軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

かわり話

「『進歩する歯車』の皆様はS級になってから直ぐに、火口の未開拓だった場所を攻略し始めたそうです。そこは火口へ降りていく岩場の途中にある切れ込みで、休憩などに使えるようになれば、火口付近の攻略がグッと楽になるんじゃないかと言われていた場所でした。未開拓のままとなっていた理由は時折、異常なほど高温の熱波が噴き荒ぶためで。その原因を探ろうにも、熱波の間隔が分からないことや、切れ込み内部の一部が崩落したのか非常に狭く、踏み込むのが困難だったからだそうです」

言われれば記憶にある。

溶岩溜まりの直ぐ側にある異様なほど硬い岩をくり抜いたかのような迷宮。

そこへ行くまでの道中、丁度中間地点付近にある切れ込みのことだろう。

大分昔にそこで気を抜いた冒険者一行が熱波に曝され、全身の皮膚が焼け爛れどろどろになったことがあるって話はよく聞いた。

その切れ込みの壁には岩肌とは別のヌルヌル・ネバネバした手触りの部分があって、それはそういった冒険者達の皮膚や油が溶けてこびりついたものだとか、怪談話よろしく語り継がれて来た。

「今では休憩所にでもなったのか?」

「残念ながら・・・先程もお話しした通り、あの方々も最初から順風満帆とはいかず。熱波が来る間隔の調査をし、道中の狭い道を切り開き、その奥を確認するまでは出来たようですが――」

「その先はどうやらサラマンダーの巣と繋がっていたらしくてね。むしろ、今まで以上に火口の迷宮への道が危険になってしまったというオチだよ」

首を振った職員に続いてジーナが述べる。

「そのようです。一時は批判が集まったりもしたそうですが、サラマンダーは素材が高く売れるので、今ではいい狩場として認識されているようです。『進歩する歯車』の皆様は大変な目にあったとおっしゃっていましたけど」

「そりゃあそうだろうねぇ。耐火装備も無しに火噴き竜とも呼ばれるサラマンダーの、しかも巣を攻撃したと認識された状態で戦闘するんだ。中々骨が折れただろうさ。狭い空間で複数の相手だ」

「逆だろ。狭い空間だったからこそ、複数の相手が出来たんだ。いくらサラマンダーとはいえ、成体なら人間と同等以上の体格だ。壁に張り付いたってすり抜けるのは至難の業。それなら正面だけに気を付けりゃいい。クライフには盾があるし、フェリシアなら祈祷もその場で出来ただろう。アンナの剣も・・・まぁ盾みたいなもんだ。エリックが魔法で負けるわけねぇだろ」

「その割には苦戦していたようだけどね。その場面を見てはいないけれど、彼らは火傷を負っていたからね? 引きずるほど酷いものでは無かったとはいえだ。確かに怪我を負ったのさ。それは誰のせいなんだろうね?」

「本人の油断や慢心が不覚を生じさせたんだろ」

「そうだね。今まで通りとはいかなかったんだろうね。誰がどう戦うか――陣形も、声掛けも、その対応の仕方さえ、決めきれていなかった。もしくは、決めなければいけないということを失念していたのかもしれない。突発的な戦闘の開始は、それらを浮き彫りにしたんじゃないかな? いつ、なにを、どうやって息を合わせればいいのか。どんな簡単な連携でも、1人抜ければ狂ってしまうものさ」

そうであったなら間抜けと言わざるを得ない。

得たものや失ったもので何が変わるか、なんてのは駆け出しでさえ考える。

長く居すぎたからだなんつー言い訳が通るとも思ってねぇだろう。

「その覚悟は・・・してたはずだ」

「そのつもり、だっただろうさ。君にも覚えがあるだろう?」

思いつめればこそ、視野が狭くなり、当たり前のことも見逃すことがある。

それどころか、決めたはずの覚悟が揺らぐことさえ。

経験で言えば覚えがあるさ。

「だからって、甘やかすような言葉が必要か?」

「過ぎたことに言葉は無用なんて――言ってたら、追悼なんて出来やしないだろう? 黙祷だからとか、そんな野暮なことは言わないでおくれよ?」

「死者に甘やかすような言葉をかけるか?」

「場合によってはね?」

はぐらかすようにジーナは笑うが、その思考は読めねぇ。

クライフ達も死んじゃいねぇから大袈裟といえばその通りで。

だが、死んだ人間を思えば・・・・・・やはり、甘えたことは言ってられねぇ気がした。

そんなやり取りに、

「お詳しい――ですね?」

ただ職員だけが首を捻った。