作品タイトル不明
省みて敵を見よ5
「――って、こんな話してなんになるんだよ‼ 俺達はもう、戦わねぇぞ‼ あんな人形みてぇな姿になるなんてまっぴらだ‼‼」
仲間内で盛り上がる中で、なんの話をしてたのかを思い出したようだ。
「それについては安心しろ。あぁはならねぇよ」
「なんでそんなことが言えんだよ・・・」
「言ったろ? アレは魔法の影響だ。そのやり方にも見当がついた」
「本当ですか⁉ ゼネス様‼ それなら万が一、結界に手が加えられていた時のためにご教授頂きたいです!」
俺の言葉に反射的な反応を見せたのは結界の改変について行き詰っていたユノだった。
「上から見た限りですけれど、あの結界は意識的なものでした。空間が閉じていませんでしたから。でも、ゼネス様がおっしゃっていた通りに緊急時の通路としても考慮されているのなら、範囲は相応に広いはず。それを維持するとなると条件は簡潔になりますが、それ故に意識への介入も強固なものとなります。もしそれが加護教から望福教へ書き換えられていたら・・・」
書き換え自体が上手くいかない。あるいは結界の発見が出来ない、または遅れる・・・って考え方は理解できるが、その心配はねぇだろう。
ただ、どう説明するべきか。
ほんの一瞬、考える。
それを読み取ったのか、
「その”意識的なもの”というのは、どういうものなのでしょう? もしかしたら、この都で生まれた私なら何か。お役に立てるかもしれません」
リミアがユノに質問する。
「あ、そうですね! 結界には簡単に分けて2種類あります。物理的なものと意識的なものの2種類ですね。これは何に干渉するかで分けられています。音や光を含めた物理的なものの干渉を防ぐ結界と、感覚や気配のような意識的なものの干渉を防ぐ結界ですね」
「それで言うと今回は後者であると?」
「はい! さっき少し話しましたけれど、結界には空間を閉じる場合と閉じない場合があります。閉じる場合の結界はどんな種類でも可能なのですが、閉じない場合には物理的なものを防ぐ結界が作りにくいのです。特に長期的な運用は不可能と言われていますね」
「それはなぜでしょう?」
「明確な結論ではないのですけれど、雨や風のような天候さえ防ぐということは、その中では生命が生きて行けないということで、それはつまり・・・結界の中で魔力を生み出すことが出来ないからだと言われています」
「外からなら、維持も可能なのでは?」
「それはそうかもしれませんが、あまり意味はないかもしれません」
「なぜでしょう?」
「中に入れませんから・・・」
「そういえば・・・そうですね」
なんとも言えない表情になる2人。
「あ、でも一応ですね! 条件を絞れば、使えないわけではないんですよ! 光だけ遮断するとか! 音だけを遮断するとかですね!」
「それって結界の中はどうなってるんでしょう?」
「光を遮断すると真っ暗になりますね! 音を遮断すると中と外で音が混じりません!」
「それらを長期的に運用する利点が思いつきませんね・・・」
「そう、ですね・・・教会にもそういったお願いが来ることはあまり――」
一応。劇場だとかなら使えなくもないだろうけどな。
あの手の施設は漏れる音や歓声、光でも客寄せをするから需要はねぇが。
「精神操作のからくりについて、話してもいいか?」
どうにか会話を――という空気を切り裂くために声を出す。
はい、どうぞ。という返しを待って、本題に入る。
「俺は北大陸の話を聞いている中で、宗教が何のために作られるのかを考えてた。結論は至極単純なもんで、政治のためってことで落ち着いた。思考を共有し、広めることで規範を作りやすくする。更にそれを浸透させることで同調を生み、多くを制御するための装置だと思った。これは結界にも通じる話だ」
視線と共にユノへ話を振る。
「それだけだと言われると悲しくなってしまいますが、結界に通じるというのは本当です。さっき出来なかった意識的な部分の話ですね。これは条件に関わります。物理的なもので言うなら、それこそ音や光の部分。本当はもう少し細かいことなんですけど。おおよそ、これが意識へ作用します。今回みたいな人除けの結界であるなら、ここに居たくない。近寄りたくない。怖い。というような負の感情を与えることでそれが可能になります」
なんてことを祈るんだ・・・という話もありますけれど、と断りながらもユノは続ける。
「反対に。ここに居たい。近寄りたい。安心する。というような感情を与えることで人を引き寄せることもできます。これはこれで犯罪に使われることも多いので、教会としてはお願いがあっても受けることはできませんけど。そういう感覚が近くの人の意識へ介入するのが意識的な結界です。ゼネス様の言う通り、人を制御するという行為に関わっています」
問題は、結界が近くにいる人間に影響するのと同じように。
信仰が信者に何をもたらすか。
いや、信者が宗教に何を求めるかだ。