作品タイトル不明
探し出して決せよ17
父親の変わり果てたというべき姿を見たユノは息を呑み、言葉を口に出来ないでいた。
それが永劫の別れを前にしていても。
「ぐぅぁあッ‼‼」
何も声を掛けられないまま、グレンゼーは顔から頭へと手を移し、痛みを訴えるように嘆く。
「何故ッ⁉⁉ 何故ですッ⁉⁉ 私は‼‼‼」
跪き、天を仰ぎ見る姿は正に。神への拝謁か、あるいは悪魔への糾弾か。
「こんなことならばッ‼‼ 夢など持たなければよかったッ‼‼ 願いなど、望みなど、欲しなければ―――‼‼ もっと、早く―――・・・ッ‼‼‼」
その手は何を掴もうとしたのか。
頭から離れ、空を掴む格好のまま、力尽きる。
中途半端に持ち上げられた手は、受け皿の様に。
自らを表すが如く、半ばに途絶える。
失われた言葉は帰ることなく、嫉妬に燃えた瞳は色を変えていた。
「ようやくお目覚めか?」
軽く周囲へ視線を動かした後、ゆっくりと立ち上がるソレへ、
「信者になり切れなかった男を乗っ取るのには時間がかかったようだな?」
立て続けに問う。
「そのようなことはありませんよ。この者も、我が信徒でした」
自身の体を見下ろしたかと思うと――ギョロリ、と感情の無い目が射貫く。
あらゆる感情を超越したような、何も感じさせない機会のような眼。
しかし、人ならざる竜の眼が・・・そこにはあった。
「お、お父様では・・・ない、のでしょうか?」
「そうだな。残念ながら、アレはもう別もんだ」
「いいのですよ? 父と慕おうとも。これはもう、我が体なのですから」
「そんな―――それでは、あの時の言葉の真意は・・・・・・」
あの時の言葉?
と思ったが、そういえば。
皇都での一件でグレアムの爺さんが失敗したっつってたな。
おまけにその爺さんさえ・・・・・・。
その場にへたり込むユノを奮い立たせる言葉は持ち合わせなかった。
それどころか、
「あの時の言葉に嘘偽りなどありましない。この体が言っています」
追い打ちの様に、同じ顔、同じ声で、当然のように言ってのける。
確かユノが聞いたのは絶縁の言葉だったはずだ。
それを―――・・・。
ユノはただ、噛みしめるように涙を浮かべ、留め置けずに溢れさせる。瞳を閉じることもなく。
言葉にさえできない、悔しいという感情が痛いほど。
せめてもう少し早く――だが、あの錯乱状態じゃ何を言っても・・・。
そんな考えは一瞬で投げ捨てる。
最早、省みる時間など。とうに過ぎ去ったんだ。
「訊きたいことは?」
「何が貴方をそこまでさせるのでしょう?」
「言いたいことは?」
「答えてはくれないのですね」
わかりきっているような態度で。何も知らない風に。悪びれもせず。
「チッ‼‼」
つい舌を打ちつけながら、構える。
腕を前へ、砲口を突き付け、魔力を充填させる。
言い訳の余地など与えねぇよう、跡形も残さずに消し去るために。
全力で、放つ。
・・・・・・寸前に。
フッ――と、憑き物が落ちるように眼の色が変わるグレンゼーが見えた。
瞬間‼‼
音が、色が、光が、消える。
「精神はちゃんと、ドラゴンの形なんだな?」
全力の魔力弾・マナバーストは偽装。
ユノとグレンゼーの間に、次元の檻を作る。
何者も通さない空間の断層。
それは奇しくも、俺達がここで見た魔法だ。
『・・・・・・何度。何度、邪魔をすれば‼‼』
半透明のドラゴンが勇ましく嚙み付いてくるが、その牙が身体に突き刺さることはない。
些細な不快感と多少の風圧を伴って、スーッと身体を通り抜ける。
「そう何度も、上手くいくかよ」
『汝が言えたことか‼‼』
慟哭と共に口を大きく開き、今にも噛み殺さんと威嚇してくる。それでも、それが不可能なことはもう、それこそ。わかりきっている。
「ユノに乗り移ろうと考えてたんだろ? そうすれば勝てると思ったか?」
『―――ッ⁉⁉ 勝ち負けなど、些細なことだ。これは生死を掛けた――』
「掛けてねぇだろ?」
『ッ⁉⁉』
「お前はいつも、誰かの命を使い捨てにしてきただけだ」
『なにを―――ッ‼‼』
「――そこで、首洗って持ってろ」
さっきの偽装は見せかけじゃねぇ。
本気で撃つつもりだった。
だから、魔力は充填させたまま。
再度、構え直し。
俺は―――一本の道を作った。