軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

墜落1

世界が赤の支配から逃れ行く中。

『そろそろだ! 来るぞ!』

龍王の声が響く。

行く手を遮る雲の切れ端。その隙間に目を凝らせば、食い千切るように4つの影が白の壁を突き抜ける。

大きく開いた口は叫んでいるのか、生憎と聞こえちゃ来ねぇが、血走る眼が物語る。

体躯は龍王に劣るが、人とは比べるまでもなく。

しかし、詳細に知ることは叶わない。

たった一瞬、見えたかと思うと。

次の瞬間には擦れ違っていたからだ。

「予想通りですけど・・・空中戦なんて、できそうにありませんね」

「そうだな。わかっちゃいたが、見るのがやっとだ。離脱の好機は逃さねぇようにしねぇとな」

もしかしてりゃ砲撃役だったエリックの呆れも止む無しか。

僅か数秒前にすれ違ったはずの4つの影が、既に囲んできてやがるからだ。

俺達を乗せての飛行が遅いことは聞いてたが、ここまでの差があるとは。

『少々揺れるぞ!』

言うが早いか―――空が光ったかと思えば、世界が回る。

どうやらブレスが飛んできてるらしい。

光は白い雲に強く反射しやがるせいで、どこからどうブレスが飛んできて、龍王が今どこへ向かって飛んでるのか、わからなくなる。

少しでも気を抜けば吐きそうなぐらい。

目まぐるしく、揺れ動く。

「これが少々になるんなら、船は転覆しても揺れてないことになるわね‼」

悪態を吐くアンナに、完全な同意ができることは珍しいが、それほど酷い状況なのは間違いねぇ。

酔い止めの魔法なんつー子供騙しにさえ縋りながら耐える。

幾重にも重なった雲の層を切り裂き、いまだ流星の如く降下する龍王。

人を乗せて飛ぶというハンデを背負い、4方向からの照射をよけ続けられるわけもなく、尾や翼に傷を受け不規則に揺れながら落ちる様は、そのまま墜落劇だ。

『好き放題に撃ってくれよって・・・』

精神操作を受けていなければ、4頭のドラゴンはこの状況になり調子にも乗っただろうが、完璧に統率された追撃を見るに、そんな甘さは感じねぇ。

厳しい攻勢が続く中で、

『雲を抜ける! 衝撃に備えるが良い‼』

雲海の底を見抜いた龍王が吠える。

決してやられるだけの役どころではないと見せつけるように、雲から突き抜け地上が見えた瞬間に身を翻し、迫る影に向かってブレスを返す。

それは今まで見ていたどのブレスよりも太く、バラバラに追いかけてきた4頭をまとめて飲み込めるほど。もちろん、当たればただでは済まないほどの力強さも兼ね備えていて、龍王としての矜持をその範囲と威力で示した。

つっても、それが当たるようなヘマはしない。

お互いに。

4頭のドラゴンは軌道を急激に変更。地上に対してほぼ垂直に追ってきていたところから、雲海へ沿うよう並行に4方へ広がる。

当然。龍王も部下を消し飛ばすために来たわけじゃねぇ。むしろその逆、救うために来た以上は当たってもらっちゃ困る立場だ。

それでも撃ったことには理由がある。

言うまでもなく、ブレスは合図だ。

俺達が離脱するための合図。

龍王の動きを止め、追手を散らすことで下に安全な空間を作る。

俺達は全員でそこへ空間移動をする。

そうすれば事故を起こさず安全に離脱できるってわけだ。

つまり、ここからが本当の墜落劇になる。