作品タイトル不明
side――アンナ
縄にぶら下がりながら壁を降りつつ、楔を打って縄を通して結ぶ。
簡単な作業よね。
1つ1つの間隔も適当でいいし、鼻歌まじりでも文句だって言われない。
吹き下ろす風が強いのは迷惑だけど、昔に誰かさんのお節介で覚えさせられた強化魔法で寒くもなくて快適だわ。
それで快調に進めてたら呼び止められた。
なによ? ミスでもあった?
そう思ったけど、違った。
イーター? ふぅーん? そういうモンスターが居るかもしれないのね。
ちょっとピンとこなかったけど、地面を掘り進むって聞いてわかった。
あのデッカイ芋虫みたいなやつね。
ああいうモンスターは地面を掘り進む時に音がするから分かるのよね。
というか、風の正体だなんて、よく考え付くわね? っていうと違うかな。よくそんなことを考えようと思うわね? 風なんて、吹いてるなーくらいにしか思ってなかったわよ?
そんなことより、アタシの融合強化に気付かなって何よ⁉ 下手だった⁉
そうじゃないなら珍しいこともあるもんね。
そういうのこそ、真っ先に気付いてたでしょーに。
大丈夫なの? って聞いてみるけど、ダメとは言わないから意味ないわね。
せめて、気を引き締めるように注意するくらいかしら。
適当に戦闘を想定させれば、嫌でも調子を戻すでしょ。そういう奴よ。
なーんて・・・・・・思ってたんだけどね。
「なにがイーターよ。全ッ然、違うじゃない‼‼」
目の前にいるのは巨大なモンスター。そこに違いはない。
けどその体躯は硬い鱗に覆われて、鋭い角と爪に牙まで持ってて、視覚・嗅覚・聴覚さえ優れてるってよく聞く竜種。
土竜。『もぐら』じゃなくて『どりゅう』。
姑息なことに穴をあけた壁に幻視の結界まで。随分と用意がいいじゃない。
不用意に滑り込んじゃったアタシも悪いんだけどさ‼
「――キュォォオオオオオオオッ‼‼」
じゃないのよ‼‼
咄嗟に剣を抜いて力任せにぶん回す。
それだけで不用意に飛び込んできた土竜を弾き返せるのはギフトのおかげ。
尻尾のせいで正確にはわかんないけど、全長5Mくらい? 高さは3Mってところかしらね。まあおっきいのは体ばっかりで頭は小さいし手足も短い。
出合い頭に突進を選んできたってことは、それが主戦力ってわけよね。
硬い鱗のおかげで斬れないけど、相手の突進だってアタシには効かない。相性が悪いわけじゃない。
とはいっても、あれだけの質量・・・、受け方に気合い入れなきゃ手を痛めるわね。
ドドドッ‼‼ と土煙を巻き上げながらの突進が続く。
なにも馬鹿正直に全部を受ける必要はない。
避けて、避けて、受けて、弾き返す。
その間に壁も見た。
脱出できればそれが一番早いから。
でも無理。
アタシが落ちた穴は今、天井にある。
別にこの場所が変形したわけじゃなくて、単純に滑り落ちた横向きの穴は横向きじゃなく、ほとんど下向きに穴が掘られてたってだけ。だから滑り落ちちゃったんだけど。
ここはその穴の合流地点。
天井を見る限り、穴が1つじゃないのよね。
これじゃいつかは落ちてたわ。速いか遅いかの違い。
せめて縄をちゃんと掴んでればなあ・・・。
気付いた時には遅かったし、穴が狭くて剣は使えなかったし、散々よ。
油断してた。
今みたいに。
土竜は動きを止めてた。
なにもしてこない。そう思ってた。
突進するだけが能の残念な竜。
アタシの中で勝手に出来上がった虚像。
でも仕方ないでしょ? ずっと同じことばっかり繰り返すんだもん。
そういうものかな? って思っちゃうじゃない‼
それが、頬を膨らませたかと思えば―――。
ピンク色が見えた。
舌だ。舌が飛び出た。
まさか竜がカエルみたいな攻撃をしてくるとは思わないじゃない?
カッコ悪いし。
先入観だって言われたらそうだけど、でもさあ・・・。
考えるだけで、もう遅い。
避けるのも、受けるのも、間に合わない。
できれば痛くないと――
「――痛ったあ⁉⁉」
いいわねって思ったんだけどさ。