作品タイトル不明
side―――ユノ1
感情というものは、時にどう受け止めればいいのか、わからなくなる時があります。
『親子の情・・・? 貴方の言葉に従う人形など、誰が欲しいものですか』
皇都でお父様と再会した際に投げつけられた言葉。
もちろん。
分かり合えると思っていたわけではありません。
お爺様から、何があってお父様とお母様が出て行ったのか・・・そして、今になってなぜ帰ってきて、何をしようとしているのか。
その説明はされていましたから。
ですが、ほんの少しくらい―――そんな思いがあったのも事実。
何も取り繕おうとしない当たり前だというような態度から、そんな言葉を投げつけられて、平気だったとはとても・・・言えませんでした。
恥ずかしいことに、涙があふれるくらいに、私は・・・・・・。
そのことについて、お爺様には後で謝られました。
全ては自分のせいであると。
そんなことありません・・・とは、言えなくて。
私はただ、言葉を受け取るばかりで・・・。
なのに――。
お爺様は亡くなりました。
まだ・・・まだ返していないのに!
言葉も、思いも、なにもかも。
それなのに、もう――。
誰も。
私の側には居なくなってしまいました。
何が正しいのか・・・なんて、わからないまま。
放り出されてしまったみたいに。
だと――・・・いうのに。
何も。
止まってはくれない。
なぜ? なぜでしょう?
今度は私が教会のために立ち上がるべきだという声を耳にしました。
それは本当に、私がやらなければならないのでしょうか?
今の私が・・・?
誰にも、何にも、頼れないのに?
そんなの、立ち上がれるわけが―――ッ‼‼
言ってしまいたかった。
そう言って、全てを投げ出してしまいたかった。
悲劇を前にして、足を止めて、考えるのをやめて、ただ甘える子供の様に。
そうしてしまいたかった‼
どうして私なの⁉ そういう貴方がやればいいじゃない‼
けれど、そう言ってしまえば・・・。
私は。
今の立場すら失ってしまうのだと、そう教えてくれたのは枢機卿様。
親に捨てられ、偉大な祖父を亡くした哀れむべき小娘。
それが私の立場。
止まってしまえば、投げ出してしまえば、哀れみを受けとることさえ出来なくなる。
この枢機卿様はお爺様の古くからのご友人だと聞いていました。
だからきっと、その言葉は正しいのだと。
そう思うことがやっとで。
『どうすればいいか・・・こんな時に、それを教えてくれるのは神様なんかじゃねぇんだよ』
まるで悪魔のように囁く声。
枢機卿様の声ではありません。私の声でも。
ましてや、お爺様の声であったとは決して思いませんでした。
その声は私が生んだ幻なのでしょう・・・。
でも、確かに聞き馴染んだ声で―――。