軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

ねじれた衝突

「どうも、初めまして。帝国の女王様。随分とウチのゼネスがお世話をしたらしいね?」

「我が国の将軍フリードリヒと親しい貴方は何者かしら? 名前ぐらいは先に教えてくれてもいいんじゃない?」

「おや、それは失礼したね。名前ほど顔は知れ渡っていないようだ。私の名はジーナ・V・マーラグ。魔法研究を嗜んでいる冒険者さ」

「なるほどね。さっきの天才発言はそういう・・・確かに、名前は聞いたことがあるわ。目からビームを出す変態だったわよね? 冒険者だからフリードリヒとも面識がある。そういうことかしら?」

「概ね間違ってはいないけれど・・・どうして顔は知らずに、そんな変な所だけご存じなのかな?」

「そこの男から聞いたわ」

ジーナの疑問に俺を指差すカーナ。

「なるほど、説明してくれるかな?」

「さて・・・覚えてねぇな」

しらばっくれてるように聞こえるかもしれねぇが、実際に覚えてねぇ。

そこまでの興味がねぇからな。

「ふむ、まあいいさ。他所の女に私の名を出すということは、つまりはそういうことなのだろうし? 帝国とはいえ、私よりも身分の高い相手へと牽制するのは当然のこと。むしろ、私は安心したよ。君が外へ行く気がなくて」

「意味不明な解釈をするな。そんなことより、説明のために来たってんなら、さっさと説明へ移れ」

「やれやれ・・・これも君のためだというのに。けれど、そういうのならば従おうじゃないか。それも私の務めだからね」

ふぅ、とため息交じりで首まで振る鬱陶しさだが、指摘なんぞしようものなら、余計な時間を取られることが確実であるために無視だ。

「手短に話すけれど、私達はあのドラゴン――龍王の力を借りて、北の大陸に隠れ潜むこの度の黒幕を叩きに行く。同行するつもりがあるなら、支度を済ませて来たまえ。女王様と将軍・・・それと後2人くらいなら連れていけるだろう」

「はぁ⁉ どういうことよ⁉」

一瞬。険しい表情を見せたカーナはしかし、

「詳しく説明しなさい!」

すぐに女王としての体裁を保つ。

「さっき言ったことが全てだよ。この国を裏から動かしていた望福教。その教祖はドラゴンで、今は北大陸の奥に潜んでいる。私達はそれを叩くために北大陸へと赴こうとしていて、女王様にも声を掛けようと。彼が言うものだからね。わざわざ、ここへ寄ったというわけだ」

なんで⁉ という視線を受けて、

「お前にも復讐の資格はある」

上っ面の回答を返す。

もっと貪欲な理由は、自由騎士フリーダムの招集。

動かせそうな戦力で最強だと思ったのがフリーダムであり、巻き込んでもそれほど後悔もなさそうだったからにすぎない。

最悪のことがあっても皇国、及び俺達への影響は少ない。

なにより、少数とはいえ護衛も連れて行くんだ。本人の判断と合わせて、責任の所在を追及されて困ることもない。

例え仇を殺すことが出来ないような状況だとしても、呼び出すことに躊躇はない。っつーか、帝国そのものを引き込めるなら、北大陸の占領も視野だ。

「まるで慈悲のようなものいいではないか。裏に意図などないと、そう主張しているように聞こえる。であるが故に、こちらは警戒しなければならぬ。国家元首に即断即決など・・・求めるものではなかろうよ」

口を挟むのは将軍。

「どんな権力者であろうとも、人は人。選択を迫られるときはあるものさ。君だってそうだったろう?」

「・・・言っている意味が分からんな」

「ほう! ではいいのかい? 君の可愛い教え子が全てを失っても・・・」

「今更ではないか? 十分に時がたった今、真実が明るみなろうとも、立場を失うとは限らぬだろう」

「それがそうでもないんだよ。なにせ、サルベージで起きた問題に大きく関わっているからね。ドラゴンの襲来については知っているはずだね? いや、知らなくとも目の前に答えがある。あそこで宙を舞う龍王こそがサルベージ襲撃犯であり、それを撃退したのが彼と私達を含む冒険者だ。そして、厄介なことに彼は直前まで本部に呼び出され、そこで戦闘まで余儀なくされていたんだ」

途中までは表情に余裕のあった将軍だったが、最後の言葉に汗が滲む。

「予想通り、そこに居たのがギルド長とその懐刀と君の愛弟子というわけだ。ああ、大変だ。アドレス攻略最前線であるサルベージへのドラゴンの襲来。それに対応できたのは同じ場所にいたはずの引退した冒険者で、しかもその彼は個人S級3人との戦闘で怪我まで負わされた後だった。にもかかわらず、彼はドラゴンを退け、本部はなにも出来なかった」

こうして話だけを聞けば、とんでもなく異常なことをしたように思えるが、その実は協力と尽力の賜物だ。俺1人で成し遂げたような語り口は正しくはない。

「今でもギルド長の対応へ疑問を持つ者はいるけれど、ギルド長の行動は彼を引き留めるためのもの。彼の実力を考えれば妥当な判断であり、失敗した事実だけが問題視されている。では、なぜ失敗してしまったのだろうね? 殺すための戦いではないとはいえ、3対1で尚且つ3人は個人S級という、組織内における最高戦力だったはずなのに・・・」

まぁ、あの場にいたのが本物の自由騎士フリーダムだったなら、俺は勝てなかったどころか、抵抗が出来たかも怪しいだろう。

このおっさんの強さはただの力技じゃねぇ。

状況判断や敵の手の内を見極める能力にもある。

それはギルド長やヴァーちゃんが持ってねぇ視点でもあった。

それを補填する存在があの場に居たら、結果は大きく変わっていただろう。

「もし、今。自由騎士フリーダムの中身が入れ替わっていたと知れ渡ったらどうだろうか? ギルド関係者――ひいてはチャード集合国の権力者にまでバレてしまったなら? すべての責任は君の愛弟子へと降りかかるだろう。彼という存在を失った責任。ドラゴンへ対応できなかった責任。個人S級の看板に消えない泥を塗った責任。さて、君の愛弟子は―――・・・・・・」

「もういい。わかった。元より全ての判断は姫様に委ねている。私は今後、一切の口を挟まん。それでよいのだろう?」

ジーナの饒舌を遮って降伏の白旗を上げる将軍。

2人の間には何があったのか、あの別人だった自由騎士フリーダムとどう関係があるのか、気になることばかりだが、意外なほどあっさりと将軍は道を譲る。

当然、異を唱えるものなどいない・・・はずだった。