作品タイトル不明
対峙1
想定外のことは起こり得る・・・どんな時でも。
エリックのことでさえ、俺には想定できてなかったってのに。
ドラゴンの豹変なんざ読めるはずもねぇ。
執拗なまでに目線でジーナ目の敵にしていると見せかけ、その実クライフの隙を探り、騙し殺すつもりだったとは。
幸いなことに、クライフはこれを防いだ。
駆け出しだったころと比べて、アイツは随分と慎重になった。そのおかげだろう。
昔は今のアンナ顔負けぐらいに前に出てたんだけどな。
アンナが入った頃から少しずつ、エリックとフェリシアを受け入れる頃にはより、守ることを重視していった。
それが回りまわって自身を救ってるんだから正解だったんだろう。
直上からのドラゴンブレスをよくもまぁ盾1つで防ぐもんだ。
そんな関心の後ろで、水を差すような魔力反応に気付く。
半分程ズレたこの空間でも、そのことに気付けたのは取り囲まれた経験か。
違和感はあったが、砲竜の砲撃反応に他ならない。
そういえば壁際に1匹。討ち漏らしたのが居たはずだ。
まさかそこまで狙いすました行動だとは、どこまでも底が知れねぇなドラゴンってのは。
何度目かの幸運に、本格的な運比べを作戦に取り入れようかと思うほど。
間髪入れず、釘付けにされたクライフをこっち側へ取り込むよう次元魔法を拡張。半透明の世界へ招待する。
コレで砲撃が当たることはない。
そう安心した矢先、クライフの視線が横へ。
だがそれは砲撃とは逆方向。
思わず声に出しそうになるが、その視線の先にはエリックの炎がある。
さっきまでは半透明だったからな。急に色付いて眩しくなったか? それに当たらなくなった砲撃と違って、今度はそっちが当たるようになっちまったから、むしろ正しいのか? まぁ、そんなヘマはしねぇだろうが。
そんなことを考える余裕が出た瞬間だった。
砲撃が飛ぶ。
予想通りの起動。
ただし若干上向きか。
青い炎に気を取られたクライフの後頭部を掠めるようにドラゴンの胸元へ突き刺さる。
驚いたのはクライフだろう。
砲撃に気付いて前へ転がるように飛び出す。
空間のズレによって盾に掛っていたブレスの重さが無くなっていたこともあり、感覚が狂ったに違いない。
親友の情けない姿を横目に。
ドラゴンは空へ飛びあがっていた。
なんでだ?
真っ先に来たのは疑問だった。
だが、
「ゼネスさん‼‼」
飛ばせることが狙いだったエリックが叫ぶ。
俺は打ち合わせ通り、今度はドラゴンまでもをズレた世界へ引きずり込む。
そうすることで―――・・・・・・、想定外のことが起こる。
いや、ある意味では予想通りだった。
ただ――そうあって欲しくはなかった現実。
もう1頭のドラゴンが射殺すような目で俺を見ていた。