作品タイトル不明
探し出して決せよ9
「もう少し正確に言うなら引っ張り出す・・・かしら?」
小首をかしげるエイラの言葉を待つ。
「えーっと、要はあの人達を出口に誘導する手間とその結果が釣り合ってないのが問題なわけでしょ? だから、押し出した時とほぼ同じような効果があれば、あの人達を使い捨てにする必要はなくなる」
「その答えが引っ張り出す、だって言いたいんだな?」
「ええ。出口を調べる手助けにはならないけど、最初から押し出すだけじゃ精々が2択にするだけ。それなら調べる手間自体はなくならないはず。都合のいいことに、入り口はわかっているわけだから、引っ張り出すこと自体はそう難しくないでしょ? それなら当たりを引いた時以外、意味がない押し出しより、引っ張り出して人命を優先した方が生産性があると思わない? この都の復興も考えたら、ね」
「確かに。最初だけは、な」
「まあ・・・そうよね。気付かないわけないわよね」
「当たり前だ。押し出しで当たりを引く場合を除外しても、引っ張り出すのとは掛かる時間と安全性に差がある。押し出す場合は1手で狙い通りの結果を出せるが、引っ張り出すのはそうもいかねぇ。1手で済むのは最初の一回だけだ。2回目からは引っ張り出した空間の回数、あの人数を運び出す必要が出てくる。1区間30人相当だとしても、壁の人数は300人を超える。10区間以上移動することになるんだぞ? 押し出しなら10手で済むが、引っ張り出そうとすりゃ5倍以上かかる計算だな」
「そうなのよね・・・だから時間だけはどうしようもできない。でもそれは後ろの門を守ることで作れるはずでしょ?」
「作れたとして、だ。引っ張り出した人形同然のアイツらを誰が監視する? どうやって制御する? 時間を稼ぐのが敵の目的なのは言ったな? あの壁はその結果だってな。それを引っ張り出したところで、自由に動かせるままなら妨害のためになんだってさせるだろう。俺達の邪魔だけじゃねぇぞ? 敵が本気なら、生かそうとする俺達の思惑を利用して、引っ張り出した連中を断絶された死の空間へ突っ込ませるはずだ。そうなりゃぁ襲って来られるより質が悪い。方々へ逃げるよう死にに行く人形を止めて、回収までしなきゃならなくなるわけだからな」
現実的じゃない。効率的じゃない。理想論だ。
そうやって囁くのは神か悪魔か。はたまた、俺自身か。
俺を育てたどこかの誰かって可能性もあるな。
だが、それが間違ってねぇのが真実なんだ。
「・・・・・・それはアンタに止めてもらう」
不意にそう声を上げたのは、意気消沈していたはずのジェイドだった。
「俺に?」
「他力本願だが、アンタにならできるはずだ・・・実際に俺達は見て来た。アンタの力を。ついさっきもだ。アンタの強さが戦場を変えた。あっという間に。敵を倒すとか、囲いを破るとか、そんな次元じゃねぇ。敵から・・・戦う意思すら奪って見せた! だから――出来るはずだ‼ そうだろ⁉⁉」
揺らぐ瞳は波打つように意思を反映していた。
睨みつけるように、ただ・・・悔しいと。
真っ直ぐ撃ち抜くには見えない壁がある。それでも、諦めるには余りある熱がその身を焦がす。どうしようもなく突き動かされるような衝動が言葉に成る。頼るだけだとしても。
乱反射する眼光は、何よりも強く。訴えていた。
――もっと。
「もっと欲しがれよッ‼‼」