作品タイトル不明
変わった人員
「ようこそ冒険者ギルドへ。本日はご依頼ですか?」
扉を開いてすぐ、職員に話しかけられる。
ここを去ってまだ2年も経ってねぇはずだが、この職員に見覚えはない。
「・・・・・・」
いや、それだけじゃねぇな。
受付の顔もそうだ。
「どうかしましたか?」
無言だったせいだろう。少し困った顔になって、再度話しかけてくる職員。
「ああいや、目的がなくてな」
冒険者ギルドへは勢いで入った。
これといって目当てがあったわけでもない。
ただ、ただ何かがそうさせたとしか言いようがない衝動のせいだ。
「観光・・・ですか? 珍しいですね?」
「珍しいか?」
「はい。ここサルベージは周辺の冒険者ギルドの支部では最前線ですから。以前に詰めていた本部ならまだしも、前人未踏の攻略前線まで観光に来る人はなかなか見たことがありません」
極めて異例のことです! と拳を握って説明してくれる。
そう言われれば、俺も。活動中にそんな人物を見た記憶はない。
「やっぱり危険だからか?」
「それはあるでしょうね! このサルベージはドラゴンの襲来もありましたから、興味本位の物見遊山で来られる方はまあいないかと」
「はは、そうか? 冒険者なんざ、そんな奴らばっかりだろ?」
「冒険者であればそうかもしれませんね‼ でもお客様は――格好はかなり近いですが、ギルドカードの提示もありませんし、なにより御1人での来館でしたので・・・・・・隊商が来る時間とも定期便の時間とも違いますから、冒険者ではないのかなと思いました」
へぇ・・・と、つい感嘆の声が漏れる。
単純に引退した結果、冒険者として見られなくなっただけかと思ったが、様々な条件や項目を無意識化に検討、処理した上で即座に対応してたわけだ。
見た目は若い娘だが、元は本部勤めらしいことを考えれば、そのあたりの実力を見込まれての採用だったのかもな。
そんな人物をサルベージに置いてるってのも気になる変化ではあるが――。
それよりも。
「何してんだ?」
振り返って扉を開け、対面の建物付近で呆然と立ち竦むジーナに訊く。
「・・・・・・・・・・・・なんでもない」
ゆっくりと振り返り、ねめつけるように睨んだ後、無駄にもったいぶった間を挟んで、不機嫌な声が返ってくる。
お前は何をしてたのか? あるいは何がしたかったのか?
聞いても良かったかもしれねぇが、面倒な気配を感じてやめた。
「やあやあ! こんな時間からすまないね?」
気を取り直した様に声高らかな挨拶。
思わず突っ込みたくなる気持ちを押し殺す。
「あ、ジーナ様! お世話になっております!」
鼻に付くだろう態度も気に留めず、深々と頭を下げる職員の丁寧な対応。
「お世話しているよ。君もこっちへ来てもうすぐ1年だったかな? ようやく馴染みが出て来たね」
「ありがとうございます! チャード集合国にとって、この場所は今や特別ですから、そんな重要な場所で働けるなんて、とても光栄に思っています」
あの有名なジーナ様のお近くに居られることもですよ! だとか続けるが、この有望株も変態に毒されちまった後なんだろうか?
っつーかだ。
「特別?」
「お客さんは知らないんですか? ギルド本部がここサルベージを名指しで助力する宣言を出したことを」
「そうなのか?」
「ああ、そうだとも。誰かさん達のおかげでね?」
「ドラゴンか?」
「それもありますけど、それだけじゃありませんよ。勇者パーティーの功績だって捨て置けません! ここ1~2年の素材獲得量はかなり向上しましたからね! まぁその代わりか多少、質は落ちてしまったようですけど・・・それでも新素材の獲得も順調ですし、今はこのサルベージが熱いんです‼」
そんなところで仕事ができてうれしいのか、職員も力説する。
「勇者パーティーの功績、ね」
S級パーティーになれば、そう呼ばれることは知っている。
「気になりますか?」
話したそうにする職員の顔と、意地が悪いねぇと苦笑するジーナの顔が、浮かぶクライフのやめてくれと嫌がる顔を押し退ける。
「話してくれるか?」
「任せてください! そうですね、まずは――・・・」
何から話そうかとワクワクする職員から俺は。
俺が抜けた後の、仲間たちの活躍を耳にする運びになった。