軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

お邪魔なのね

「はぁ・・・私の人生最大の不幸はこれが親だということだよ。どこまでも支離滅裂で、自分が優遇されていないと気が済まない。恥なんて言葉は知りもしないのさ。近くにいるだけで私の価値が暴落していくのが手に取るように分かってしまってね・・・だから早々に家督を奪ったのだけれどね」

「頭がぶっ飛んでるのは遺伝だったんだな。支離滅裂って言われて気付いたが、そういえば最初は俺達のやり取りを、まるで親しいなれ合いかの如く言ってたくせに、いつの間にかお前が冷遇されてるのが気に喰わねぇみたいな話にすり替えられてたな」

「よく気が付いたね? そのまま気を付けていたまえよ。話は通じないからね。会話をしようなどとは思わないことだ。今も私はただ待っているだけだ。決して会話に挑戦しているわけじゃあないんだよ」

ジーナの心底嫌そうな顔ってのを何気に初めて見た。

こいつでも辟易賭する瞬間はあるんだな。

「勝手に分かった風なことをいって、片付けようとするんじゃない‼‼‼ 私は公爵だぞ‼‼‼ とんでもなく偉いんだ‼‼‼ そのためにあんなのと結婚までしたんだ‼‼‼ 私の爵位を返せ‼‼‼」

最早、何に喧嘩を売ってるのか――・・・。

その支離滅裂さを存分に感じていると、

「返すわけがないだろう? 元、当主殿。貴方のせいで、私がどれほど苦労したことか。きっとわからないのでしょうね。気位の高さゆえに対面だけは取り繕っていた分、家名に無数の傷がつくことは免れられたものの。悪評は広がり、未だに消えてはいない。母様の手前、ここへ住まわせているのであって、そうでなければ―――」

「あらやだ。そうだったの? 気付かなくてごめんなさいね? じゃあすぐに出ていくわね!」

いい加減にしろと窘めるジーナの向こう側から、また別の誰かが。

「母様ッ⁉ いえ、別に母様は出て行かなくとも――ッ‼」

その反応と表情を見るに、ジーナの言葉に偽りはねぇんだろう。

であれば、奥から現れたのはジーナの母親で。

「ラーナッ⁉⁉⁉」

名前はラーナと。

父娘にそろって驚愕で声を戦慄かせながら呼ばれるなんざ、どうやったらそんなことになるんだか。

「それよりもあなた~? なんの話をしていたの~? すっごく大きな声だったみたいだけど・・・?」

「き、聞いてくれラーナ! ジーナがこの男に虐められていたんだ‼‼‼ それなのに、ジーナはこの男と結婚するだなんていうんだ‼‼‼」

「あら~そうなの~? でも仕方ないわよ~。だってあなたの娘ですもの。虐められるのが好きな変態さんでもおかしくないはずよ。あなたみたいに」

「わたっ、私にそんな趣味は無いッ‼‼‼」

「え~? そうだったの? 私が間違っていたの?」

「そ、そうだ! いや、そんなことより‼‼ このままではマーラグ家が、公爵位が乗っ取られてしまう‼‼ こんなどこぞの馬の骨にだ‼‼ ラーナ、君もそんなことになっては嫌だろう? だから今すぐ‼‼ ジーナから爵位を奪い返さなければ‼‼‼」

「へ~・・・」

おっとりとした受け答えが印象的に映る女性。

細く伸びた視線がほんの一瞬だけ俺を通り過ぎ、

「ねぇ、そんなことよりって言った?」

小さいおっさんへ戻る時にはバックリと見開かれた眼が不機嫌を訴えた。

何が起こったのか、理解が追い付かなかった。

だが、脂汗をだらだらと流すおっさんの顔が蛇に睨まれた蛙そのもので。

ドス黒く恐怖に染まっていくのが、またなんとも笑いを誘う。

「私があなたにあげた爵位だったのに、ジーナちゃんにとられちゃったのはだれ? お話を替えたのはなぜ? どうして私の質問に答えないの?」

目で噛むんじゃないのかってくらい、顔を近付けるジーナの両親。

親が子供に言い聞かせるように、覗き込んで母は問う。

「ねぇ? どうして?」

むしろ子供のように。

「それは・・・その・・・、この重要な問題を君にも知ってほしくて‼‼」

「知ってるわよ? 私、言ったじゃない? すっごく大きな声だったって・・・聞こえてないはずないでしょう?」

苦し紛れの言い訳だった。

どうにか絞り出した言い訳。それをさも当然のように。

ユージーンはただ口をパクパクさせるのが精一杯だった。

その口の、喉の奥に。言葉なんか詰まってねぇんだから。

「ドラゴンの目なんぞより、よっぽどおっかねぇな」