作品タイトル不明
伝播2
「僕らだって魔力ぐらい持ってますよ‼ 魔法だって使えますよ‼ それなのに、どうしてっ⁉」
「危険だからに決まってるだろ⁉」
「危険だからなんだって言うんです⁉ 僕らにだって! 命を懸ける覚悟があるんです‼ それでどうなったって! 後悔なんか、しませんよ‼‼」
そこまで力強く言葉にするエリックの視界は波打っていた。
「考えが甘いっていうのは、その通りかもしれません。僕は思いついたことをそのまま、やってみようと行動してしまう。誰かに言っても、相手にしてもらえなかったから、いつからか。そうするようになってたんだと思います。でも、だからこそ! 例え失敗したって、僕は自分の責任だと思うんです‼ 誰かの、ゼネスさんのせいになんか―――・・・・・・ッ‼‼」
「待て! 別に俺は――ッ!」
「わかってます! わかってるんです‼ 僕らのことを心配してくれてるのは‼ でも! だけど‼ そうじゃない‼ 僕が、僕らが欲しいのは‼‼ そんな上から目線の、見下したなにかじゃない‼‼」
必死に目をぬぐい、視界を晴らして、眼光を光らせる。
見下してなんかねぇって、言葉に出すより先に、エリックは言う。
「いつも! いつも・・・ゼネスさんばっかりが命を懸ける。真っ先に。囮になって敵の気を引くのだって、相談された覚えなんてないですよ‼ 反対なんてできないに決まってるのに・・・そんなことは知ってるくせに。僕達には何も言わないじゃないですか! 言わせないじゃないですか‼」
「アレは・・・たまたまそうなって、あとは流れで」
「さっきの、砲竜の時もそうでしたよね。1人で専攻して、どんな時だって結果を残してきた。凄いですよ! 責任を取った確かな戦果は。本当に責任を任せている相手はクライフさんぐらいで。僕らには、何も言ってこない。期待してるなんて、上辺だけで! 実際にはどっちでもいいと思ってたんですよ‼ どうあっても対処できるように、分析した上で自由にさせただけ」
「冒険者の先輩として、年長者として、それが当然じゃねぇか!」
「そうですけど‼ 危機が欲しかったわけじゃない! それでも! 僕は、貴方達の役に立ちたかった。あの地獄みたいな空間から救い上げてもらった恩返しぐらい・・・そのためならって! ずっと‼」
その実感が欲しかったんだと、エリックは零す。
「ゼネスさんは強いから、そうなるのは仕方ないって理解はしてましたよ。けど、納得したことなんかなかった。だから僕らは、僕達は別れたんです。あなたを縛って、弱くしてしまうから・・・!」
「どういう意味だよ? 俺のLvはお前らより―――」
「低かったからなんですか? そんなのは飾りだったじゃないですか。僕達はゼネスさんが居なくなってから、明らかに怪我が増えましたよ。魔法や薬で誤魔化せないほどに」
「効率の問題だろ。俺の時は1人だったから、」
「それが可能なだけでも、十分強いってことじゃないですか。それに実際、僕らと離れから・・・ゼネスさんのLvは上がった。皆して喜びましたよ。やっぱり僕達が原因だったんだって」
「そんなもん、ただの噛み合わせの」
「それだけなら、こんなに早く結果は出ませんよ。僕らが何年一緒に居たと思ってるんです? でも! だけど‼ だからこそ、それでも‼‼ 信じたくないじゃないですか‼ 足手まといの役立たずだなんて‼‼ 信じたく、ないじゃないですか・・・・・・~~~ッ‼‼」
それまでは強気だったエリックが。とうとう俯き、震える。
そんなつもりじゃなかった―――なんて言葉で、慰めになるか?
むしろそれは、責め立てるようなもんだろう。
なぜなら、気にも留めてなかったと自白するのと何も変わらねぇからだ。
無限に感じるほどの時間。
静寂の背景に死闘が映りこむ。
しかし、現実を彩るにはボヤけて見える。
「僕は、僕らは・・・そんなに頼りないですか? ゼネスさんに協力したら、すぐに死んでしまうほど。何があるかわからない状態では協力なんてさせられないほど、弱く見えますか? あの頃からなにも。成長できてないかな」
肯定することはできねぇが。
かといってだ。不安の残る状態で無理させたくもねぇ。
それが俺のわがままだとしても。
だけど―――・・・。
「・・・・・・・・・わかった。ただし、試してみるだけだ。無理そうならすぐに辞めるからな」
「――ッ! はいっ‼ はいッ‼‼」
どうせなら、納得できる方法を探す。
後悔しない選択は、その上からでも選べるはずなんだ。
それこそが本来。俺の持つべき覚悟で。
目指すべき場所だったんだ。
「つっても、ジーナの奴も居るんだが・・・どうするか」
「あの人こそ、ゼネスさんに使われたいと思ってますよ。きっと」
「なんでだよ」
「だって、変態じゃないですか」
「まぁ・・・・・・確かに」
「そうですよ。だから、全力で――お願いしますね‼」
いつか見た青空を思い出すほど清々しい表情で宣言するエリック。
そうだな。
いい加減、この陰気臭い穴倉にも嫌気がさしてきた。