作品タイトル不明
じせい
驚くべきは腕の痛みか。
融合強化と超硬質の籠手を上からでも貫通するほどの一撃。
『私の指示がアンナ君の速度に追いつくはずがないだろう⁉』
ああ、そうか。
同じように戦ってきたんなら、同じような行動にも出るってもんだ。
どうやら、さっきのはアンナの攻撃とカチあったらしい。
腕の痛みや痺れにも納得がいく。
『というかね! 君は私達と魔力を繋げているんだろう? それなら位置だってわかるはずじゃないのかい? 幾ら目が見えなくとても、声が届かなくても、君なら合わせることができるだろう⁉ どうして真っ先に前へ出るんだ‼』
言われて、冷静に感覚を辿る。
離れた位置に1つ。
これはアンナだろう。さっきまで魔力が収束していた位置にほど近い。
そこから、そう遠くない位置に1つ。
たぶんクライフだ。後ろを守るために敵との間に立ってる。
その後ろ。推定クライフから、そこそこ離れた位置に3つ。
エリック、フェリシア、ジーナに違いない。
3つは敵に対して縦並び。一番前はジーナかフェリシアか。それとも男の矜持でエリックかもしれねぇが、そこまでは分からねぇな。
とはいえ、だ。
確かに分かる。言われた通りにもできる。
まず初めに気付くべきだった・・・そう言われちゃ、ぐうの音も出ない。
『いつもそうやって、自分のできること、やるべきことの不一致が君の成長を妨げる足枷になり続けているだろう! 責任感が強いのはいいことだよ⁉ けれどもね! 責任の取り方だって、君は知るべきなんだ‼ 常に最前線で命を張り続けるだけが正しいわけじゃない! 仲間を勝たせる、損失を防ぐ、そのための指揮だって、立派な務めだろう⁉』
糾弾される理由はある。言っている意味も理解はできる。
ただ、それでも。
『後方での指揮。安全圏からの一方的な命令。それで失われるものが何かを。知っている君がそうしたくないのは、幼少期に君を叩きのめし続けた相手が軍団長だったからかも知れない。あるいは、軍のそういう体質自体を嫌っているのかもしれない。だったら―――ッ‼』
どこか悲痛なほどの叫びが脳内に響く。
キンキンと泣き喚くかのように、正直鬱陶しい。
そう思っていた。
けれど、
『最前線にあっても、自身の命を懸け続けた状態であっても、状況を把握し、戦場を掌握するような、何ならだよ! 敵も味方も、その全てを支配できるような存在になればいいだろう‼‼』
蒙を啓かれるような言葉がそこにはあった。
命を懸けることが仲間への信頼や、礼儀であるとさえ感じていた。
しかし、それはいつしか義務となり、今では当然でさえあった。
だから真っ先に行動することに価値があると思った。実際に価値はあった。意味もあった。
だが、それより上なんざ考えたこともなかった。
敵であっても魔力の繋がりは得られる。
それは初めて、この感覚を知った時にも微かに示されていた可能性。
そして、アドレスで龍王と。ルーフロンス領では傀儡になった軍勢と。
それどころか、ここでも敵のドラゴンとそうする前提だった。
なのに、その中に仲間の存在は含まれてなかった。
なぜ? どうして、たったそれだけのことを―――・・・・。
俺は仲間を信じていなかったのか? 爺さんのことがあって、失いたくないと思うばかりに、頼るなんぞといいつつ、その実。見下していたのか?
敵と味方を切り離して、何が戦況だ! 笑わせるじゃねぇかよ‼