒職員の腕を捻りあげ、そのまま地面に押し倒す。

「……やはりキミでしたか」

「な、なんで!」

副店長は口から小さな玉をペッと吐き出すと、床に顔を押さえつけられている泥棒職員の前に落とす。

「何度も同じ手に掛かると思わない事ですな」

へ〜、それで睡眠ガスを防いでたんだ。

そして泥棒職員が近づいてきた所を取り押さえると

……。

やるじゃん……このオッサン……。

「さぁ、言い逃れはできませんぞ」

うん、私……どうしよう……。

この袖を引くために伸ばされた手の行方をどうしたらいい?

ん〜はい! 撤収!

幸い私の姿は見えていないから無かったことににしよう!

スキマに入り込んで、成り行きを見守ろう。

そうか……副店長のオッサンは誰が泥棒か、何となく察してたって訳ね。

『ふ、副店長! 見逃して下さい!』

泥棒職員はこの期に及んでそんな事のたまっとる。

馬鹿だねぇ〜、決定的な場面見られてんのにそんな事言うなんて。

私ならこんなブザマな姿をさらさないね。言葉なんて要らないよ。潔く土下座だ。

まぁなんにせよ、マキヒゲ副店長が見逃すほど馬鹿とは思えない。

『……いいでしょう』

馬鹿だったわ! ふぇええ?

なんで? マジで何考えてんのか分かんない! 怖いよオマエ!

『えっ? ほ、本当ですか?』

ほら! 泥棒職員も意外過ぎてビックリしとるやん。

『えぇ、えぇ許しましょう。盗んだ宝石を返すのなら許しましょう』

なんだ? 何考えてんだコイツ……。

それとも聖人のような心の持ち主とか言わんよな。

『その代わり』

副店長は泥棒職員の胸ぐらを掴んで立たせる。そしてネックレスをポケットから取り出す。

副店長の表情をみて、泥棒職員が顔色を悪くする。

『店長の持つネックレスをバレずにすり替えてきなさい……得意なのでしょう? 見つからずにコソコソするのが……』

……お、おう。結局オマエ何がしたいんや?

少なくとも聖人じゃないってことね。

まぁ、副店長が何を企んでるのか知らんけど、私には関係ない。

「いや、この情報ってOL女に売れるか?」

――――――――――――――――――――――

「入るわよ」

「うぃ〜ッス。お疲れ様で〜す」

「……うぃす」

今日も今日とて幼女ちゃんの呪い解除タイム。あぁアレから数日たったよ。仮面泥棒は来てない。

「ところで豚貴族の領地ってどうなりましたかね?」

しばらくこの宝石店にいるけど、そろそろお暇したいんですがね。

「ええ、一応候補は絞ってきたわ」

そう言ってOL女はリストを見せてくる。すんません。私文字読めないんで、幼女ちゃんに渡してもらっていいですかね?

「……たぶん、キミ達の探している貴族の領地は、領主の名前を隠している場所だと睨んでいるわ。そして王都から直通、そして三日以上……国内に限定した場合、十二カ所まで絞った……」

「ふむぅ……十二カ所ッスかぁ」

流石に範囲が広すぎる。

「ハッキリ言って貰った情報から推察するの……限界よ。もうヒントがないなら、これ以上は少なくならないからよろしくね」

「はいはい。了解ッスわ」

まぁ、仕方ない。むしろ少ない情報でこれだけ調べてくれたんだから文句もないよ。

なにしろ私は情報を持ってないし、幼女ちゃんもこれ以上、何も知らない。だから……

「あれ?」

情報……あったかも…………そもそも、私ってここまで何できた?

しくったな……。私は情報持ってないと思って、考えるのやめてたわ……。私は数えてたじゃないか。

「すんません。情報あと一つありましたわ……」

「ちゃんとした情報なんでしょうね?」

「五日ッス……」

「…………?」

そうだ。私は数えてた。

「豚貴族の領地から、この近くまで飛行船で五日ッス」

この世界に来て二度目の飛行船の旅。そしてトレイターの擬態能力で幼女ちゃんに化ける日数管理の為に……私は豚貴族の領地からの日数を数えていた。

「早く言いなさいよ……」

「すんません。ウッカリしてましたわ」

私は何も知らないって言う先入観だね。

OL女は地図を取り出して、コンパスのような物を紙に刺すとグルリと円を書く。

「三カ所……そのうち一カ所は空路の安全が確保されていない……」

「……どっすかね?」

OL女は鼻で息を吐くと、パイプ端末から地図を出す。

「二カ所ね。キミのパイプ端末に送っておくから確認して。そして二カ所ともこれ以上、貴族でもない限り探りようがないわね」

「ふむ、この近くから飛行船は出てますかね?」

「出てないわ。たぶんあなた達、個人所有の飛行船でやって来たのね。普通に行くなら王都を経由するのが一番早いわ」

なるほどなるほど。二カ所ね。大分絞られたわ。

あとは貴族しか情報が探れない領域と……どちらにせよ王都に行くしかないか……。そうと決まれば――

「よし! 幼女ちゃん、出るよ!」

「……承知」

「そう……行くのね」

「お世話になったッスね」

今夜にでもココを立とうと思ってね。早い方がいいでしょ。むしろ長居しすぎたわ。遠くに逃げないとハリウッドメガネが探し当てるかもしれん。

まぁ結構稼がせて貰ったけど、最後にあわよくばもう一稼ぎさせて貰おうかな?

「ところで姉ちゃんさ……ネックレス持ってるよね?」

「…………それがどうしたの?」

「ソレ、狙われてまっせ」