作品タイトル不明
重力
遠く天より来たるは破壊の大王。
赤く染まりしはなんたることや。
悉く猛りて滅するためか、遍く恥じりて消するためか。
全く異なりし心なれど、近く同じ終わりを招く。
いずれやもなし。
それは永く詠い続けられる詩。
誰が詠んだかも知らぬ詩。
けれど、見ていなければ知らぬ詩。
――『強襲まで、ね』
『信じられぬか?』
『いいや。ただ・・・嫌な予感がするってだけだ』
『フハハハハ! 良い感をしている! 妙案ではあるが、危険でもある』
『取り敢えず、聞かせてくれ』
『良かろう。敵を分断したいが離れすぎると移動に困る。その解決法はな。空から飛んで近付けば良いのだ』
『ちょっと待ちなさいよ! 空から飛んでいったって、移動距離も時間も別に変わらないじゃない‼ それでなにが解決するのよ⁉』
『良い質問だ。愚かしさがこれでもかと分かりやすい』
『コレでぶん殴ってもいいわよね? 盛大に馬鹿にされてるんだし・・・』
『やめとけ。アレで褒めてるつもりなんだろ。だがまぁ・・・言いたいことはわかった。人間には思いつけねぇ発想だ』
『そうであろうな。汝らは翼を持たぬ故。問題となるは移動する距離と方向、そして手段。分断が成功しても、移動に時間が掛かるせいで、耐久や合流の懸念が消えぬのならば、その移動を早くすればいい』
『だがそのために魔力を使えば、万全での戦闘を行えず本末転倒になる』
『そこで、魔力以外の力に頼るというわけだ』
『それが重力か。低い位置から飛んで横移動するんじゃなく、超上空・・・敵に見つからねぇような位置から落下することで、高さっつー距離を確保するんだな』
『正しく。よく気付いたものだ。しかし、落下ではなく急降下だ。墜落するつもりはないのでな』
『アンナと同じ疑問はお前が否定した時点で消えるんだ。それでも飛ぶってんなら軌道の問題になる。それと、俺達に羽がねぇことはお前も言ったてただろ。お前がなんて言おうが、こっちからすりゃぁ落ちるだけだ』
『それでも、着地には自信があるのだろう?』
『今の話を聞いた上で、どうだ? エリック』
『直上からの落下の方が、斜めに落ちるよりは対応しやすいです。もちろん、速さの問題はありますけど・・・』
『なに、空中での姿勢制御だけでも減速は見込めるはずだ。それに私達ほどの魔力制御があれば、遠い距離での魔法の発動も十分に可能だろう。恐れることはない』
『でしたら、残る問題は―――』
『俺達が分離する位置と敵に上手く気付かれることができるかどうか?』
『はい。どうでしょう? 人の台詞を奪ったクライフさん。頭上からの接近には、どの程度の距離から察知できますか?』
『すまない。けど、警戒さえしているなら目視可能な位置で気付けるはずだ。魔法や弓矢で攻撃された経験もあるからね』
『でも目視可能な距離ってどうなのよ? 近すぎない? アタシ達人間ならともかく、ドラゴンでしょ? ちょっとアンタ、ドラゴンってとんでもなく目がよかったりしないの?』
『人よりは良く見える。が、そこは気にしなくとも良い』
『なんでよ?』
『汝らは流星を見たことはあるか? アレに続く尾は燃え屑なのだ。必然、近くで見れば明るく目立つ。見過ごされことはあるまいよ』