軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

対峙2

「――ッ! 迷うな‼」

ほんのわずかな空白。

急にドラゴンが増えれば当然だろうが、それでも致命的だ。

エリックは俺の声で思い出したように魔法を放つ。

風の魔法だ。

地面に生やした炎の配置は、風を生む役目も担っていた、それを巻き込み破裂させることでドラゴンを空へ追い込む作戦だったが、砲竜の砲撃が思惑を崩す形で順番を押し出した。

向こう側にいる半透明なドラゴンは既に飛び立っちまって。

こっち側にいる”半透明”なドラゴンは集まる暴風をその腕で払い散らすと。

高々と持ち上げたその手を、力いっぱい振り下ろしやがった。

風の流れを察知して飛び下がっていたクライフは、寸でのところで潰さずに済むが、浮き上がるような衝撃と轟音が腹の底まで響かせる。

その憤りを。そして、生物としての格差を。再認識させる。

「・・・こうまで上手く行かぬものか」

吐き捨てるように呟いたのはドラゴンだ。

こちら側に居て尚、半透明な姿の。

「忌々しいな。それも加護の力だとでも言うのか? そんな理不尽が・・・まかり通って良いと言うのか‼ 何が神だ‼ 誰が神だ‼ 我が意思の何が、どこが間違っていると言うのか‼‼ 卑しき盗人よ。貴様はどう答える?」

途中までとは打って変わって、気の抜けたような、諦めが混じった声で。

あからさまに俺へと尋ねる。

「・・・・・・・・・」

「答えられぬか? それとも、答えるつもりがないのか? 太々しいではないか」

「俺達はなにも盗んでなんかいない。まずはそこを訂正してもらおうか!」

押し黙る俺の代わりに先頭のクライフが挑発するように返す。

「駒風情には聞いておらん。黙っていろ」

しかし、ドラゴンは一切気にも留めず、ただひたすらに見つめる。

「駒ッ⁉ どういう意味だ‼」

「違うのか? そこに居る我が妙技を盗みし不届き者の道具ではないと?」

「妙技を盗んだ?」

「そうだ。他者に憑依し操る我が魔法を真似たのだろう? 同調か、共鳴か、貴様らが何と呼んでいるかは知らぬがな。それの実態は術者の精神を他者に送り込み操るという魔法だ。我には良心から為しえなかった方法だが、意識が残っているのでは、気付けぬのも無理はない。貴様らは操られているのだ。そこの不届き者にな」

呆れたような物言いにクライフは戸惑い、視線を運ぶ。

「否定はしねぇよ。結果だけ見りゃぁ同じことだからな。俺は他人の魔力を使って、他人に魔法を発動させられる。敵味方問わずにな」

驚愕に口を開く親友を他所に。

「砲竜さえ操れるとは、さぞ気分もいいことだろう」

「おかげさまでな」

先に砲竜を操って連れてきたのはコイツの方だ。

しかも。ここぞって時にまで、いいように差し込んできやがって。

手本でも見せたつもりか?

「貴様は神の何を知っている? まるで代行者のようなギフトを与えられ、それを使命だとでも思ったか? そうまで我が覇道を妨げ、何がしたい?」

ギフトのことをコイツに教えた覚えはねぇ。

どうやって?

「何を疑問に思うことがある? 我は肉体を支配するのだ。記憶を読み取ることなど造作もない」

瞬間。

目の前が真っ赤に染まった気さえした。

爺さんの記憶を食いやがったか。

これで冷静にいられたのは、仲間のおかげ・・・ってわけじゃなく。

奥でもう1匹が優雅に着地してるのが見えてたからだ。

向こう側にいるのはアンナとジーナだけ。

2人とも様子を窺って待ちの姿勢。

無理に仕掛けるよりはいいが、折角の仕込みは無に帰した。

さっきのやり直しは不可能。

まとめて相手する方法は思いつかねぇ。

だが、それでも。

俺にはコイツを生かしておく選択肢だけはねぇんだ。