軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

side―――ユノ3

側に誰も居ない。

それだけで心が凍えるほど震えあがるのは子供の特権でしょう。

ここが安らげる家の中であれば。

けれどここに家はなくって、それどころか―――・・・。

足元へ視線を落とせば何故立っていられるのかも怪しい暗い雲の上。

急に足元から冷気でも漂って来たかのように感じてしまって心許なくなる。

大丈夫・・・そう自分に言い聞かせるには根拠足りず。彷徨わせた視線は奇しくも、1つの姿を捕らえます。

それは倒れたお父様の姿。

決して頼りになることはなく、むしろ起き上がられてはどうすればいいか。

なのに不思議と、その力なく倒れる伏す姿は冷静さを取り戻すのに一役を買ってくれました。

お父様が、あるいはお父様を操っていた誰かが、気を失ってもこの空間は消えない。消えてない。

それなら、消える瞬間には何かの予兆があるはず。

それくらい強固な空間なのだろうと、飲み込むことができたのです。

だとしたら問題は、今。私はどうすればいいのか? ということ。

ゼネス様は不在。

お父様は倒れたまま。

お父様が意識を取り戻す前に身柄を拘束するべきでしょうか?

道具はありませんが、魔法なら・・・。

ですけれど、私は―――。

お父様に近付きたくなかった。

これ以上、嫌な思いをしたくは・・・。

そんなつまらない葛藤を咎めるように、墜ちた視線に足が映る。

「ゼネス様‼」

いったいどこへ居たのでしょうか?

気付けばそこに。帰っていたのです。

「この騒動の元凶は絶った。これで国内の問題は解決できるはずだ」

「そう・・・、なのですね! 流石です!」

喜ばしいご報告じゃありませんか。

これで、騙され操られ意に反する行動を強いられる人は居なくなるのですから。

喜ばしいことでしょう・・・。

例え私になんの役割もなくとも。

わけもわからないまま、ただすべてが終わってしまっても。

多くの人が救われるのです。

良いことじゃありませんか。

「いや、お前のおかげだ。ユノ。居てくれて助かった」

「ご謙遜を。私なんて・・・なにも」

「嘘じゃねぇよ。枢機卿が言った通り、お前が鍵だった。道中でも助けてもらったしな」

「私はただ、言われた事やっただけで・・・それじゃあまるで、人形と変わりありません」

ゼネス様は少しだけ黙って。

「それは悪いことなのか?」

「え?」

「判断を人に委ねる。それを責任を誰かに押し付けることだという奴はいる。だが、そういう奴は本当に全てを自分で決めて生きてるのか? だとすりゃそいつは犯罪者だろう。俺達が生まれる前から、法律だのは既に決まってたんだ。真っ当に生きようとすれば、守る以外の選択肢はねぇはずだ。けど、それは善悪の定義を誰かに委ねて生きることに違いねぇだろ? その責任は誰が取るんだ?」

「それは・・・やっぱり、国になるのではないでしょうか?」

「そうだな。その上で、言われたことをやるか、やらないか。その選択は出来るはずだ。なのに、そいつは法律や決まりを守れなかった時にこう言うだろう。『国が勝手に決めただけだ』ってな。そう言って責任を投げ捨てる。自分には選択肢がなかった振りをして、弱者を装う。そんな奴の言葉に意味があるか? 価値を感じるか?」

「いいえ―――でも、私は何も考えていませんでした! どうすればいいか、言われたことをやらないという選択肢さえ、私には見えていなかったんです。きっと、私がその人と同じように追い詰められてしまったら・・・」

「同じように弱者を装っていたって?」

「・・・はい」

どうすればいいか・・・ねぇ。

ゼネス様はそう呟いて、少し考えているようでした。

やがて、

「どうすればいいか・・・こんな時に、それを教えてくれるのは神様なんかじゃねぇんだよ」

いつかの声が私へと注がれる。

「親や兄弟、師の教えだったり、これまでの経験。そういうもんの中から、自分で選んだって言えるものを決めるだけのことだ。それで、どうなっても後悔をしないことだ・・・口で言うほど、簡単じゃねぇけどな」

真っ先に浮かんだのはお爺様の顔。

いたずらに。ニヤッと笑って、こっちを向く。そんな顔。

だって、ゼネス様はお爺様とお友達で。

お爺様の思いや、願いをも。背負ってくれているから。