作品タイトル不明
side――クライフ1
『前後関係は即座に判断!』
親友からそう念押しされての転移。
もちろん覚悟はしていたさ。
それでも、だ。
縄を掴んで壁に張り付いていた状態から、わずかに空中に浮いた感覚。
それと同時に目に飛び込んできたのが、ピンク色のなにか。
着地が速いか、あるいは先にぶつかったか。
とんでもない衝撃が体を襲う。
「――痛ったあ⁉⁉」
つい、叫んでしまうほど。
運がよかったのは転移した方向。
見えたからこそ反応できた。
戦闘では常時左腕に通して所持する盾のおかげで、幾分か衝撃を防げた。
けれど、弾かれた腕が胴体――つまりは鎧に当たったせいで挟まれて痛む。
動かないわけじゃない。ただ、痺れているのも事実だ。
「来るわよッ‼ 避けて‼‼」
状況を飲み込む暇もなく、声に視線を上げるとモンスターが突撃してきているのが分かった。
止めるか? そこに迷いがあったら出来やしない。
だから直ぐに避けられた。そう言われたから・・・だけじゃない。腕も痺れていたからだ。
良くなかったのは避けた方向。
咄嗟に左腕を庇うように左側に避けてしまったことで、後ろにいた声の主と分断されてしまった。
当然、声の主はアンナだ。
無事でよかった。
それはそれして、俺達はお互い右利きで横なぎは左からの方がやりやすい。
だから普段は右に避けるようにしてたんだけど、失敗した。
俺が守ってアンナが攻める。その予定だったのに、敵を挟んでたら守れやしない上、最悪アンナの攻撃の余波を受ける。
合流――・・・したいところだけど、
「キュォオオオオッ‼‼」
まあそうだよな。
モンスターは俺達の間に居座って通す気なし。
尻尾を地面へ強く打ち付けながら吠える。
厄介なことに、頭はアンナの方を向いている。
なにか怒らせるようなことでもしたのか?
聞いたところで仕方がないか。標的を移らせることはできないか?
というより、このモンスターは土竜でいいんだよな?
今は背中しか見えないせいで確信が持てない。頭が一瞬しか見えなかったせいだ。
なんでこんなところに? とも思うものの、今の問題はそこじゃない。
どうやったら標的をこっちに向けさせられる?
既に怒っている風だから、生半可なことじゃ見向きもされないぞ。
せめて腕の痺れが抜けるまで待って――なんて、くれるわけがなかった。
巨体が反る。比較的軽くだ。
だが、ズダンッ‼‼ と壁を叩く音と振動が。
反った背は、いつの間にか前へ傾いていた。
恐らくさっき見たのは舌。それを凄い勢いで伸ばしてきたんだろう。
それと同じことを今も。
当たっていればアンナも悲鳴をあげるはず、それがないなら心配いらない。
いつも通り右に避けているなら、こっちからは左へ行けば合流でき――。
「――ぐッ‼‼」
左へ1歩。踏み出そうとした瞬間。
尻尾が鋭く舞った。
痺れた腕を酷使したくはないが、盾で防ぐ他にない。
この威力が直撃すれば、人が死んでもおかしくはない。
弾き飛ばされることはないけれど、踏ん張ったにもかかわらず押し出され、2本の線が真っ直ぐに伸びる。
また、合流までが遠のいた。