軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

省みて敵を見よ2

「また・・・?」

「そうだよ‼ まただ‼ 俺達はそれが嫌で逃げて来たんだよ‼‼」

「どういうことだ? 北大陸でも似たようなことが起こってたのか?」

「どういうことだはこっちの台詞だ‼ 俺達の故郷には人形病って病がある。昔からだ! ただ人形病は奇病で、発症の数も確率も低かった! だから、治せなくても仕方ねぇって諦めてた‼ 運が悪かったって‼ 中には普通に戻った奴もいたらしいからってな‼」

風土病のようなものと思われてたのか。

精神魔法の知識が無かったのか? 乗っ取りならまだしも、ここまで露骨なんだ。普通なら魔法の影響を真っ先に考えそうなもんだが・・・?

「なのに・・・十何年か前から急激に増えだして。俺達が正気を保てるのは、漁師として長く海に出てるからなんじゃねぇかって。仲間内で冗談を言ってたら、気付いたころには町の連中のほとんどがおかしくなってやがった‼」

頭を抱えるようにして震える大柄の男。

「俺達もああなっちまうんじゃねぇかって・・・恐ろしいんだよ‼ なんで、なんでここまで来て‼‼ こんな思いをしなくちゃならない⁉⁉ 俺達が、何したって言うんだよ⁉⁉」

「だから言ってるだろう⁉ あれは魔法の影響でああなってるだけで、病気じゃない‼‼ うつったりはしないんだってさ‼‼ 隊を分けたのだって、あんたらが怪我人を怖がるからそれで・・・っ‼‼」

そんな男の様子に。ケイが注意か慰めか、あるいは諫めて言う。

「それこそ何度も言ったはずだ‼‼ 魔法なら解いてみろ‼‼ あれだけ居るんだぞ‼‼ 1人ぐらい連れて来て治して見せろ‼‼ それが出来なきゃおかしいだろ⁉⁉」

「物事には都合ってもんがあるんだよ‼ 今はそれどころじゃ――ッ‼‼」

放っておけば収拾のつかねぇ水掛け論になるな。

「普通に戻った奴もいる・・・って話じゃなかったのか?」

言い合う横から割り込むことで冷や水を浴びせる。

「ッ⁉ 噂だけだ・・・それも、何十年も前の・・・・・・」

「病気ってんなら治療を試した奴も居たんだろう?」

「教会の偉い司祭様が・・・それも昔の話だけどな。言ったはずだ。諦めちまったんだって」

ここでも教会か。

偶然―――にしては出来過ぎだろう。

「治療の内容が残ってたりは?」

「いや、そういうのは・・・・・・」

「・・・・・・・・・」

ある意味、予想通りだ。

帝国と皇国へ仕掛けてきたのが本命の計画だとすれば、それより昔に起きたっつー北大陸のそれは実験ってところだろう。

今はどうか知らねぇが、当時。教祖を名乗るドラゴンは北大陸に居た。

そこで手ごろな相手に自分の力を試してたんだ。

教義や教会という制度、存在、団体はそこで知って利用できると踏んだか。

その偉い司祭ってのが操られてたのか乗っ取られてたのかはわからねぇが、人間の国や地位への思考や情報も、そうやって吸収した。

人形病だの治らねぇ病気だのと触れ回ったのも、その方が都合がいいから。

精神魔法だってことに辿り着けねぇのも、そういった土台や土壌を潰してきたからか。

文化や形態の違いなんてのは、支配者やその時の思想によって大きく左右されるもんだしな。

「――ッ‼ なに黙ってんだよ! あんたも信じねぇってのか⁉」

「いや、そういうわけじゃねぇよ」

「ッ! だったら‼ 本当に治せるってのを証明してくれよ‼ じゃなきゃおっかなくて敵に近付けもしねぇ‼‼ それに、正気に戻せるなら! 戦力にだってなるはずだろ⁉⁉」

「それは無理だ」

「なんでだよ‼‼ おかしいだろ‼‼ 俺達に嘘をついて‼ 自分達だけは助かろうってのか⁉⁉」

反射的に掴み掛かってくるほど、乱心している男。

ケイトに預けられてた20人との温度差が気になる。

報告を聞く限り、ケイの部隊にも死人は居なかったはずだ。

他に取り乱すようなことが・・・?

あったとすりゃぁ、それこそ被害そのもの―――って、そういうことか。

「門を開けたんだな?」

「ッ⁉⁉ 俺は、開けてねぇ‼‼ 勝手に―――ッ‼‼」

「その結果・・・どうなった?」

「俺のせいじゃねぇ‼‼ 俺達のせいじゃねぇだろ‼‼ それに‼ 戦力は‼‼ 戦力が増えるのは本当のことだろ‼‼ あんたの言うことが本当で、病気じゃねぇってぇんなら、失敗さえしなけりゃぁ‼‼」

「被害を出さずに魔法を解けたとしても、戦力にはならねぇよ。そんなこと、わかってるはずだろ?」

「そんなはずがねぇっ‼‼ これだけ好き勝手にされてんだぞ⁉⁉ 怒りが湧かねぇはずがねぇんだよ‼‼」

「じゃぁなんでお前らは逃げて来たんだ? 正気じゃねぇからって、家族や知り合いと戦えなかったからだろ? 同じだよ。誰だってな」

「~~~~ッ‼‼」

理解できるが故の悲痛な表情。

目の当たりにして、思い出しちまったんだろう。

故郷のこと、置いて来たもの。

死ぬかもしれないっつー実感が人生を振り返らせ、その棘が心に刺さって抜けなくなった。

正真正銘。臆病風に吹かれちまったんだ。

先頭で戦ったからこその、責任と傷を負ったんだ。