作品タイトル不明
お邪魔かしら
つい零れるように出た本音。
それが聞こえちまったんだろう。
ズイッと反転するように姿勢をそのまま、ラーナが振り向く。
「――ッ⁉」
反応できない速さじゃなかったが、不意を突かれた上に独特の動きだったため、いいように間を詰められた。
それこそ、吐息がかかる距離で瞳を覗かれる。
時間にして1秒あったかどうか・・・。
それで驚愕と共に得たものは、デカい! っつー感想ぐらいのもんだった。
190cmは超えてるんじゃねぇか?
「あなたがジーナちゃんが言ってた子・・・?」
「・・・さぁ? どうですかね?」
「そこは自信を持って肯定してくれていいんだよ? なにせ、家族に伝える異性の話なんて君くらいのものだからね!」
「あら、やっぱり!」
そっと手を叩くように合わせると、にこやかな表情を浮かべる。
母親というより女友達のような気さくさ。
「お母さんは反対しないから、ジーナちゃんの好きにしていいのよ? 家督だってもうあなたのものなんだから、責任は自分で・・・取れるわよね?」
「あ、ああ! もちろんだとも! そんなに念を押されなくとも十分承知の上さ!」
「それならいいの。私だってそうしたのよ? お父さんとの結婚は親族全員が反対したわ。その理由は分からなくもなかったけど、お母さんはお父さんの矮小で、惨めで、はしたなくて、救いようのないところが! どうしても愛おしくて、周囲の反対を押し切って結婚したし、そのために家督まで継いで、それを引き継いだんだから。でも、そのおかげでい~っぱい。お父さんの情けないところが見れてお母さん嬉しかったわ! 結婚っていうのはそういうものなの」
恋する乙女の様に語らうが、内容が耳から浸透してこない。
言ってることが飛んでもなさすぎるから。
普通とかけ離れてることだけは断言できる。だが、かといって否定できる要素もない。
なぜなら、
「でもね? 1つだけ約束して欲しいの」
「約束?」
「そうよ~、約束。大切なことだから」
「それで? 内容は?」
「ちゃんと相手に了承を得ること」
そうだ。
愛の形ってのは、合意があればどんなものにでもなる。
お互いが許すなら、どんなに歪んでようが愛は愛だ。
「お父さんはね。地位とか名誉、お金のためにお母さんと結婚したの。でも、私達はそれに納得してた。私は無能なのに野心だけはあって、失敗しちゃっても根拠のない自信を失うことなく、無意味なのに抗ってる・・・そんな人が好きなの。お父さんはそれにピッタリだった。だから、地位も名誉もお金だってあげた。私にはお父さんだけ、居てくれればよかったから」
散々な言われようだが、印象には違わない。
ただ、明確に言語化されたせいか。
小さいおっさんユージーンは顔を引きつらせ、身体はこわばらせたままだ。
「あいにく、お父さんは体裁を取り繕うのだけは上手だったから、没落して嘆く様子が見れなかったのは残念だったわ。そこを慰めながら特等席でその表情を楽しみたかったのに。ただそれも最近はジーナちゃんのおかげで疑似的だけど楽しめたわ。ありがとう」
あるいは、その愛の重さ故か。
礼を言われたジーナさえも、戸惑っている。
「でも全ては覚悟の上だったの。お父さんには愛される覚悟があったわ」
言われた方は視界の端でプルプルと震えているが、声は上げない。
顔の部分は特に震えが激しいが、否定の言葉は聞こえない。
「あなたはどうなの?」
またしても、ラーナは急旋回の如く全身で、圧と共に迫る。