作品タイトル不明
空へ
時間が進んで。
『再度確認しておくが、本当に大丈夫なのだろうな?』
「まぁ大丈夫だろ」
龍王の背に乗って移動中。
龍王との会話は虹霓玉を経由している。
『人間のことなど我にはわからんのだから、そこはしっかりと保証してもらいたいのだがな』
「もっと時間的な余裕があれば十分な保証もできたんだがな」
『それは我の責任ではないな』
「いやいや、この飛行速度については教えてもらってないからねぇ。私だけの責任にされるのは、些か心外というものだよ」
『この程度の速さを限界だと思われるのは癪ではあるが、見せるわけにもいかぬとなれば歯がゆいな。どちらにせよ、我に責任などありはしないが』
詰まらねぇ罪の押し付け合いを聞かされながら、遠い地表を眺める。
全速で駆ける馬の10倍はありそうな速さで景色が流されていく。
まだ1時間も経ってねぇはずだが、サルベージは遥か遠く。
融合強化で限界まで身体能力を伸ばしても、これに追いつくのは難しい。
一瞬ならまだしも、渡り合うなんざ不可能だろう。
瞬間移動でどうこうってのも現実的じゃねぇな。
当然、魔法を当てるのは現在の速度でさえ困難を極める。ドラゴンだけの全力航行になれば狙いを絞ることすらできるかどうか・・・。
空中戦を早々に諦めたのはいい判断だったな。
「皇都だ・・・」
まだ豆粒の様に小さいソレを見て、クライフが真っ先に口にする。
「よくわかったな」
「この国の地図はこの中の誰よりも見てきたからな。地形を見ていればすぐに気付けるさ。これでも皇族なんだぞ?」
「別に忘れたことはねぇよ」
「本当か? 昔から、敬われた記憶がないんだが・・・?」
「そうしてたら、どうなってただろうな? 俺達の関係は」
「今よりは正しくて、詰まらない形になってたんじゃないか?」
あり得ない過去に思いを馳せながら、通り過ぎる。
「けど、ホントによかったの? アタシ達は特に用事もないからいいけど、アンタ達には色々・・・あったんじゃないの? 仮にも皇族と公爵と将軍の関係者なんでしょ?」
「勝手を言って冒険者になった身だからなあ・・・王位継承権も放棄してるし、父王陛下には既に了承を得ているんだろ?」
「ああ。俺も似たような身分だし、そもそも軍とは直接関係ねぇからな。寄ったとこでなにがあるわけでもなし。ギルド支部や学園にしても、戦力にはならねぇ」
「私の方は下手に接触すると足を引っ張られてしまうだろうから、もし皇都へ降り立つとしても、親になど会わないね。もしものため――などといって家督を奪い返そうとするに決まっているよ。むしろ、アンナ君の方が問題ではないのかい? 君の母上は相当おっかないと聞き及んでいるのだけれど」
「言わないで。なにも言わなきゃバレないし、バレなきゃなにもしてないのと一緒よ」
下町をまとめ上げる肝っ玉母ちゃんを思い出したのか、アンナはブルりと身を震わせながら、自らに言い聞かせるように返す。
エリックとフェリシアも笑っちゃいるが、家族に話してねぇのは同じだ。
エリックは心配を掛けないようにで、フェリシアはウチと同様に親と関係がよろしくない。
気掛かりではあるが、通り過ぎる皇都の景色と置いて行ってもいいだろう。
それらを選ぶのは俺じゃねぇからだ。
気掛かりといえば、ライザードやバロン。ジェイド達他の顔も浮かんだが、文句は帰ってから聞けばいい。